日本を創造

目次

  「21世紀の国土つくり・地域つくり」

1.道州制への課題(天本俊正)平成19年5月

2.小論紹介:「道州制と地方支分部局のゆくえ」平成17年2月(A地方部局幹部)

3.広域地方計画を読む(天本俊正)平成21年8月 (小論紹介のあとに収録)

4.再び広域地方計画を読む(平成24年3月17日)

5.続:再び広域地方計画を読む(平成24年5月26日)

6.日本再生戦略を読む(平成24年8月)

7.国土形成計画Uと国土情勢(平成28年9月10日)

 

「21世紀の国土つくり・地域つくり」の紹介

「意欲は解放する」

ニーチェの言葉である

誰にとっても思い当たることがあろう。

国土や都市にとっても同じことがいえる。

「思い」がなくて住みやすい活動的な国土、都市を期待することは出来ない。

ここに国家公務員の一員として国土づくり、都市づくりの一端に携わってきた者として、昭和40年代から平成にかけての関係論文をまとめる。


目   次
第1部 国土づくり
第1章 圏域整備の新しい方向
第2章 地方都市と農村地域の環境整備の方向
第3章 21世紀の国土への視点
第4章 四全総と文化
第2部 都市づくり
第5章 都市と緑・潤い- 政策と課題
第6章 住宅政策の長期展望
第7章 アメリカの宅地開発と都市計画行政
第8章 地価対策- バブルの開始の時
[ 付録] 著者紹介

この本に関するお問い合わせは、下記までお願い致します

(株)天本俊正・地域計画21事務所
本社:〒227-0045 神奈川県横浜市青葉区若草台7-27
TEL:045-961-1238

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以下に、発表論文等を今後収録する予定です。平成19年7月10日

天本俊正

目次

0  「21世紀の国土つくり・地域つくり」 (著書紹介)

 

1.道州制への課題(天本俊正)平成19年5月

2.小論紹介:「道州制と地方支分部局のゆくえ」平成17年2月(A地方部局幹部)

3.広域地方計画を読む(天本俊正)平成21年8月 (小論紹介のあとに収録)

4.再び広域地方計画を読む(平成24年3月17日)

5.続:再び広域地方計画を読む(平成24年5月26日)

6.日本再生戦略を読む(平成24年8月4日)

7.国土形成計画Uと国土情勢(平成28年9月10日)

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道州制への課題

 

 

 

 

 

 

 

 

平成十九年五月十一日

天本俊正(NPOジオストラテジー研究機構理事)


道州制への課題

 

目次

一 はじめに                                

二 「道州制」議論をむかえるわが国の基本情勢                

三 「地方自治」とはなにか                         

三の二 「地方分権」の危うい方向                      

四 戦後六十年の内政の行政機構の変遷とその評価               

四―二 予算の一括計上権                          

五 道州制の必要性                             

五―二 地方における国政の総合性の確保                   

六 道州制:避けるべき方向                        

七 道州制の形と実現への道                        

七―二国の財政危機を回避するための道州制について             

八 おわりに                              

 

                                 

参考図

一 「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土」(国土交通省資料)

二 国・地方の組織の再編(国土計画協会・ワーキンググループ)

三 国―地方関係(中川八洋氏の図を一部改変)


道州制への課題

 

平成十九年五月十一日

天本俊正

(NPOジオストラテジー研究機構理事)

 

一 はじめに

 

道州制議論は混迷している。自民党はこの七月の参議院選挙までに党としての案をまとめようとしている。四月の統一地方選挙の知事候補の中で「道州制」賛成は、四分の一しかいない(日経:四月九日)。昨年秋成立した道州制特区法は、北海道だけの一部の事業をいじくったもので、名前の割には、道州制を推進する中身とはなっていない。

 

第二十八地方制度調査会の道州制答申(平成十八年二月)をはじめ公式・非公式の各界各組織・民間からの提案も数多い。マスコミに現れる論調なども限りない。混迷と見られるのは、多くの主張がいわば制度設計主義に陥っており、現実軽視の主張の競合になっているからである。わが国の政治、行政、社会の現実と歴史伝統、経緯を尊重する改善主義からの議論があってしかるべきだ。地に付いた焦点の絞れた議論はそこからうまれてくる。

 

しかし、そうはいっても世の中の道州制への「期待」は増えている。

 

道州制が必要とされる主な意見をまず、整理しておこう。一、都道府県の範囲が広域化に対応できない、二、中央省庁の縦割りの弊害、三、時代の閉塞感などがあげられる。

これだけでは、明治以来の百二十年余の「地方総合行政組織としての都道府県」の改変には、踏み切れまい。「皿」だけいくら立派なものを造っても乗せて出す「ご馳走」がなければ国民には歓迎されない。

 

本稿の結論をあらかじめ言っておけば、平成の「道州制」改革は、一部、都道府県の行政組織を残しながら、国中央の組織の軽減・重点化をはかり、ブロック行政組織を現実に動きうる組織として作るべきである、という提言である。「地方分権」のスローガン化した観念論にこだわらず「国・地方一体の道州制」のあり方の提案につなげたい。


二 「道州制」議論をむかえるわが国の基本情勢

 

道州制推進論の多くが「時代の閉塞感」を理由のひとつに挙げている。確かに、九十年代の「失われた十年」がわが国の基礎構造に及ぼしたマイナスの影響は否定しがたい。ネイスビッツは「日本の長期的低落」を予言し、レスターソローは、「九十年代の日本はグローバル経済下、新技術への適応に失敗し、これからも成功しないであろう」という。

 

「日本衰亡」の言葉さえ出る昨今、東西冷戦終結とともにわが国の諸制度も大東亜戦争前の体制へ立ち返って、わが国独自の制度の再検討があってしかるべきである。特に、大げさな言いようだが、出生力低下(人口反転増が民族課題)、民族の存亡を乗り切るには、社会の原単位、家族、地域、職域での活性要素を取り戻す必要がある。「道州制」論議はその解決策の決定打というわけではないが、論議するには頭に入れておくべきであろう。

 

国の統治機構、財政の建て直しには、道州制は大いに関係する。国家統治の地方展開のあり様、地域社会の自立、家族・地域・職域の靭帯の強化、行き過ぎた福祉の是正などに制度改善が必要であり、それが「道州制」だろう。

 

新産業振興、新インフラ整備が「道州制」の最大の任務になるが、道州政府の権力・権限は、総合的でなければならない。財政力を強大に持つ、統治情報・知識の集中的集積、起業家育成、産学協同、中小企業対策、新労働秩序、雇用増などなど広範囲でかつ集中的でなければならない。

 

例えば、教育を取り上げて考えてみよう。やっと教育基本法が改正される。喜ばしいことだが、「道州制」論議の観点から言えば、与党・中央政府が、日教組に乗っ取られた子供の教育、偏向教育を国家的観点から是正するものであり、国家的責任を教育現場のあり方に結びつけるものである。戦後の教育体制は、地方教育委員会を媒介にして、現場のいわば勝手気まま指導に任されてきた。道州制での教育の行政は、道州が中央政府の意向と現場のあり様とを時代の要請に即して結合、措置していく役割であろう。

「教育」だけか?「治安」についても国家公安委員会、地方公安員会を通じて間接的にしか警察権力をコントロールできない。民主国家の中央意思が、責任と結びついていない(幸いにして今の警察行政は、教育のような偏向は見せていないが・・)。雇用、年金、生活保護などもみなタガが緩んでいる。国民は、自らが選んだ代表による中央政府が、迅速、強力に二十一世紀の日本の社会環境にふさわしい新政策を打ち出してくれてことを切望しているのに、現在の内政統治機構は、省庁も都道府県も市町村もそれぞれの役割を適切には果していない。内政全般のあり方を見直す機会になっている。


三 「地方自治」とはなにか

 

道州制導入にあたっては「地方自治」とはなにかを振り返るべきべきである。

 

地方自治も国家統治の一環である。明治の山縣有朋は言っている。「全国の統治に必要にして官府自ら処するべきを除くのほかこれを地方に分任することを得策となす」「人民参政の思想発達するに従いこれを利用して地方の公事に練習せしめ・・・・漸く国事に任ずるの実力を養成せんとす」(市町村制理由)。

一人の人間は、国民であり都道府県民であり市町村民である。一体一個である。「地方分権」の概念を弄ぶ人たちは往々にして、国と地方は対立し、住民の味方である地方が専制的な中央を牽制すべきという誤った観念が支配している。その上に、道州制を立てようとして、おかしな理念を持ち出す。地方自治も国家統治の一環であって道州制は、その考えに立って構築されるべきである。                  (付図三参照)

 

三の二 「地方分権」の危うい方向

 

いくつか道州制議論の中には、危うい方向がみられる。ひとつは、霞ヶ関官僚の間で、各省対立を避けるため故意に道州制議論を旧自治省の行政権限の枠内に閉じ込めようとする誤った動きがある。

 

有識者の中にも「地方」を殊更に国と対立的に捕らえようとする向きもある。たとえば西尾勝氏は、第二十八次地方制度調査会二十二小委員会発言で「どう考えても国の事務であるものを道州に引き取ることはない。かえって悪いことになる」とし、地方分権推進委員会についても「地方六団体の足並みが乱れない分野に限って議論を進めている(日経記事)」といった発言がみられる。

 

しかしながら、実は、国の統治(特に内政)の実行を担うのは地方自治である。

 

道州制のタウンミーティング(平成十八年三月)で竹中平蔵総務相(当時)発言がある。「国民にとって国であろうと地方であろうと役に立つ行政をやってくれればよいのであって、国民一般が道州制においそれと関心を寄せないのは、それなりにわけがある」。

 

現実に国民大衆にとって見れば日常の公の行政は、地方自治の窓口が引き受けている。

地方自治は、国の基本の目標と方向に一致していなければならない。国の方針にやたら楯突くをもって善しとするのは、よくない政治思想と言わざるを得ない。

 

行政の分野別で、国の役割、地方の役割を区分けするのは、誤解を招く。例えば、保健衛生は、地方自治といっても国際的な感染病の対応は、国中央が取り組むべきだし、外交こそ国中央といっても近隣諸国等との自治体外交は、自治体首長の最も熱心な分野だし、国防でさえ地方自治体の下支えがなければ国土防衛も実が挙がらない。

 

機能から判断すべきで、全国に及ぶ事柄、国の基本にかかわること、国の総力を結集しなければならないかどうかの最終的な判断などは、国・中央政府の役割、一方、地方・地域の実情に即して行政を実施するのは地方の役割である。無理に国と地方の役割分担を分野別に分けようとして迷路に迷い込んでいる道州制論議が、多い。

 

平成十三年一月の省庁再編成のときに「社会保険事務所」「都道府県労働局」が地方事務官制度の解消の名の下に都道府県の組織から切り離されたのは、国民=住民にとって逆行の行政改革であった。いわゆる「地方分権」の観点から見ても後退している。

 

厚生労働行政の第一線を地方自治が取り扱わないというのでは、地方自治そのものの存在価値がない。二十一世紀に入ってわが国の最大の課題は、人口反転増で民族の存亡を救うことである。「親が子供を育て子供が親の面倒を見る」という家族扶養の絆を国、特に社会保障、労働慣行が切り刻んでしまったのが、昨今の諸悪の根源である。政府は、中央・地方を通じて政策を見直さなければならない。その運用の第一線の権限・政策手段を地方自治が失ってしまって、日本をリードしていくことはできない。道州制を制度化するときに、この点をおろそかにしては歴史的な意味がない。国・地方一体の道州制が、不可避の最大の理由は、厚生労働行政にあるといって過言でない。

 


 

四 戦後六十年の内政の行政機構の変遷とその評価

 

戦後の内政組織は大きく変わった。内務省の解体、知事公選、地方支分部局の設置、公安委員会・教育委員会などの設置、国家地方警察の改変などが矢継ぎ早に制度として整えられた。

 

一方、戦後復興から国土開発にむけて大都市圏、地方圏のブロック開発行政が組織された。首都圏整備委員会、近畿圏整備本部、中部圏開発整備本部、北海道開発庁、沖縄開発庁、東北・北陸・中国・四国・九州各地方開発委員会がそうであり、このうち地方開発委員会を除いては国務大臣を長に戴き専任の事務当局が独立の行政機関として存在していた。昭和四十九年の国土庁発足で独立機関でなくなった。

 

これらの動きは道州制を考える上で避けて通れない視点である。新産業振興、新インフラ整備が「道州制」の最大の任務になるならば、このようなブロック機関の評価がまず議論の前提に出てしかるべきである。田中角栄内閣時代、省庁再編でこれらの機関は省庁内の一部局に閉じ込められてきているが、道州制を制度化するにあたって振り返ってみるべきである。第二十八次地方制度調査会が道州制を俎上に載せながらこのことに触れていないのは、各省縦割り弊害の反映であり、首相諮問機関の名前に悖る。

 

内務省解体、知事公選は、道州制制定の重要な考慮事項だが、このことは後で触れるとして首都圏・北海道開発などの問題点になお、触れておこう。

 

四―二 予算の一括計上権

 

首都圏整備委員会、北海道開発庁などがその権限の実効を確保する上で、悲願だったのは予算の一括計上権である。事業ごとの予算を決定することができるこの権限は、各省の強い抵抗にあい実現することができなかった。計画策定権だけでは、力は出てこない。

 

道州制は、本稿のひとつの想定の形としては、国の行政の観点から見れば、中央の「企画」と道州での「実施」分離が原則となる。地方サイドから見れば、おそらく現都道府県の「企画」が吸い上げられ、「実施」が残存都道府県(道州の支店的機能)となる。この際、予算一括計上権が、中央から道州に下りるのは当然である。ただ、「企画」「実施」ができるだけ一体的であるのは現実の要求であるので、相互の行きかいは有機的であるべき。

 

「道州制」の限らず行政の組織改変は、それぞれの国柄、歴史と伝統、国民性、習俗文化などに立脚して改善を考えて、考えていくべきである。わが国の地方ブロックが世界のどこかの国規模に匹敵するとか、どの国のあの制度はうまくいっているとかの俗物的議論をあまりしていけない。しかしひとつ、予算の一括計上で参考にしていいだろう制度としてフランスの制度をあげる。フランス各州は、中長期戦略プロジェクトを指定してその実施の予算については、年度を越えて国中央の保証を得ることができるものとしている(計画契約制度という)。

 

*フランスの計画契約制度=州地方長官(国側)と州議会議長(州側・住民側)との合意で地域整備事業のプロジェクトを決定し、これについては、中央政府との間の計画契約となり実施段階の予算が年度を越えて盛り込まれる。


五 道州制の必要性

 

道州制論議は、関係する各方面の思惑が先行して本当にどのような制度改善が必要なのかわからなくなっている。いわば「迷走する道州制」の状態だということは本稿の最初から申し上げてきた。これを打開するには、「真の必要性」を見極めなければならない。

 

明治維新以来の近代日本という長期の視点から見れば、内務省解体・知事公選が、道州制問題のポイントである。大東亜戦争以前は、内務省によって国家としての内政は、ことの善し悪しは別として、全国・地方で柱が通っていた。内務省解体によって地方総合行政能力がなくなり、一方、知事公選は都道府県のもつ性格を変えた。各省は、それぞれに地方支分部局を設置し自らの政策を全国に展開し地方に浸透させていくための手段とした。戦前、地方支分部局は、皆無だった。この十年、二十年に都道府県は、市町村合併、政令市進展から仕事の範囲が狭くなってきているし、産業振興などの意欲的な仕事をするには狭い県域が邪魔だ。平成七年以来の新地方自治法体系は、機関委任事務の廃止などで都道府県の権限を強めているように見えるが、その実、年金行政、労働行政などで手段を国に返上しているなど、むしろ「分権」は弱くなる方に逆行している。

 

知事公選は、国民の政治参加の面ではプラスに定着している。おうおうにしてポピュリズム的な知事の出現は、一見華やかに見えても長い期間続くとプロフェッショナル性の不足が地方地域の衰退傾向を招いている。近畿などその典型であろう。

 

一方、中央・霞ヶ関の各省庁も内閣府による総合調整はあるとしても、肝心の実施機関としての地方は、それぞれの地方支分部局がばらばらに動き、現場での総合性がなく、フィードバックしての中央政策立案にも生かされない。各省と都道府県の連携も「地方分権」により弱まっている。

 

五―二 地方における国政の総合性の確保

 

情報化時代にわが国が突入している。工業主力の時代の国政とは違うスタイルの行政組織が必要になっている。ピラミッド型の組織からネットワーク型、もしくはホロン型の組織に国中央も地方行政組織も組み替えていかねばならない。情報は、国の首相から地方自治体の現場第一線まで、即時に行きかうような時代になっている。上から指令が流れ、現場から報告が上がるような悠長な組織では国際競争に勝てる国家といえまい。それぞれの組織固体が役割に応じてすばやく間違いない判断ができるべきだ。

 

従来の土木建築などを主力とした公共事業は、長期計画の策定がとりやめになり社会資本重点計画に姿を変えた。現場に近い地方ブロック単位で、もう一度、地方地域の必要な発展基盤が何であるか、総合的に見極める体制が必要である。それが道州制だ。

 

道州制の役割は、新産業振興と新発展基盤の整備である。福祉、労働規範などの民生の見直しも道州制にキーポイントの立場を与える。「地方分権」でお題目のように実質的に都道府県の合併に過ぎないようなおざなりの道州制にしてはいけない。

 

「第二の公共事業」としての科学・教育・文化の広域事業を道州政府は集中的に取り組まなければならない。旧来の事業の中からは、航空・都市・環境の事業だ。象徴的に言えば、大学・研究機関と空港・空路の整備が道州の仕事の中核になろう。あわせて都道府県の中小企業政策、雇用拡大などの政策の総集を行わなければならない(一定の都道府県の残存があるとして)

 


六 道州制:避けるべき方向

 

道州制は「行政」の地方機関のあり方に関するものであって、国の三権分立の立法、行政、司法の体制は変わらない。わが国の歴史・伝統、成り立ちからいってアメリカのような連邦制をとることはない。わが国は、基本的にひとつの民族、ひとつの言葉の統一国家であって、連邦制をとる必要性はまったくない。立法に関しては、国会が唯一の立法機関であり、行政は首相が与党政党から選出され、司法は最高裁判所を頂点とする全国組織である。統一国家ということから地方自治も国家統治の一環であることは先に見たとおりである。

 

国と地方の対立を煽る「地方分権」は許されない。地方の権限拡大によく使われる「補完性の原理」は、そもそもヨーロッパで教会と世俗との間で権利の調整に用いられた考え方でこの道州制論議に持ち出すことは不適切だ。この高度情報化時代に国民の日日の生活の基本を決めるのは国家レベルでの対応であって、世界が一体化している時代に国と地方が権限争いをしている余裕は、先進国たろうとする限りありえない。道州制が「国家解体」につながる様なニュワンスを持つとしたらとんでもないことだ。

 

道州制において国と地方は一体であるべきで、その意味で地方自治の一層制か、二層制かという議論も、あまり重要性を持たない。しかし地方自治の基本は、市町村であり、その首長公選と議会選出が地方自治の基本という意味では、一層制というべきである。

 

地方自治が、都道府県と市町村で重複した施策をとるのは行政の無駄である。政令市の制度は廃止し、自立できない市町村については連合等の組織を組むべきである。市町村が担う地方自治の指導監督は、道州政府が当然、担当することになる。市町村が基本であるとする地方自治の制度の企画は、国の総務省が担当する。しかし道州政府の総合調整行政そのものは関係各省の共管になる。むしろ内閣府に直属する道州政府という形のほうが適切か。在来の都道府県知事、都道府県議会については道州政府を形作る内部組織となろう。道州長官は、国から国務大臣が出るのが本筋であると考える。

 

国の政治・法制度の硬直性を補う制度として「特区」制度が採られてきている。大きすぎる・(こま)かすぎる・硬直的な中央集権の弊害は、改善されなければならない。政策の実施はできる限り現場に近いところの責任に任すべきである。道州制は、その意味で国の中央の実施面の権限を大幅に引き受けて、さらに日常的な業務については自治としての市町村を信頼する。こういう体制をとることは、わが国が世界経済の速いテンポに的確に対応するために早急に取り組むべきこと。それを一部の権限争いでしかない「地方分権」で、都道府県廃止・合併で、形のみ整えようとして、実態的に何の国民へのメリットを示せないまま強行するのは、よくない。

 

道州政府の長官の公選の問題、都道府県知事の公選、都道府県議会、道州議会の設置の問題については、民主主義のルールに則り、効率・迅速・正確・生活向上などの効果を見極めながら現実的に対応すべきである。やたら「住民参加」「直接民主主義」を標榜する動きの中で道州制を考えるのは賢い方策とは思えない。


七 道州制の形と実現への道

 

国の機関または中間機関としての道州制は、全国六ないし十程度の地方ブロックごとに地方総合調整行政を担当する機関としての道州政府を新たに設置することによって実現する。国の各省庁の改変、都道府県の扱いについては、段階的現実的に行う。都道府県の区域への百二十年余にわたる国民の親しみ、こだわりに鑑み、知事公選の継続ともに、残存もありうるとする(自然に都道府県合併の機運が出ればそれにこしたことはない)

 

本稿では(財)国土計画協会・道州制研究ワーキンググループ(代表:山東良文氏)の提案する*ブロック地域協議会(大臣・知事・政令市長で構成)*道州選出国会議員の優先議決権の行使(道州議会の役割)*一層制の地方自治?国と都道府県から新設道州への権限の段階的委譲*弱小市町村の連合体という、道州制提案を原則的に支持する。(平成十八年二月発表)                           (付図二参照)

 

ただ、個人的には、道州政府は、同上グループが過渡的とした「ブロック地域協議会」の制度を行政委員会のように本格的な道州制の制度として確立する方がよいと思う。都道府県は、知事が参議院議員を兼ねるなどの国政とのつながりの改変はあっても、道州政府(協議体行政)の構成員となって道州全体の連帯責任を負うなどの形が、むしろ現実的であろう。明治以来百二十年にわたって国民に馴染んだ行政単位をむげに廃止することはない。アメリカで東部十三州がいまだにカリフォルニアやテキサスなどの大きな州と交わって存続し機能していることを考えれば、わが国も無理をすることはない。

 

公共投資の計画の体系は、この数年で大きく変わってきた。各施設ごとの全国法定の長期計画は廃止され社会資本重点計画となり、国土形成計画が全国・地方で策定されるようになった。首都圏整備計画、近畿圏整備計画、北海道開発計画等は依然、継続しているが道州制の制度化(安倍内閣としては三年でビジョン、そのあと実現)に伴ってこれらの開発計画は、原則、道州政府が策定するものとすべきである。予算の一括計上権も道州政府に与えられるべきである。

 

道州の区域割りについては、首都圏、近畿圏、中部圏、北海道、沖縄、東北、北陸、中国、四国、九州の十道州が、戦後の大都市圏行政、地方開発行政などの経緯を十分に踏まえたものとして望ましいだろう。しかし、北海道・東北の合体、中部・北陸の合体、中四国、九州・沖縄の一体化での六道州も検討に値すると考える(北方領土・沖縄は特別担当相が別途あろう)。実は、このようなブロックわけは、国土交通省国土審議会の国土形成計画中間報告で、「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土」として提唱されている。霞ヶ関の各省仕切りの中で、必ずしも国土形成計画と道州制は軌を一にするものでないとの暗黙の了解があってか、同じ土俵の上で議論されることが少ない。国民から見れば、広域経済圏の動きに則って道州区割りを考えるのは、当然だと思うであろう。                    

 

七―二 国の財政危機を回避するための道州制について

 

道州制は、国の形を変える変革である。国の最大の課題のひとつである「財政危機」を解決する手段も提供する制度改善であることが望まれる。このため、国の所有する公共施設、債権はそれぞれ地方ブロックごとに分割して道州政府に管理させるとともに国の債務についても原則、道州政府が引き継ぐこととする。とくに資産・資金での比重が大きい年金については、道州政府が管理をすることとすべきである。

 

これにより中央政府としての債権債務関係は、簡明なものとなり、国際関係、特にアジア諸国との間の国家関係で積極的な財政協力・提携を行うことが出る。欧州連合諸国が財政赤字を一定範囲に抑制するように求めている「安定成長協定」はアジア経済圏が成立していくときにも同様に各国の規範となり、わが国も中央政府の財政的健全性を取り戻すためには、道州制は、救国の制度改正としての役割も引き受けるべきである。

 

道州政府は、日本銀行との独自の交渉協議が行える地位を与えられ、道州政府の債券を独自に発行することができるものとする。つまり、道州制が確立すれば、累積の赤字国債

は主として道州連合体で、地域間競争をしつつ解消していくことになる。この道州に日銀との交渉をできる立場を与える、あるいは日銀そのものを連邦準備金制度のように分割しては、という着想は、ある高名経済学者のものだが、筆者は、公に議論する価値があるとおもう。首都移転に絡んで大阪に日銀を移転するという案も昔、でた。またこの際、NHKを道州分割する案も、イギリスでBBC分割が検討されるのと同じで、道州制でも検討に値する。


八 おわりに

 

道州制を導入するからには、国全体の活性化(人口反転増、ソフト産業振興など)につながる構想でなければならない。ただただ「地方分権」の声に乗って行われる道州制では、内容もつまらないが、そもそも国民の理解が得られず実現しないだろう。

本稿では、「地方分権」を錦の味方に実質的に都道府県の合併による道州制を主張する向きが多いのに対し、旧首都圏整備委員会のような地方ブロック行政委員会形式の道州制を想定しての違った趣の提案を底流に置く主張をまとめてみたつもりである地方分権はもう古い。文明の共生する世界秩序の形成期には、国としてのまとまりのある内政のスピーディな展開が肝要なのである。

必ずしもポイントを得ている本稿とはいえないが、今後、多様な議論が各段階で国民的になされることを期待している。

 

(以上)

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小論紹介「道州制と地方支分部局のゆくえ

ある省庁地方局幹部A氏の小論を預かり、匿名を条件に掲載の許しを得ました。平成17年2月の作成です。

「道州制構想の実現のために」

(急ぎ俎上に乗せるべき国の出先機関の統合)

 市町村合併の動きがピークを迎え、基礎的自治体の規模・能力の拡充に伴う次の改革として、道州制論が熱を帯びてきている。議論のベースとなっているのが、第27次地方制度調査会答申(平成15年11月)であり、「国の役割は国際社会における国家としての存続に関する事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動に関する事務」を中心とし、「全国的な規模もしくは視点に立って行なわなければならない施策及び事業の実施」についてはその大半を、都道府県を廃止して設置する広域自治体としての道州に移譲し、この結果、圏域全体の視点にたった産業振興、雇用、国土保全、広域防災、環境保全、広域的交通ネットワークの整備等の事務・事業は道州が担うというのがその骨子である。

 外交、防衛などの業務が複雑化し、難しさを加える中で、公共事業等の補助金の配分などの業務の優先度は相対的には低く、中央政府の役割を重点化すべきことに異論は少ないであろう。しかし、産業振興以下上記で列記された国の地方支分部局が担っている権限を含め、国の役割を広く広域自治体としての道州に移譲することについては、国家の再編・改造を意味するものであり、連邦制を含む憲法改正問題を内包する地方制度の改革に収まらない課題にあるにもかかわらず、地方制度調査会答申は、国の権限の受け皿を広域自治体としての道州制に限定してしまったことが、元々難しい道州制論議の混迷に拍車を掛ける原因となっている。

このような無理とも思える論理構成になったのは、国家の再編・改造の観点から、国側が主体的に検討すべき国の地方支分部局の統合問題が俎上に上がらず、具体の見通しが立っていないためである。

 失われた10年の閉塞状況の打開のために、圏域行政の縦割り是正が多くの関係者から指摘されて久しい今日、国は、5年程度の期間を目途に、北海道、九州等の圏域を単位に、国の地方支分部局を統合することを決定し、ここに圏域レベルで処理するにふさわしい権限を再配分する必要がある。いわば、国の機関としての道州の創設である。総理はすでに今国会の所信質疑において、北海道における道州制特区構想を国として支援すると答弁している。その特区構想のなかには、道州制実現のステップとしての国の地方支分部局の統合が掲げられている。そこで、現段階でこれを全国的に一歩進め、国自らが主体的に地方支分部局の統合を打ち出すのである。

 一方、都道府県は、今後5年程度の間に、住民たちが自分たちの政府をつくるのだという住民自治の実現に絶えず軸足を置きながら、市町村合併の進展にあわせて広域行政需要への対応能力を磨き、広域連合の活用、都道府県の合併の推進などの実績を積み上げることになろう。

 こうした中で、さらに5年程度の期間内に、国と地方双方の取組状況、業務内容を評価した上、国の機関として道州を存続させるのか、統合された国の地方支分部局をさらに広域自治体としての道州に吸収するのか、統合された国の地方支分部局と広域自治体としての道州との両面の性格を持った新しい形の道州を設置するのかが選択されるべきである。

 いずれにしても、道州は、国際化時代に世界に開かれた圏域の総合行政主体として、地域間競争に勝ちぬき、選択と集中による創造的で特色ある地域活性化を実現するための手段である。道州の組織の性格、携帯については、あらかじめ決めておく必要はなく、国側、地方側の双方がパフォーマンスに優れたシステムの実現に向け努力し、それらを評価する熟度が高まった段階で具体的な決定をしていけばよいのである。

(以上)

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広域地方計画 

広域地方計画を読む

平成21年9月15日

(株)天本俊正・地域計画21事務所

天本俊正

 

1.概要

 

 国土形成計画法(平17)に基づく国土形成計画(全国計画)が平成20年7月、閣議決定されたのを受け、地方ごとに広域地方計画の策定がなされてきた。この平成21年8月4日に国土交通大臣の決定を見た。8地方(北海道、沖縄は別途)の計画を通読して一応の評価を試みた。

 なお、第2次社会資本重点計画(平成20-24年度)は、平成21年3月31日に閣議決定をみており、各施設の整備目標(水準)を定めている。

 

2.全国計画との関係

 

 全国計画は「多様な広域ブロックの自立的発展、美しく暮らしやすい国土」を国土像とし、広域地方計画はこれをうけ、東アジアとの交流、都市圏の整備、産業クラスター、農商工連携、環境、「新しい公」などを盛り込んでいる。概して、各地方の独自性は薄く、予算の裏づけがないので、残念ながら抽象的お題目が多い。要求型より、金太郎飴型でお付き合い。それでも各県、地方経済団体、地方支分部局などの意気込みが感じられる面も多く見受けられる。

 

3.各地方計画を読む

 

1)東北

 

 *新潟を含む6県、仙台が地方中枢都市として影が薄い。新潟が政令市で、中枢都市として並ぶが、東北全体に力を持てるか?新潟=会津=郡山=いわき、もしくは新潟=福島=仙台の連携ができれば可能であろう。

 *原発拠点(新潟・福島、むつ)が地域開発拠点として意味をもつ。核燃料もある。低炭素で「環境先進圏域」となる。

 *青函新幹線を打ち出せていない。格子状骨格高速道路ももう少し強く促進を書くべき。

 

2)関東

 

 *併行して存在する首都圏整備計画(平11-27)がハード中心なのに、今度はソフト中心。国際ビジネス業務基盤、大都市リノベーション、蜘蛛の巣構造プロジェクトなどが打ち出されている。業務核都市構想とは違う。首都圏整備計画の今後の扱いは課題である。

 *民主政権交代でいえば、八つ場ダムは堂々と大臣決定として主張されている。高速無料化は、東北、九州などの地方の高速道路の建設・利用の促進につながるが、必要性の高い首都圏の環状高速道路は、有料・特急料金で建設すべき。    

 *全国から見れば必要な東京一極構造の是正への関心が全然ない。京都遷都、機能分散になにか言い出すべき。4200万人は大都市圏過ぎる。

 *中央新幹線リニア、横田基地民間空港化は、調査として書かれている。オリンピック招致については、中立。

 *NBC(核・生物・化学兵器)攻撃に備えたテロ対策に言及しているのに驚く。

 *外国人労働者対策=北関東で多文化共生社会をとりあげている(中部圏も)。国土計画の新しい注目すべき側面である。

 

3)中部 

 

*今、世界の冠たるトヨタ、スズキのお膝元で「自動車」のご威光か、意気あがる。「日本のロータリー」から「世界のまんなかへ」という。上滑りの計画内容の感がある。

*多文化共生圏=外国人住民の増加を予想、先進的に対応しようとしていて評価すべきである。

*地域クラスターのオンパレード、ものづくり、医療,ナノテク、知的・・・。にぎやかである。

*中部圏計画(平12-おおむね27)との整合をとる必要がある。

 

4)北陸  

 

*石川・富山・福井で小さいブロックだが、「進取の気性」の土地、と誇り高い。歴史、文化、自然、生活環境を誇りに環日本海中枢を目指す。

*出生率が高い、共稼ぎ率が高い。人口減を防ぐ日本のモデル地域振興だ。「ふくい3人子応援プロジェクト」など。

*原発集中立地もあり。

*連接都市圏と整備し、世界の技術・理論の人材を集めたいとしている。

*日本海の海域・空域の安全確保、保安強化をとりあげている。軍事的意味があり、それをこの計画で意識しているかどうか疑問だが、大事な視点である。 

 

5)近畿  

 

*「文化首都圏」を主唱はいい。しかし、経済・生活は首都圏のバックアップでは、2眼レフで列島リードした関西としてはさびしい。

*関空強化をいうが、伊丹廃港は言い出す勇気なし。

*次世代産業の育成ー各地の産業クラスター、スーパーコンピュター(神戸)が頼りか?

*「日本最大のスポーツ施設」とは?サッカーか、具体案を知りたい。

*近畿圏計画(平12-おおむね27)との整合をとる必要がある。

 

 

 

6)中国

 

 *広島が地方中枢都市といえず。中心がない。

 *中四国一体のブロック形成でないと本四架橋、瀬戸内海の地域資源が生かされない。中心性も出てこない。

 

7)四国 

 

*四国4圏だけで広域経済圏は無理。プロジェクトは「お遍路」「野球リーグ」しかでてこない。

*メタンハイドレートの開発を書くべき(首都圏広域計画には「研究」と表現あり)

 

8)九州 

 

 *中国・韓国からの圧力をもろに受けているが、自動車・半導体の一層の発展以外に智慧が浮かびかねている。

 *東アジアへの門口といいながら福岡空港の強化一つ言い出せない。

 *一人当たり所得も経済力も低下傾向から抜け出せず、相変わらずの各地の産業クラスターしかいいだせない。

 *コンパクト都市もいいが、釜山、下関、広島、松山などを含む九州諸都市ネットワークで3000万人大都市圏を形成しない限り関東大都市圏の所得水準を上回る経済圏はできない。

 

4.広域地方計画の総括、そのほか

 

4−1 全国計画で書いて広域地方計画に採用されている概念で理解がしにくいものを列挙すると

 *2地域居住         *山から海岸までの土砂管理     *「新たな公」

 *低炭素社会        *志ある多様な主体      *BCP(事業継続計画)  

 *漂流・漂着ごみ  *農−6次産業

 

4−2 大きく計画自体の意義を考えてみると、今後は、「計画」という枠のなかでなく、プロジェクトを個別に決める、その都度、時流にあわせ「方針」をきめていく、のが行政の流れに即している。なぜか。人口減、経済停滞は、国家としては簡単には受け入れがたいことであって、計画のフレームは成り立たず、フレームを否定していける戦略プロジェクトを語って「計画」とすべきである。

 北陸計画が、人口減を容認しない、国民の気概に期待、を打ち出している点で、質的に全国計画を上回っている。北陸計画のトーンで全国計画を書き直すべきである。

 

4−3 この広域計画は、数年の年月と通算すれば万人にも及ぶ多くの人間が関与して、議論しまとめたものである。その効果は、じわじわゆっくりと日本の社会全体を動かす力となっていこう。

(以上)

 

 

 

 

再び広域地方計画を読む:国土計画行政の今後を見る

 

平成24317

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

1.はじめに

 

平成218月に政権交代、今だ民主党は国土計画の展望を持ちえず、日本の将来は混沌となっている。自民党政権下に作った国土形成計画(全国・広域地方)が、このまま、指標に留まりうるのか?

 研究会では、広域地方計画について素描と批判を論じたが(平成21.9)、読みなおしの感想をまとめたい。

 

2.首都圏広域地方計画は、八つ場ダムの建設を主張し通せるか

 

*八つ場ダムは、大規模水害対策の第一のプロジェクトとして整備の推進が掲げられている。政権交代とともに、大臣から中止が指示され、3年近くの混乱を引き起こした。結局、24年度本体着工になったが、国土形成計画の無力ぶりを明らかにした。

*東名リニア新幹線は、JR東海の事業のためか「実用化技術の推進」としかうたっていない。スカイツリーは、観光資源として出ているが、情報通信のプロジェクトに挙げられていない。横田は、軍民共用化への取り組みを推進と前向きになっているが、動き鈍い。

*歴史5街道の保存など新しい提案も多い。産業イノベーション創出プロジェクトは、数多くのプロジェクトがあり、大事な戦略であるが、公共投資としては何が期待されているのか、わからないので、迫力に欠ける(カネが来なければ息切れだけだ)。

 

*「地方分権」の証として、全国計画に理論を書き、広域地方計画でプロジェクトを書くという役割分担で計画は作られた。が、実際には、多くが、各都県からの浮ついたアイデアの列挙に終わっている。プロジェクトに軽重がつけられていないのは、計画論的にトータルの投資可能規模と必要施設への資金の配分の考察がないからだ。

 

*「WEB(蜘蛛の巣)構造」は、拠点地域の機能向上、交通・情報通信網の整備推進で首都圏の一体的発展を図るとする。関東の作成担当幹部の命名だが、残念ながら共感を得難い。

*首都圏整備法は、なお存続だが、首都圏整備計画(業務核都市、つくばな計画)は、このまま自然消滅のようだ。ハード面でのブロックの意思統一を果たしてきたので残念。一括予算計上権も空しい。

 

*総合地方行政機関としての道州制の実施も遠からず、見込み、今後の課題に何を取り込むか?筆者は、出生率の増加のためのソフト施策をもりこむべき(堕胎禁止、男女共同参画の廃止、扶養手当など家族給与制度の普及、婚活など)と思うが、今回の計画で「多文化共生」を正面から取り上げているのは評価すべきである。

 

3.北陸広域地方計画は、出生率を誇りうるのか

 

*出生率が高く女性の就業率も高い北陸圏(富山、石川、福井)の計画は、「出生率をさらに高め」と断言したところが、優れている。若い熱心な担当者の努力による。「暮らしやすさ日本一」から一歩進めて、道徳、規律の積極的意義をもっと強調して、全国をリードしてほしかった。

*原発立地への安全について、放射線への小学校からの教育を取り上げているのは、正しい。東北、北陸も原子力の全国配置からの見直しは必至。       

*北陸新幹線による連接都市圏の形成に期待する(岡山・広島、豊橋・浜松・静岡など横のつながりの魅力あり)。

*そうはいっても310万人規模の地方ブロック計画は、厳しい。中部、近畿と組むべきであろう。現在、なお推進中の中部圏開発整備計画(世界に開かれた多軸連携構造)には、捨てがたいものがある(実質、動きが鈍いのかもしれぬが・・)

 

4.近畿圏広域地方計画は、文化首都を「大阪都構想」で実現できるか

 

*関西復権というけれど、経済では東京一極集中の補完しか言えなくなっている。やっと文化首都を標榜している。「ほんまもん宣言」も空しい感じがする。

経済も住民意識もしっかりしたものがなければ「文化首都」も難しいであろう。

 

*橋下徹に言われてみれば、その通り、大阪府と大阪市、京都府と市、兵庫県と神戸市の権力の争奪、分裂(同胞排さい互いに時局を乱り)勢力を長く浪費してきた(為に大道を誤れり)。「大阪都」を大阪府民に後押ししてもらい実現すべき。

*税収よりも生活保護費のほうが多いなどの腐敗を脱するためには、計画で「高福祉圏域」の看板は、下ろすべきである。

*文化首都圏では、「文化政策・まちづくり大学院大学」の設置などのプロジェクトを不退転で実現すべきであろうが、実は、皇室の遷宮、日銀の大阪移転など、スケールの大きな「一極是正」策を、プロジェクトの中に忍ばせるなど、巧妙な策謀が、関西には必要である。

 

*次世代産業「知の拠点」プロジェクトは、バイオ、ロボット、光、コンテンツなどなど、にぎやかなメニューである。地域クラスターもたくさん掲げているが、公共予算がどの点でどう援助に入るのか、民間投資の見通しなど、考え方が、明瞭でなく、絵に描いた餅になりかねないのではないか。

 京阪奈、彩都、神戸、大阪ベイエリアなど、なんでもバラバラ、・・やはり強力な集権権力で、調整する必要があるのではないか?道州制につながる関西連合もトップを中央から持ってきてでも(国との中間機関)強い権力がいる。

 

*都市開発も梅田にしろ、大阪南港にしろ、指導力がなく、なんとなく遅れ遅れの印象を持つのは、間違いだろうか?

 

*メタンハイドレート開発、紀淡トンネル、伊勢湾横断道路、伊丹・空港跡地=マンハッタン計画、リニア名阪、リニア四国九州、京都遷都など大規模プロジェクトをやはり、絶え間なく言い続ける胆力が、関西には、ほしい。

 

5.国土形成計画の全国計画と広域地方計画の役割分担は、続くか

 

*民主党政権は、政権維持にキュウキュウで長期ビジョンは持とうにも持てないのか、あるいは体質的に底流の組合主義的な意識が、賃金・休暇にしか目がいかないのか。国土形成計画への関心は、いまのところない(計画廃止論から実質凍結になっている)。

*内閣に、国家戦略会議および国家戦略室を設け、直近の戦略は、建てようとしている。普天間問題、東日本大震災などの緊急問題の処理に追われ、とても内容の詰まったものはでない。

*国土交通省は、平成2311月、「持続可能で活力ある国土・地域づくりの推進」を発表し、「4つの価値、8つの方向性」を打ち出した。低炭素システム、医職住の近接、国際競争力の基盤整備など、個々のテーマを集大成したものである。24年度予算要求などに備えたもの。

 

*国土形成計画の全国計画、広域地方計画とも背後に資金計画、資金配分計画がないため、「絵に描いた餅」として等閑視されても誰も痛くも痒くもない。担当部局は、計画のフォローアップ、新計画の策定準備というが、空しい。

*公共投資としてどれだけの額が、計画期間中に投入可能かの検討がなければ、どんなに立派な計画を作文しても「絵に描いた餅」である。財務省も「査定」の権力を失い、アヘン的福祉の膨張に押し切られている。

 

6.おわりに

 

*公共投資の是非、プロジェクトの是非を長期的、広域的な観点から判断することは、容易ではない。球技に審判団が必要なように、国土計画にも専門職としての国土計画家の集団が、相当程度、質量ともに国家機関に、また地方地方で、あるいは、民間の分野、学界などで必要である。修学、修練、訓練、実地体験などの機会と人材育成が必要。それなくては、公共投資は成り立たず、国家も成り立たない。

(以上)

続:再び広域地方計画

続:再び広域地方計画を読む:無力感を脱せよ

 

平成24526

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

1.はじめに

 

 平成219月前の政権交代の前に駆け込みで策定された国土形成計画(全国計画)、広域地方計画は、この3年間、実質凍結されてきた。当・青山研究会で小生は、「国土形成計画を批判する」(平成23.11)、「広域地方計画を読む」(平成21.9)「再び広域地方計画を読む」(平成24.3)と論じてきたが、今回は、九州・東北計画を読み直した。

 政局は混迷を極め、政府は全国計画の改定を持ち出すのも躊躇し、東日本大震災を受けての首都機能バックアップ分析でお茶を濁している。

 

2.九州広域地方計画は、中国の経済成長に対応できていない?

 

*東アジアへのフロントランナーとしての九州圏の形成のため、国際イベント、大学研究交流、投資交流をうたい、カーアイランド、シリコンアイランド、フードアイランド、観光アイランドを目指すとしている。インフラでは、九州新幹線の整備インパクトを取り上げている。

*中国の奇跡の成長は、ついにGNPで日本を追い越し、世界経済を動かしうるまでになった。隣接する九州・沖縄が、しょぼくれて置いて行かれる状況にある。

*九州計画に掲げられているプロジェクト、事業は、所詮、おのおのの地方県で実施中のそれらの延長でしかなく、日中関係でカギを握る全国規模の影響力のあるものは何一つない。東アジア国際交流軸(中国が主柱だろう)が九州・沖縄を素通りしている(日本を素通りしているともいえるが・・)

*ナショナルプロジェクトを全国計画に売り込むべき。例えば、日韓トンネル、新福岡空港、有明海大干拓、国際リニアコライダー計画(脊振)、ソフトでいえば、立命館太平洋大学クラスの国際大学・九州群設立、コンテンツ国立研究機関など。今の九州計画には、一つもない。

 

3.九州・基幹都市圏ネットワークに望みはあるのか

 

*九州の主要都市は、人口・文化・経済の集中度が高く、都市産業の発達が顕著である。特色を生かし日本全国、アジア、さらには世界に共同して売り込むのに最適である。

 計画にも「文化・知識集約化による創造都市形成、多彩な人材」とあるが、具体のイメージ、目標がわからない。

*例えば、大分・別府は、「西瀬戸地域と交わる東九州の拠点の形成」「駅周辺地域の市街地整備」「国際文化芸術の交流」などが抽象的、並列的にあげられていて戦略のイメージがわかない。九州での福岡一極集中には、否定的なようだが、では代わりにどうするのか。各県ばらばらでは日本・東京、中国大都市などに吸い込まれてしまうだけだ。

立命館アジア太平洋大学(学生5700うち国際2500)は、戦略的に成功しているが、これと同様の大学の拠点配置などを九州計画としてもっと積極的に生かす作戦を書くべき。

 

4.東北広域計画は、東日本大震災への対応が十分、もられていたか?

 

*「大規模地震・津波対策」は、広域プロジェクト13のうちの3番目に「日本海溝型地震等大型地震」を取り上げていた。津波観測網、避難場所確保の促進、

広域連携、三陸縦貫道など適切な対策を書きあげていたが、それらを上回る地震・津波であったということ。東海も含め太平洋海溝の国を挙げての研究機関を、地質、海洋、地理学者などを総動員して数兆規模で設立することを国土計画としては早急に決定すべきなのであろう。現在、検討の開始もないのは、怠慢な政権であろう。

 

*原子力発電は、東北計画ではことの重要性がわかっていない。低炭素・循環型社会という観点で新エネルギーなどを取り上げているのは、頓珍漢だ。「原子力発電」は、基幹電源と位置づけてはいるが、東通、女川、福島第1、福島第2、柏崎刈羽の5か所、全国原発の42%を管内で背負ていることの国土構造上の切迫感が、計画に現れていない。安全性の確保は、一言触れているが、今回のような千年大地震・大津波、テロ攻撃、国内外の戦争状況などまで想定した安全策を国土計画レベル(全国計画)で確立し、それを地方計画に具体に描くべきであったろうし、今からでもそうすべき。例えば、原発の孤立化防止のためのインフラをどう考えるか。

*東北として、原発への問題意識が強ければ、地方独自にプルトニューム問題、トリウム原発、廃棄物処理問題など取り上げたがいい。それもなしに安全を国に縋り付く、あるいは一方的に攻撃して、協力姿勢を見せないは、恥ずかしいこと。むつ小川原で、「原子燃料サイクル」「核融合エネルギーの早期実現」など他人事のように書けないはず。

 

5.広域地方計画から国土形成計画(全国)をどう考えるか?

 

*プロジェクトは地方計画でという計画体系をとったが、やはりナショナルプロジェクトの全国観点での認定が必要である。

 ナショナルプロジェクトとして、宇宙、科学、海洋、世界インフラ(日韓トンネル、北方領土返還など)防衛、環境などを取り上げるべきであろう。それを逆に地方計画におろし、地方での受け入れの条件を書くべきだ。

 

*現今の国土計画で最も緊急、最大の課題は、人口減の阻止である。外国人労働者の移民もあるが、日本民族の維持発展の観点から、どう民族問題として取り組んでいくか、正面から取り上げるべきである。少なくとも男女共同参画法のような悪法、誤れるフェミニズムを横行させている国の政策(主として内閣府、文部省、厚生労働省など)を止めさせることを国民に訴えるべきである。

 

*前回にも指摘したことだが、せめてナショナルプロジェクトだけでも投資額計画が背後にない限り、国土形成計画はほとんど意味をなさない。それを許さないとしたら財務省主導の国家行政はご破算にしたがいい。

 

*民族の道義/志操を高めていく国民運動は、過剰福祉を排除するものにつながり、赤字国債の発行を止めることにもつながる。過剰福祉の排除は財務省主導の国家行政ではできない。カネ勘定に終始する財務省体質では、人間の品性の向上につながる政策は思いつかないからである。

 

*民族の道義/志操を高めていく国民運動は、政治・行政の分野では、国・地方一体の道州制を実現するなかで、実効を上げていくことができる。福祉の削減は、政治・行政の第1線としての市町村の強化なくして、できない。市町村行政に対して、国、都道府県の強力な政治・行政の指導が必要である。権限移譲の面からいう「地方分権」は一定の正当性を持っているが、国家再生、民族再生の指導力は、中央の政治・行政の指導力を絶対的に強いものにしなければならない。

 なお、広域計画と行政については矢田俊文が地方庁を提案している(注。

 

6.おわりに

 

*国民は長い経済不況に無力感を感じている。5か条のご誓文に「官武一途、庶民に至るまでおのおの志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す」とある。次の国土計画が、政治の新勢力によって起案されることを期待する。国民の民族の心に訴えるプロジェクトを盛り込まなければならない。

*「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土」という国土形成計画は、破棄すべきである。

以上

参考

平成219月のコメント

 

@九州 

 

 *中国・韓国からの圧力をもろに受けているが、自動車・半導体の一層の発展以外に智慧が浮かびかねている。

 *東アジアへの門口といいながら福岡空港の強化一つ言い出せない。

 *一人当たり所得も経済力も低下傾向から抜け出せず、相変わらずの各地の産業クラスターしかいいだせない。

 *コンパクト都市もいいが、釜山、下関、広島、松山などを含む九州諸都市ネットワークで3000万人大都市圏を形成しない限り関東大都市圏の所得水準を上回る経済圏はできない。

 

A東北

 

 *新潟を含む6県、仙台が地方中枢都市として影が薄い。新潟が政令市で、中枢都市として並ぶが、東北全体に力を持てるか?新潟=会津=郡山=いわき、もしくは新潟=福島=仙台の連携ができれば可能であろう。

 *原発拠点(新潟・福島、むつ)が地域開発拠点として意味をもつ。核燃料もある。低炭素で「環境先進圏域」となる。

 *青函新幹線を打ち出せていない。格子状骨格高速道路ももう少し強く促進を書くべき。

 

注)矢田俊文「地方支分局は、災害・環境対策、インフラ整備など府県域を超えた課題解決に有効、かつ、現場の実態認識と対応の速さで優れている。支分局を一つに統合、地方庁とし、長官は首相が任命、首長等の協議会の意見で、広域地方計画を実施すべき」

(人と国土21:平成21/11

再生

「日本再生戦略」を読む

 

平成2484

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

 

1.はじめに

 

 平成247月、野田佳彦内閣は、国家戦略会議で平成32年(2020)を目標とする「日本再生戦略」を閣議決定した。その意味合い、国土計画との関係、日本の展望などの感想をまとめたい。

 

2.「日本再生戦略」の概略

 

*平成32年(2020)までの政策の体系を内閣としてまとめたもの。国家戦略会議(議長:首相)で議論した(事務局=内閣府国家戦略室;担当相・古川元久)。震災復興に加え、環境、医療、科学技術等、約450項目の施策をあげ、特に11の戦略分野と38の重点施策を掲げる。

*経緯=政権交代に伴い内閣に国家戦略会議が置かれ、平成226月には、菅内閣として「新成長戦略」をまとめた。東北震災と消費税増税案とをうけて

施策体系を打ち出さざるをえなくなった。25年度の予算編成の柱となる。

 

*副題=フロンティアを拓き、「共創の国」へ

*目玉(新聞論調より)医療・介護・健康=50兆円の新市場、雇用284万人

  環境=50兆円関連新市場、雇用140万人、次世代自動車:販売5

  観光=訪日2500万人

「日本再生の4大プロジェクトの実施」=3つの重点分野(環境・エネルギー、医療・介護、農林漁業)とセットで、「重点分野を支える担い手の支援ちいさな企業に光を当て地域の核となる中小企業の活力倍増」

 

11の戦略分野と38の重点施策:グリーン成長戦略、ライフ〃、科学技術イノベーション・情報通信戦略、中小企業〃、金融〃、食農再生〃、観光立国〃、アジア太平洋経済〃、生活・雇用〃、人材育成〃、国土・地域活力〃。38の重点施策=例えば「活性化の突破口となる総合特区、環境未来都市等の活用、新しい公共の活動推進」ほか

 

3.ねらいはなにか(天本の批判;1

天本俊正のホームページより

一口時評24/7/12:国家戦略会議の「日本再生戦略」を一読。嘆かわしい。成長率3%を無理やりつくり消費税増税を実現しようとする、ご都合主義のビジョンだ。今、政府がやるべきことは、社会福祉を削減し、家族・地域・職域の基盤強化で、日本民族の衰退を食い止める覚悟を国民に求めること、そのことに尽きるのに・・・。勤労公民、老若男女がそろって「一つ心」になって民族繁栄を願うべき。

 

4.中期経済計画が再び必要ではないか、代替になってない(天本の批判;2

 

*以前、経済企画庁が作成していた経済計画は、平成13年省庁再編の時になくなった。経済財政諮問会議が、それにかわり、民間委員の意見を重視、活用するやり方に変わった。政権交代で、国家戦略会議と衣変えしたが、この体たらくである。極言だが、財務省の影の誘導にしてはひどすぎる。

 

*雇用は、新技術、新制度(福祉政策、規制緩和)で増加するものか?経済理論がわからない。需要があり供給があり、需給バランスがどうなっているか、をみるのが経済学であり、財政の運営、国家の運営もその理論的バックアップをもつべきであろう。政策担当者や在野の学界・マスコミなど、その方面の議論がほとんど聞かれず、ただ聞こえのいいスローガンばかり並べている。

 

*デフレ脱却を柱に挙げている。日銀に期待では無責任。筆者の経済見立ては、「失われた20年」の不況の隠れた2つの原因は、@デモグラフィック(人口統計学)要因にある。高齢者が「定年」で働かなくなり、女子は誤れるフェミニズムのせいで子供を産まない。民族として生生流転の正しいシステムが壊れている。道徳・修身の再興があれば意外に短期間で健康な人口構造に戻れる。Aリストラ恐怖症の国民感情がある。平成バブルの始末をリストラ本位、いびつな規律強化(競争入札、公取横暴、選挙法改悪などなど)で進めた結果、国民はビビッている。将来への展望も開けず、カネはため込むだけため込む(その実、銀行口座から返還不能な国債に化けているのをご存じない)。家族・地域・職域での暖かい交流が欠けている。これまた、道徳・修身の再興があれば意外に短期間で健康な精神構造に戻れる。

 これらの隠れた要因に目をつぶって、消費税増税、日銀インフレ率目標と言っても効果はない。むしろ交際費減税、相続税撤廃などが、デフレ脱却になろう。

なお、TPPも逃げ、ただ農林漁業を4大重点にいれる誤魔化し姿勢あり。

 

5.グリーン成長戦略もライフ成長戦略も世界的に時代遅れ(天本の批判;3

 

*「原発からグリーンへ」と、また見当はずれ、臍をかむスローガンを打ち出している。太陽光発電、風力・地熱発電などは、すぐにボロがでる。4年前、アメリカ・オバマは、グリーン革命を持ち出して大統領になったが、今年はもういわない。グリーン革命の先進地とされたヨーロッパの停滞は、現実が厳しいことを示唆する。

*原発は圧倒的にコスト安、世界的な安全性の向上に伴い、アメリカ、中国、インドなど大国で利用は進む。日本は遅れる。いいのか。電気自動車の普及も怪しくなる。

320.*グリーン戦略の1項目で「環境不動産1000万m3」あり。やってみるべき。

 

 

*ライフ成長戦略も、医療・介護等で一見、雇用が増えるように見えても社会的に生産性を上げるでもなく、新たな分野の科学・開発を作り出すわけでもない。世界の進運に後れを取り、国力ダウンの可能性がある。高齢化社会は高齢者自ら家族・地域・職域の生活基盤の中で自分の位置をみいだすしか解決の道はない。赤字国債を垂れ流して社会福祉を水ぶくれにしても、「ギリシャの破綻・苦悩」の二の舞。

 

*科学技術イノベーション・情報通信戦略に選んだのは、評価する。官民あわせて研究開発投資をGDP4%(2020)はいい(今3.7%)。宇宙・海洋の戦略的利活用もある。「光の道」(2015に全世帯ブロードバンド)は心もとないとりあげかただ。

 

6.「分厚い中間層の復活」とはなにか?道義国家の復活か(天本の批判;4

 

*年収200万以下層の増加、所得中位層の貧困化の傾向を止めたいとしているが、若者や女性の就業率を上げる目標、有給休暇・育児休業など政府・労動・使用者交渉の合意事項を並べることで、国家構造を変えうるのか、疑問。現代版・教育勅語などを復活し道義国家に戻るがよい。「貧にして楽しむ」「貧乏は達者の元」「貧乏人の子だくさん」と考えるべし。西洋の個人主義の衰退があり、東洋の道義国家建設が、世界の大きな流れであろう(例えば、中国も共産国家から儒教の世界に戻ろう)

 

*「社会保障にも聖域を設けず歳出を見直す」を本当に実行すべき。国民活力・民族再生の鍵である。「政労使の社会的合意」を振り回し連合(日教組、自治労の天下)支持の民主党左派が、これを押すとは思えず。

 

*それにしても「中間層の復活」の項目の中に「国土・活力活性戦略」がくくられるのはどういう意味だろう。よっぽど持て余し?特区、環境未来都市、良質住宅ストック、コンパクト都市など、新味のない施策の羅列にしかならないのは、いかにも知恵のない話である。

 

*自民・公明の強靭国土(10年間で20兆円の公共投資)に対抗心がありあり。大都市再生と災害に強い国土・地域の構築を最後に滑り込ます。

なお、道州制・地方出先機関改革は、触れず(地方分権・地域主権国家は単語だけ:官公労大反対)

 

6.おわりに

 

消費税増税で苦境を乗り切ろうとするより、国旗国歌の尊重一つでもいいから誠実な道義国家の復活を呼びかける政治であってほしいし、道義国家をみずからの民族の問題としてとらえる国民であってほしい。

以上

 

 

 

7.国土形成計画Uと国土情勢(平成28年9月10日) 

「対流促進型国土」をめぐる国土情勢の動きについて

(試論)

平成28910

天本俊正

 NPOジオストラテジー研究機構会員

1.はじめに

 

 平成278月の国土形成計画U(全国計画)、同283月の広域地方計画の策定を経て、国土計画の分野は、今、その実行、フォローアップの段階に入っている。此の間、関連する分野の政策は、内閣を中心に「まち・ひと・しごと創生」「1億総活躍プラン」「日本再興戦略2016」などが目白押しに動いている形であり、平成29年度予算編成(骨太方針、概算要求)、東京2020オリンピックの準備などが進んでいる。

 国土形成計画Uにいう「対流促進型国土」は、現実に効果を発揮する方向に動こうとしているのか、日本を正しく導いていけるのか、論評を試みたい。

 

1 国土つくり、地域つくり

 

2.「まち・ひと・しごと地方創生」政策の推進と失速

 

2−1.「まち・ひと・しごと創生」の政策の体系と事業展開

 

 少子高齢化の歯止めと地方振興のために平成26年12月に「長期ビジョン」と「総合戦略」を策定し、地方において地方版総合戦略を府県・市町村に作成させた。「ビジョン」は、2060年(平成72年)に1億人人口の確保、「総合戦略」は、平成27−31(2019)の政策目標・施策;@地方の雇用創出A地方への人の移動B出産・子育ての希望C地域連携、を内容とする。平成28年から事業展開に入ったが、そのための国からの交付金は、補正予算、年度予算で1000億円−1500億円程度しか全国の地方に配布できず、地方からの顰蹙をかっている。

 

2−2.「まち・ひと・しごと創生」の考え方と実効

 

 地方において「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環とそれを支える「まち」の活力という触れ込みであるが、上滑りだ。政策パッケージを精一杯担ぎ上げ、KPI(業績評価指標)を根拠薄くても示す。例えば若者の就業率を78%にあげる。言うだけで実現するなんて考えられないが、・・・・。地方は、多くない交付金に惹かれて地方版を作ったようだが、実効は、はなはだ怪しい。行き過ぎていた「地方分権」に冷や水を浴びせた効果はあったろう。

 

2−3.「まち・ひと・しごと創生」と国土形成計画U

 

 観光地域づくり(日本版DMO)を中国爆買いツアーにあわせて「地方と世界をつなぐローカル・アベノミックス」としている。IOT(もののインターネット)の活用などあげている。文化庁の京都移転は、成果。コンパクト・プラス・ネットワークの推進は、国土形成計画Uと整合している。しかし、結局、国土形成計画Uがねらう東京一極集中是正(地方創生)は、このプランには、頼れない。

 

3.国土強靭化計画

 

 国土強靭化基本法(平成25年12月)により「国土強靭化基本計画」(平成26年6月)が策定され、「国土強靭化アクションプラン2014」が公表された。東日本大震災を受けての施策であるが、南海トラフ地震、首都直下地震、火山噴火等の大規模自然災害等に備えて国、地方のインフラも含め広範な対応、さらには地域、企業における防災、事業継承まで、「強靭化」を図るものである。計画は、5年ごとに見直される。都道府県、市町村もそれぞれ「国土強靭化計画」を策定することになっている。

 平成29年度概算要求は、4兆4600億円(内閣官房・国土強靭化推進室まとめ)である。

 

 国土形成計画では「震災、水害、風害その他の災害の防除及び軽減に関する事項」(第3号)として計画事項に上がっている。今度の計画Uでも「災害に対し粘り強くしなやかな国土の構築」(第1部3章2節)などの計画記述があるが、国土の骨格づくりとの関連に力点を置いての対策と考えるべきなのであろう。対して「国土強靭化計画」は、公共事業縮減の傾向に対抗するためのキャンペーン的要素が強いとみるべきだろう。折しも熊本地震なども起こり、国民の関心を引き寄せているが、実際に公費ベースの財政は、現状維持が精いっぱい。企業、地域の関心を呼ぶところにメリットがありそう。

 

4.社会資本整備重点計画、交通政策計画、住生活基本計画などはどう動くか

 

4−1 社会資本整備重点計画

 

 従来の道路、治水などの施設別5か年計画は、行政改革の一環として見直され、平成15年に社会資本整備重点計画法として統合された。国交省、農水省、警察庁の所管の13施設を通じて全国計画、総論計画が策定された。第4次計画(平成27−32年)が平成28年3月に策定され、国土形成計画の広域地方計画に合わせて地方版の社会資本整備重点計画も策定された。

 従前のように5か年間の個所付けと事業費が積み重なれるわけではないが、整備の重点目標と事業概要がしめされ、広域地方計画と合わせてみると公共事業の見通しがわかりやすくなっている。この社会資本整備重点計画は、法の趣旨としても国土形成計画と整合を取ることとなっている。インフラの老朽化、脆弱国土の克服などが目標に上がっている。

 

4−2 交通政策基本計画

 

 交通政策基本法(平成25年)に基づき交通政策基本計画(平成26−32)が、平成27年2月に策定されている。地方に下りては、地域公共交通網形成計画が平成32年までに100件、具体に策定されるなどが目標に掲げられている。

 

4−3 住生活基本計画

 

従前の住宅建設計画法および5か年計画に変わり、住生活基本法(平成18年)により住生活基本計画(全国計画)が策定される。現計画は、平成28年3月に平成28年―37年の計画期間で策定されている。既存住宅の流通、空き家の利活用、住生活産業の活性化などが計画内容となっている。計画内容のソフト化は、国土計画のソフト化へ通ずるものがあろう。

 

 

2 総合政策、経済政策など

 

5.1億総活躍プラン;アベノミックス第2弾

 

5−1 1億総活躍プランの策定までの経緯

 

 安部2次内閣は、平成24年12月に発足とともにアベノミックス3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間刺激の成長戦略)を打ち出し、特に日銀の新政策により一定の成果をあげたといえよう。平成28年6月に一億総活躍プランを閣議決定した。これは、平成27年秋の第2弾のアベノミックス・新しい3つの矢(GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職0)を受けて、働き方改革などを加え、地方創生も取り込むなどして安倍政権の総合政策として打ち出したものである。

 

5−2 1億総活躍の内容と効果

 

平成28年度予算で「一億総活躍」の内容を見ると、@「GDP600兆円」については、地域総合戦略の新型交付金1000億円、観光産業の振興416億円、臨時福祉給付金450億円、A「出生率1.8」では、児童扶養手当(2人目5000を1万円)1746億円、地域婚活5億円、B「介護離職」では、サービス付き高齢者住宅320億円などといった具合である。福祉赤字国債予算30兆円に比べいかにちまちました、ばらまき予算であるかがわかる。

 

5−3 一億総活躍の効果をどう考えるか

 

 「女性も男性も、お年寄りも若者も、失敗した人も障害、難病の人も、家庭、職場、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる総参加型の一億総活躍社会を実現」あきれたプロパガンダというしかないだろう。昭和前期の「億兆一心、八紘一宇」の方が、まだましだ。

中央政府の「国民への訴え」が甘いプロパガンダでしかないということは、国家としての目標、「くにがら」を見失っているからである。

 

6.日本再興戦略2016

 

 安部2次内閣の発足とともに成長戦略として、産業競争力の強化を図る「戦略」をさだめた。第4次産業革命(ビックデータの活用など)、生産性革命、「稼ぐ」力の強化、農協などの岩盤規制改革などがあげられている。

 

7.平成29年度予算編成に向けてのうごき

 

7−1.我が国の経済の状況と見通しと財政

 

 経済成長は、低成長しか見込めないし、財政の好転は、計画できていない。

 

7−2.見いだせないプロジェクト:例えばリニア新幹線の大阪延伸しかないか?

 

 大規模な公共事業のプロジェクトを見いだせないでいる。東京オリンピック2020が、わずかにカンフル剤で、他は見渡せない。「人口減少社会」を是認し、赤字国債垂れ流しの福祉膨張に手がつかない限り、国民の意気は、このままでは上がらない。まず国としてのポテンシャルをあげる国家戦略を、本来ならば国土計画に期すべきだし。そのための予算、人材配分をなすべきであろう。

 

3.国土形成計画Uの見直し

 

8.国土形成計画の進行と見直し

 

国土形成計画Uは、全国計画、広域地方計画が、実行段階に入っている。対流促進型国土のイメージを具体化して、国土国民一体の奮起につながって行くことが望まれる。しかし、この10年は、「日本の命運を決する10年」と大上段に振りかぶった割には、計画は力を持ち得ていないことがわかる。計画は始まったばかりだが、根本的に見直しを図るべきだというのが、正鵠というものであろう。広義の国土ビジョンの国民共有が必要なのだ。

 

8−1.人口政策

 

 人口政策は、あきらかに国土計画の分野に入っている。ソフトの国土計画として国民運動的な動きを奨励することが必要である。「一億総活躍」でいう「希望出生率1.8」の「希望」は子を産まない安楽を求める「希望」であって、人類にとって悪徳に基づくことを「日本民族」は世界にアピールすべきである。天皇人間宣言(昭和21.1)にいう。「家と国を愛する心は日本民族において、熱烈なものあり、人類愛の完成に向かって献身努力し、人類の福祉と向上に絶大なる貢献をすべし」(人口増殖は、家と民族を基礎とする世界観によるとは日本の人口政策の明言するところ=昭和16)

 

8−2.福祉政策

 

 赤字国債による身に過ぎた福祉過剰は、国民精神を腐敗させている。日本民族は「団結し、あいよりあい助け寛容相許す気風を作興し、自ら奮い、自ら励まし大業を恢弘せよ」

;天皇人間宣言(昭和21.1)。福祉を削り耐乏生活を耐え、「貧乏人の子沢山」の道を進むべきである。国土計画は、このことを「くにがら」として、明示していくべきである。

 

8−3.国際関係

 

 文化と経済との水準を確保できる先進国の地位を、「貧乏人の子沢山」で維持していけることができるならば、わが日本民族は、「人類の福祉と向上に絶大なる貢献をなす」所以たる民族性を持っていることを世界に示すことができる。

 

9.おわりに

 

 国土形成計画Uのフォロ-アップが、日本民族再生につながる根本見直しにつながることを願う。(例えば、コンパクトシティは、人口減の対応でなく、街の効率化、ひいては、街中での出産、育児、教育、介護、みとりまでの生活完結型にし、それで全国的な人口増に備える、などはどうだろう。)                        以上

 

かちがらす