日本を創造

目次

  「21世紀の国土つくり・地域つくり」

1.道州制への課題(天本俊正)平成19年5月

2.小論紹介:「道州制と地方支分部局のゆくえ」平成17年2月(A地方部局幹部)

3.広域地方計画を読む(天本俊正)平成21年8月 (小論紹介のあとに収録)

4.再び広域地方計画を読む(平成24年3月17日)

5.続:再び広域地方計画を読む(平成24年5月26日)

6.日本再生戦略を読む(平成24年8月)

7.国土形成計画Uと国土情勢(平成28年9月10日)

「21世紀の国土つくり・地域つくり」の紹介

「意欲は解放する」

ニーチェの言葉である

誰にとっても思い当たることがあろう。

国土や都市にとっても同じことがいえる。

「思い」がなくて住みやすい活動的な国土、都市を期待することは出来ない。

ここに国家公務員の一員として国土づくり、都市づくりの一端に携わってきた者として、昭和40年代から平成にかけての関係論文をまとめる。


目   次
第1部 国土づくり
第1章 圏域整備の新しい方向
第2章 地方都市と農村地域の環境整備の方向
第3章 21世紀の国土への視点
第4章 四全総と文化
第2部 都市づくり
第5章 都市と緑・潤い- 政策と課題
第6章 住宅政策の長期展望
第7章 アメリカの宅地開発と都市計画行政
第8章 地価対策- バブルの開始の時
[ 付録] 著者紹介

この本に関するお問い合わせは、下記までお願い致します

(株)天本俊正・地域計画21事務所
本社:〒227-0045 神奈川県横浜市青葉区若草台7-27
TEL:045-961-1238

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以下に、発表論文等を今後収録する予定です。平成19年7月10日

天本俊正

目次

0  「21世紀の国土つくり・地域つくり」 (著書紹介)

1.道州制への課題(天本俊正)平成19年5月

2.小論紹介:「道州制と地方支分部局のゆくえ」平成17年2月(A地方部局幹部)

3.広域地方計画を読む(天本俊正)平成21年8月 (小論紹介のあとに収録)

4.再び広域地方計画を読む(平成24年3月17日)

5.続:再び広域地方計画を読む(平成24年5月26日)

6.日本再生戦略を読む(平成24年8月4日)

7.国土形成計画Uと国土情勢(平成28年9月10日)

国土計画のソフト化を考える

平成29年ー平成30年 の論考は、本ブロックの中ほどに収録、大きくスクロールして読まれたい---------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

道州制への課題

 

 

 

 

 

 

 

 

平成十九年五月十一日

天本俊正(NPOジオストラテジー研究機構理事)


道州制への課題

 

目次

一 はじめに                                

二 「道州制」議論をむかえるわが国の基本情勢                

三 「地方自治」とはなにか                         

三の二 「地方分権」の危うい方向                      

四 戦後六十年の内政の行政機構の変遷とその評価               

四―二 予算の一括計上権                          

五 道州制の必要性                             

五―二 地方における国政の総合性の確保                   

六 道州制:避けるべき方向                        

七 道州制の形と実現への道                        

七―二国の財政危機を回避するための道州制について             

八 おわりに                              

 

                                 

参考図

一 「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土」(国土交通省資料)

二 国・地方の組織の再編(国土計画協会・ワーキンググループ)

三 国―地方関係(中川八洋氏の図を一部改変)


道州制への課題

 

平成十九年五月十一日

天本俊正

(NPOジオストラテジー研究機構理事)

 

一 はじめに

 

道州制議論は混迷している。自民党はこの七月の参議院選挙までに党としての案をまとめようとしている。四月の統一地方選挙の知事候補の中で「道州制」賛成は、四分の一しかいない(日経:四月九日)。昨年秋成立した道州制特区法は、北海道だけの一部の事業をいじくったもので、名前の割には、道州制を推進する中身とはなっていない。

 

第二十八地方制度調査会の道州制答申(平成十八年二月)をはじめ公式・非公式の各界各組織・民間からの提案も数多い。マスコミに現れる論調なども限りない。混迷と見られるのは、多くの主張がいわば制度設計主義に陥っており、現実軽視の主張の競合になっているからである。わが国の政治、行政、社会の現実と歴史伝統、経緯を尊重する改善主義からの議論があってしかるべきだ。地に付いた焦点の絞れた議論はそこからうまれてくる。

 

しかし、そうはいっても世の中の道州制への「期待」は増えている。

 

道州制が必要とされる主な意見をまず、整理しておこう。一、都道府県の範囲が広域化に対応できない、二、中央省庁の縦割りの弊害、三、時代の閉塞感などがあげられる。

これだけでは、明治以来の百二十年余の「地方総合行政組織としての都道府県」の改変には、踏み切れまい。「皿」だけいくら立派なものを造っても乗せて出す「ご馳走」がなければ国民には歓迎されない。

 

本稿の結論をあらかじめ言っておけば、平成の「道州制」改革は、一部、都道府県の行政組織を残しながら、国中央の組織の軽減・重点化をはかり、ブロック行政組織を現実に動きうる組織として作るべきである、という提言である。「地方分権」のスローガン化した観念論にこだわらず「国・地方一体の道州制」のあり方の提案につなげたい。


二 「道州制」議論をむかえるわが国の基本情勢

 

道州制推進論の多くが「時代の閉塞感」を理由のひとつに挙げている。確かに、九十年代の「失われた十年」がわが国の基礎構造に及ぼしたマイナスの影響は否定しがたい。ネイスビッツは「日本の長期的低落」を予言し、レスターソローは、「九十年代の日本はグローバル経済下、新技術への適応に失敗し、これからも成功しないであろう」という。

 

「日本衰亡」の言葉さえ出る昨今、東西冷戦終結とともにわが国の諸制度も大東亜戦争前の体制へ立ち返って、わが国独自の制度の再検討があってしかるべきである。特に、大げさな言いようだが、出生力低下(人口反転増が民族課題)、民族の存亡を乗り切るには、社会の原単位、家族、地域、職域での活性要素を取り戻す必要がある。「道州制」論議はその解決策の決定打というわけではないが、論議するには頭に入れておくべきであろう。

 

国の統治機構、財政の建て直しには、道州制は大いに関係する。国家統治の地方展開のあり様、地域社会の自立、家族・地域・職域の靭帯の強化、行き過ぎた福祉の是正などに制度改善が必要であり、それが「道州制」だろう。

 

新産業振興、新インフラ整備が「道州制」の最大の任務になるが、道州政府の権力・権限は、総合的でなければならない。財政力を強大に持つ、統治情報・知識の集中的集積、起業家育成、産学協同、中小企業対策、新労働秩序、雇用増などなど広範囲でかつ集中的でなければならない。

 

例えば、教育を取り上げて考えてみよう。やっと教育基本法が改正される。喜ばしいことだが、「道州制」論議の観点から言えば、与党・中央政府が、日教組に乗っ取られた子供の教育、偏向教育を国家的観点から是正するものであり、国家的責任を教育現場のあり方に結びつけるものである。戦後の教育体制は、地方教育委員会を媒介にして、現場のいわば勝手気まま指導に任されてきた。道州制での教育の行政は、道州が中央政府の意向と現場のあり様とを時代の要請に即して結合、措置していく役割であろう。

「教育」だけか?「治安」についても国家公安委員会、地方公安員会を通じて間接的にしか警察権力をコントロールできない。民主国家の中央意思が、責任と結びついていない(幸いにして今の警察行政は、教育のような偏向は見せていないが・・)。雇用、年金、生活保護などもみなタガが緩んでいる。国民は、自らが選んだ代表による中央政府が、迅速、強力に二十一世紀の日本の社会環境にふさわしい新政策を打ち出してくれてことを切望しているのに、現在の内政統治機構は、省庁も都道府県も市町村もそれぞれの役割を適切には果していない。内政全般のあり方を見直す機会になっている。


三 「地方自治」とはなにか

 

道州制導入にあたっては「地方自治」とはなにかを振り返るべきべきである。

 

地方自治も国家統治の一環である。明治の山縣有朋は言っている。「全国の統治に必要にして官府自ら処するべきを除くのほかこれを地方に分任することを得策となす」「人民参政の思想発達するに従いこれを利用して地方の公事に練習せしめ・・・・漸く国事に任ずるの実力を養成せんとす」(市町村制理由)。

一人の人間は、国民であり都道府県民であり市町村民である。一体一個である。「地方分権」の概念を弄ぶ人たちは往々にして、国と地方は対立し、住民の味方である地方が専制的な中央を牽制すべきという誤った観念が支配している。その上に、道州制を立てようとして、おかしな理念を持ち出す。地方自治も国家統治の一環であって道州制は、その考えに立って構築されるべきである。                  (付図三参照)

 

三の二 「地方分権」の危うい方向

 

いくつか道州制議論の中には、危うい方向がみられる。ひとつは、霞ヶ関官僚の間で、各省対立を避けるため故意に道州制議論を旧自治省の行政権限の枠内に閉じ込めようとする誤った動きがある。

 

有識者の中にも「地方」を殊更に国と対立的に捕らえようとする向きもある。たとえば西尾勝氏は、第二十八次地方制度調査会二十二小委員会発言で「どう考えても国の事務であるものを道州に引き取ることはない。かえって悪いことになる」とし、地方分権推進委員会についても「地方六団体の足並みが乱れない分野に限って議論を進めている(日経記事)」といった発言がみられる。

 

しかしながら、実は、国の統治(特に内政)の実行を担うのは地方自治である。

 

道州制のタウンミーティング(平成十八年三月)で竹中平蔵総務相(当時)発言がある。「国民にとって国であろうと地方であろうと役に立つ行政をやってくれればよいのであって、国民一般が道州制においそれと関心を寄せないのは、それなりにわけがある」。

 

現実に国民大衆にとって見れば日常の公の行政は、地方自治の窓口が引き受けている。

地方自治は、国の基本の目標と方向に一致していなければならない。国の方針にやたら楯突くをもって善しとするのは、よくない政治思想と言わざるを得ない。

 

行政の分野別で、国の役割、地方の役割を区分けするのは、誤解を招く。例えば、保健衛生は、地方自治といっても国際的な感染病の対応は、国中央が取り組むべきだし、外交こそ国中央といっても近隣諸国等との自治体外交は、自治体首長の最も熱心な分野だし、国防でさえ地方自治体の下支えがなければ国土防衛も実が挙がらない。

 

機能から判断すべきで、全国に及ぶ事柄、国の基本にかかわること、国の総力を結集しなければならないかどうかの最終的な判断などは、国・中央政府の役割、一方、地方・地域の実情に即して行政を実施するのは地方の役割である。無理に国と地方の役割分担を分野別に分けようとして迷路に迷い込んでいる道州制論議が、多い。

 

平成十三年一月の省庁再編成のときに「社会保険事務所」「都道府県労働局」が地方事務官制度の解消の名の下に都道府県の組織から切り離されたのは、国民=住民にとって逆行の行政改革であった。いわゆる「地方分権」の観点から見ても後退している。

 

厚生労働行政の第一線を地方自治が取り扱わないというのでは、地方自治そのものの存在価値がない。二十一世紀に入ってわが国の最大の課題は、人口反転増で民族の存亡を救うことである。「親が子供を育て子供が親の面倒を見る」という家族扶養の絆を国、特に社会保障、労働慣行が切り刻んでしまったのが、昨今の諸悪の根源である。政府は、中央・地方を通じて政策を見直さなければならない。その運用の第一線の権限・政策手段を地方自治が失ってしまって、日本をリードしていくことはできない。道州制を制度化するときに、この点をおろそかにしては歴史的な意味がない。国・地方一体の道州制が、不可避の最大の理由は、厚生労働行政にあるといって過言でない。

 


 

四 戦後六十年の内政の行政機構の変遷とその評価

 

戦後の内政組織は大きく変わった。内務省の解体、知事公選、地方支分部局の設置、公安委員会・教育委員会などの設置、国家地方警察の改変などが矢継ぎ早に制度として整えられた。

 

一方、戦後復興から国土開発にむけて大都市圏、地方圏のブロック開発行政が組織された。首都圏整備委員会、近畿圏整備本部、中部圏開発整備本部、北海道開発庁、沖縄開発庁、東北・北陸・中国・四国・九州各地方開発委員会がそうであり、このうち地方開発委員会を除いては国務大臣を長に戴き専任の事務当局が独立の行政機関として存在していた。昭和四十九年の国土庁発足で独立機関でなくなった。

 

これらの動きは道州制を考える上で避けて通れない視点である。新産業振興、新インフラ整備が「道州制」の最大の任務になるならば、このようなブロック機関の評価がまず議論の前提に出てしかるべきである。田中角栄内閣時代、省庁再編でこれらの機関は省庁内の一部局に閉じ込められてきているが、道州制を制度化するにあたって振り返ってみるべきである。第二十八次地方制度調査会が道州制を俎上に載せながらこのことに触れていないのは、各省縦割り弊害の反映であり、首相諮問機関の名前に悖る。

 

内務省解体、知事公選は、道州制制定の重要な考慮事項だが、このことは後で触れるとして首都圏・北海道開発などの問題点になお、触れておこう。

 

四―二 予算の一括計上権

 

首都圏整備委員会、北海道開発庁などがその権限の実効を確保する上で、悲願だったのは予算の一括計上権である。事業ごとの予算を決定することができるこの権限は、各省の強い抵抗にあい実現することができなかった。計画策定権だけでは、力は出てこない。

 

道州制は、本稿のひとつの想定の形としては、国の行政の観点から見れば、中央の「企画」と道州での「実施」分離が原則となる。地方サイドから見れば、おそらく現都道府県の「企画」が吸い上げられ、「実施」が残存都道府県(道州の支店的機能)となる。この際、予算一括計上権が、中央から道州に下りるのは当然である。ただ、「企画」「実施」ができるだけ一体的であるのは現実の要求であるので、相互の行きかいは有機的であるべき。

 

「道州制」の限らず行政の組織改変は、それぞれの国柄、歴史と伝統、国民性、習俗文化などに立脚して改善を考えて、考えていくべきである。わが国の地方ブロックが世界のどこかの国規模に匹敵するとか、どの国のあの制度はうまくいっているとかの俗物的議論をあまりしていけない。しかしひとつ、予算の一括計上で参考にしていいだろう制度としてフランスの制度をあげる。フランス各州は、中長期戦略プロジェクトを指定してその実施の予算については、年度を越えて国中央の保証を得ることができるものとしている(計画契約制度という)。

 

*フランスの計画契約制度=州地方長官(国側)と州議会議長(州側・住民側)との合意で地域整備事業のプロジェクトを決定し、これについては、中央政府との間の計画契約となり実施段階の予算が年度を越えて盛り込まれる。


五 道州制の必要性

 

道州制論議は、関係する各方面の思惑が先行して本当にどのような制度改善が必要なのかわからなくなっている。いわば「迷走する道州制」の状態だということは本稿の最初から申し上げてきた。これを打開するには、「真の必要性」を見極めなければならない。

 

明治維新以来の近代日本という長期の視点から見れば、内務省解体・知事公選が、道州制問題のポイントである。大東亜戦争以前は、内務省によって国家としての内政は、ことの善し悪しは別として、全国・地方で柱が通っていた。内務省解体によって地方総合行政能力がなくなり、一方、知事公選は都道府県のもつ性格を変えた。各省は、それぞれに地方支分部局を設置し自らの政策を全国に展開し地方に浸透させていくための手段とした。戦前、地方支分部局は、皆無だった。この十年、二十年に都道府県は、市町村合併、政令市進展から仕事の範囲が狭くなってきているし、産業振興などの意欲的な仕事をするには狭い県域が邪魔だ。平成七年以来の新地方自治法体系は、機関委任事務の廃止などで都道府県の権限を強めているように見えるが、その実、年金行政、労働行政などで手段を国に返上しているなど、むしろ「分権」は弱くなる方に逆行している。

 

知事公選は、国民の政治参加の面ではプラスに定着している。おうおうにしてポピュリズム的な知事の出現は、一見華やかに見えても長い期間続くとプロフェッショナル性の不足が地方地域の衰退傾向を招いている。近畿などその典型であろう。

 

一方、中央・霞ヶ関の各省庁も内閣府による総合調整はあるとしても、肝心の実施機関としての地方は、それぞれの地方支分部局がばらばらに動き、現場での総合性がなく、フィードバックしての中央政策立案にも生かされない。各省と都道府県の連携も「地方分権」により弱まっている。

 

五―二 地方における国政の総合性の確保

 

情報化時代にわが国が突入している。工業主力の時代の国政とは違うスタイルの行政組織が必要になっている。ピラミッド型の組織からネットワーク型、もしくはホロン型の組織に国中央も地方行政組織も組み替えていかねばならない。情報は、国の首相から地方自治体の現場第一線まで、即時に行きかうような時代になっている。上から指令が流れ、現場から報告が上がるような悠長な組織では国際競争に勝てる国家といえまい。それぞれの組織固体が役割に応じてすばやく間違いない判断ができるべきだ。

 

従来の土木建築などを主力とした公共事業は、長期計画の策定がとりやめになり社会資本重点計画に姿を変えた。現場に近い地方ブロック単位で、もう一度、地方地域の必要な発展基盤が何であるか、総合的に見極める体制が必要である。それが道州制だ。

 

道州制の役割は、新産業振興と新発展基盤の整備である。福祉、労働規範などの民生の見直しも道州制にキーポイントの立場を与える。「地方分権」でお題目のように実質的に都道府県の合併に過ぎないようなおざなりの道州制にしてはいけない。

 

「第二の公共事業」としての科学・教育・文化の広域事業を道州政府は集中的に取り組まなければならない。旧来の事業の中からは、航空・都市・環境の事業だ。象徴的に言えば、大学・研究機関と空港・空路の整備が道州の仕事の中核になろう。あわせて都道府県の中小企業政策、雇用拡大などの政策の総集を行わなければならない(一定の都道府県の残存があるとして)

 


六 道州制:避けるべき方向

 

道州制は「行政」の地方機関のあり方に関するものであって、国の三権分立の立法、行政、司法の体制は変わらない。わが国の歴史・伝統、成り立ちからいってアメリカのような連邦制をとることはない。わが国は、基本的にひとつの民族、ひとつの言葉の統一国家であって、連邦制をとる必要性はまったくない。立法に関しては、国会が唯一の立法機関であり、行政は首相が与党政党から選出され、司法は最高裁判所を頂点とする全国組織である。統一国家ということから地方自治も国家統治の一環であることは先に見たとおりである。

 

国と地方の対立を煽る「地方分権」は許されない。地方の権限拡大によく使われる「補完性の原理」は、そもそもヨーロッパで教会と世俗との間で権利の調整に用いられた考え方でこの道州制論議に持ち出すことは不適切だ。この高度情報化時代に国民の日日の生活の基本を決めるのは国家レベルでの対応であって、世界が一体化している時代に国と地方が権限争いをしている余裕は、先進国たろうとする限りありえない。道州制が「国家解体」につながる様なニュワンスを持つとしたらとんでもないことだ。

 

道州制において国と地方は一体であるべきで、その意味で地方自治の一層制か、二層制かという議論も、あまり重要性を持たない。しかし地方自治の基本は、市町村であり、その首長公選と議会選出が地方自治の基本という意味では、一層制というべきである。

 

地方自治が、都道府県と市町村で重複した施策をとるのは行政の無駄である。政令市の制度は廃止し、自立できない市町村については連合等の組織を組むべきである。市町村が担う地方自治の指導監督は、道州政府が当然、担当することになる。市町村が基本であるとする地方自治の制度の企画は、国の総務省が担当する。しかし道州政府の総合調整行政そのものは関係各省の共管になる。むしろ内閣府に直属する道州政府という形のほうが適切か。在来の都道府県知事、都道府県議会については道州政府を形作る内部組織となろう。道州長官は、国から国務大臣が出るのが本筋であると考える。

 

国の政治・法制度の硬直性を補う制度として「特区」制度が採られてきている。大きすぎる・(こま)かすぎる・硬直的な中央集権の弊害は、改善されなければならない。政策の実施はできる限り現場に近いところの責任に任すべきである。道州制は、その意味で国の中央の実施面の権限を大幅に引き受けて、さらに日常的な業務については自治としての市町村を信頼する。こういう体制をとることは、わが国が世界経済の速いテンポに的確に対応するために早急に取り組むべきこと。それを一部の権限争いでしかない「地方分権」で、都道府県廃止・合併で、形のみ整えようとして、実態的に何の国民へのメリットを示せないまま強行するのは、よくない。

 

道州政府の長官の公選の問題、都道府県知事の公選、都道府県議会、道州議会の設置の問題については、民主主義のルールに則り、効率・迅速・正確・生活向上などの効果を見極めながら現実的に対応すべきである。やたら「住民参加」「直接民主主義」を標榜する動きの中で道州制を考えるのは賢い方策とは思えない。


七 道州制の形と実現への道

 

国の機関または中間機関としての道州制は、全国六ないし十程度の地方ブロックごとに地方総合調整行政を担当する機関としての道州政府を新たに設置することによって実現する。国の各省庁の改変、都道府県の扱いについては、段階的現実的に行う。都道府県の区域への百二十年余にわたる国民の親しみ、こだわりに鑑み、知事公選の継続ともに、残存もありうるとする(自然に都道府県合併の機運が出ればそれにこしたことはない)

 

本稿では(財)国土計画協会・道州制研究ワーキンググループ(代表:山東良文氏)の提案する*ブロック地域協議会(大臣・知事・政令市長で構成)*道州選出国会議員の優先議決権の行使(道州議会の役割)*一層制の地方自治?国と都道府県から新設道州への権限の段階的委譲*弱小市町村の連合体という、道州制提案を原則的に支持する。(平成十八年二月発表)                           (付図二参照)

 

ただ、個人的には、道州政府は、同上グループが過渡的とした「ブロック地域協議会」の制度を行政委員会のように本格的な道州制の制度として確立する方がよいと思う。都道府県は、知事が参議院議員を兼ねるなどの国政とのつながりの改変はあっても、道州政府(協議体行政)の構成員となって道州全体の連帯責任を負うなどの形が、むしろ現実的であろう。明治以来百二十年にわたって国民に馴染んだ行政単位をむげに廃止することはない。アメリカで東部十三州がいまだにカリフォルニアやテキサスなどの大きな州と交わって存続し機能していることを考えれば、わが国も無理をすることはない。

 

公共投資の計画の体系は、この数年で大きく変わってきた。各施設ごとの全国法定の長期計画は廃止され社会資本重点計画となり、国土形成計画が全国・地方で策定されるようになった。首都圏整備計画、近畿圏整備計画、北海道開発計画等は依然、継続しているが道州制の制度化(安倍内閣としては三年でビジョン、そのあと実現)に伴ってこれらの開発計画は、原則、道州政府が策定するものとすべきである。予算の一括計上権も道州政府に与えられるべきである。

 

道州の区域割りについては、首都圏、近畿圏、中部圏、北海道、沖縄、東北、北陸、中国、四国、九州の十道州が、戦後の大都市圏行政、地方開発行政などの経緯を十分に踏まえたものとして望ましいだろう。しかし、北海道・東北の合体、中部・北陸の合体、中四国、九州・沖縄の一体化での六道州も検討に値すると考える(北方領土・沖縄は特別担当相が別途あろう)。実は、このようなブロックわけは、国土交通省国土審議会の国土形成計画中間報告で、「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土」として提唱されている。霞ヶ関の各省仕切りの中で、必ずしも国土形成計画と道州制は軌を一にするものでないとの暗黙の了解があってか、同じ土俵の上で議論されることが少ない。国民から見れば、広域経済圏の動きに則って道州区割りを考えるのは、当然だと思うであろう。                    

 

七―二 国の財政危機を回避するための道州制について

 

道州制は、国の形を変える変革である。国の最大の課題のひとつである「財政危機」を解決する手段も提供する制度改善であることが望まれる。このため、国の所有する公共施設、債権はそれぞれ地方ブロックごとに分割して道州政府に管理させるとともに国の債務についても原則、道州政府が引き継ぐこととする。とくに資産・資金での比重が大きい年金については、道州政府が管理をすることとすべきである。

 

これにより中央政府としての債権債務関係は、簡明なものとなり、国際関係、特にアジア諸国との間の国家関係で積極的な財政協力・提携を行うことが出る。欧州連合諸国が財政赤字を一定範囲に抑制するように求めている「安定成長協定」はアジア経済圏が成立していくときにも同様に各国の規範となり、わが国も中央政府の財政的健全性を取り戻すためには、道州制は、救国の制度改正としての役割も引き受けるべきである。

 

道州政府は、日本銀行との独自の交渉協議が行える地位を与えられ、道州政府の債券を独自に発行することができるものとする。つまり、道州制が確立すれば、累積の赤字国債

は主として道州連合体で、地域間競争をしつつ解消していくことになる。この道州に日銀との交渉をできる立場を与える、あるいは日銀そのものを連邦準備金制度のように分割しては、という着想は、ある高名経済学者のものだが、筆者は、公に議論する価値があるとおもう。首都移転に絡んで大阪に日銀を移転するという案も昔、でた。またこの際、NHKを道州分割する案も、イギリスでBBC分割が検討されるのと同じで、道州制でも検討に値する。


八 おわりに

 

道州制を導入するからには、国全体の活性化(人口反転増、ソフト産業振興など)につながる構想でなければならない。ただただ「地方分権」の声に乗って行われる道州制では、内容もつまらないが、そもそも国民の理解が得られず実現しないだろう。

本稿では、「地方分権」を錦の味方に実質的に都道府県の合併による道州制を主張する向きが多いのに対し、旧首都圏整備委員会のような地方ブロック行政委員会形式の道州制を想定しての違った趣の提案を底流に置く主張をまとめてみたつもりである地方分権はもう古い。文明の共生する世界秩序の形成期には、国としてのまとまりのある内政のスピーディな展開が肝要なのである。

必ずしもポイントを得ている本稿とはいえないが、今後、多様な議論が各段階で国民的になされることを期待している。

 

(以上)

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小論紹介「道州制と地方支分部局のゆくえ

ある省庁地方局幹部A氏の小論を預かり、匿名を条件に掲載の許しを得ました。平成17年2月の作成です。

「道州制構想の実現のために」

(急ぎ俎上に乗せるべき国の出先機関の統合)

 市町村合併の動きがピークを迎え、基礎的自治体の規模・能力の拡充に伴う次の改革として、道州制論が熱を帯びてきている。議論のベースとなっているのが、第27次地方制度調査会答申(平成15年11月)であり、「国の役割は国際社会における国家としての存続に関する事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動に関する事務」を中心とし、「全国的な規模もしくは視点に立って行なわなければならない施策及び事業の実施」についてはその大半を、都道府県を廃止して設置する広域自治体としての道州に移譲し、この結果、圏域全体の視点にたった産業振興、雇用、国土保全、広域防災、環境保全、広域的交通ネットワークの整備等の事務・事業は道州が担うというのがその骨子である。

 外交、防衛などの業務が複雑化し、難しさを加える中で、公共事業等の補助金の配分などの業務の優先度は相対的には低く、中央政府の役割を重点化すべきことに異論は少ないであろう。しかし、産業振興以下上記で列記された国の地方支分部局が担っている権限を含め、国の役割を広く広域自治体としての道州に移譲することについては、国家の再編・改造を意味するものであり、連邦制を含む憲法改正問題を内包する地方制度の改革に収まらない課題にあるにもかかわらず、地方制度調査会答申は、国の権限の受け皿を広域自治体としての道州制に限定してしまったことが、元々難しい道州制論議の混迷に拍車を掛ける原因となっている。

このような無理とも思える論理構成になったのは、国家の再編・改造の観点から、国側が主体的に検討すべき国の地方支分部局の統合問題が俎上に上がらず、具体の見通しが立っていないためである。

 失われた10年の閉塞状況の打開のために、圏域行政の縦割り是正が多くの関係者から指摘されて久しい今日、国は、5年程度の期間を目途に、北海道、九州等の圏域を単位に、国の地方支分部局を統合することを決定し、ここに圏域レベルで処理するにふさわしい権限を再配分する必要がある。いわば、国の機関としての道州の創設である。総理はすでに今国会の所信質疑において、北海道における道州制特区構想を国として支援すると答弁している。その特区構想のなかには、道州制実現のステップとしての国の地方支分部局の統合が掲げられている。そこで、現段階でこれを全国的に一歩進め、国自らが主体的に地方支分部局の統合を打ち出すのである。

 一方、都道府県は、今後5年程度の間に、住民たちが自分たちの政府をつくるのだという住民自治の実現に絶えず軸足を置きながら、市町村合併の進展にあわせて広域行政需要への対応能力を磨き、広域連合の活用、都道府県の合併の推進などの実績を積み上げることになろう。

 こうした中で、さらに5年程度の期間内に、国と地方双方の取組状況、業務内容を評価した上、国の機関として道州を存続させるのか、統合された国の地方支分部局をさらに広域自治体としての道州に吸収するのか、統合された国の地方支分部局と広域自治体としての道州との両面の性格を持った新しい形の道州を設置するのかが選択されるべきである。

 いずれにしても、道州は、国際化時代に世界に開かれた圏域の総合行政主体として、地域間競争に勝ちぬき、選択と集中による創造的で特色ある地域活性化を実現するための手段である。道州の組織の性格、携帯については、あらかじめ決めておく必要はなく、国側、地方側の双方がパフォーマンスに優れたシステムの実現に向け努力し、それらを評価する熟度が高まった段階で具体的な決定をしていけばよいのである。

(以上)

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広域地方計画 

広域地方計画を読む

平成21年9月15日

(株)天本俊正・地域計画21事務所

天本俊正

 

1.概要

 

 国土形成計画法(平17)に基づく国土形成計画(全国計画)が平成20年7月、閣議決定されたのを受け、地方ごとに広域地方計画の策定がなされてきた。この平成21年8月4日に国土交通大臣の決定を見た。8地方(北海道、沖縄は別途)の計画を通読して一応の評価を試みた。

 なお、第2次社会資本重点計画(平成20-24年度)は、平成21年3月31日に閣議決定をみており、各施設の整備目標(水準)を定めている。

 

2.全国計画との関係

 

 全国計画は「多様な広域ブロックの自立的発展、美しく暮らしやすい国土」を国土像とし、広域地方計画はこれをうけ、東アジアとの交流、都市圏の整備、産業クラスター、農商工連携、環境、「新しい公」などを盛り込んでいる。概して、各地方の独自性は薄く、予算の裏づけがないので、残念ながら抽象的お題目が多い。要求型より、金太郎飴型でお付き合い。それでも各県、地方経済団体、地方支分部局などの意気込みが感じられる面も多く見受けられる。

 

3.各地方計画を読む

 

1)東北

 

 *新潟を含む6県、仙台が地方中枢都市として影が薄い。新潟が政令市で、中枢都市として並ぶが、東北全体に力を持てるか?新潟=会津=郡山=いわき、もしくは新潟=福島=仙台の連携ができれば可能であろう。

 *原発拠点(新潟・福島、むつ)が地域開発拠点として意味をもつ。核燃料もある。低炭素で「環境先進圏域」となる。

 *青函新幹線を打ち出せていない。格子状骨格高速道路ももう少し強く促進を書くべき。

 

2)関東

 

 *併行して存在する首都圏整備計画(平11-27)がハード中心なのに、今度はソフト中心。国際ビジネス業務基盤、大都市リノベーション、蜘蛛の巣構造プロジェクトなどが打ち出されている。業務核都市構想とは違う。首都圏整備計画の今後の扱いは課題である。

 *民主政権交代でいえば、八つ場ダムは堂々と大臣決定として主張されている。高速無料化は、東北、九州などの地方の高速道路の建設・利用の促進につながるが、必要性の高い首都圏の環状高速道路は、有料・特急料金で建設すべき。    

 *全国から見れば必要な東京一極構造の是正への関心が全然ない。京都遷都、機能分散になにか言い出すべき。4200万人は大都市圏過ぎる。

 *中央新幹線リニア、横田基地民間空港化は、調査として書かれている。オリンピック招致については、中立。

 *NBC(核・生物・化学兵器)攻撃に備えたテロ対策に言及しているのに驚く。

 *外国人労働者対策=北関東で多文化共生社会をとりあげている(中部圏も)。国土計画の新しい注目すべき側面である。

 

3)中部 

 

*今、世界の冠たるトヨタ、スズキのお膝元で「自動車」のご威光か、意気あがる。「日本のロータリー」から「世界のまんなかへ」という。上滑りの計画内容の感がある。

*多文化共生圏=外国人住民の増加を予想、先進的に対応しようとしていて評価すべきである。

*地域クラスターのオンパレード、ものづくり、医療,ナノテク、知的・・・。にぎやかである。

*中部圏計画(平12-おおむね27)との整合をとる必要がある。

 

4)北陸  

 

*石川・富山・福井で小さいブロックだが、「進取の気性」の土地、と誇り高い。歴史、文化、自然、生活環境を誇りに環日本海中枢を目指す。

*出生率が高い、共稼ぎ率が高い。人口減を防ぐ日本のモデル地域振興だ。「ふくい3人子応援プロジェクト」など。

*原発集中立地もあり。

*連接都市圏と整備し、世界の技術・理論の人材を集めたいとしている。

*日本海の海域・空域の安全確保、保安強化をとりあげている。軍事的意味があり、それをこの計画で意識しているかどうか疑問だが、大事な視点である。 

 

5)近畿  

 

*「文化首都圏」を主唱はいい。しかし、経済・生活は首都圏のバックアップでは、2眼レフで列島リードした関西としてはさびしい。

*関空強化をいうが、伊丹廃港は言い出す勇気なし。

*次世代産業の育成ー各地の産業クラスター、スーパーコンピュター(神戸)が頼りか?

*「日本最大のスポーツ施設」とは?サッカーか、具体案を知りたい。

*近畿圏計画(平12-おおむね27)との整合をとる必要がある。

 

 

 

6)中国

 

 *広島が地方中枢都市といえず。中心がない。

 *中四国一体のブロック形成でないと本四架橋、瀬戸内海の地域資源が生かされない。中心性も出てこない。

 

7)四国 

 

*四国4圏だけで広域経済圏は無理。プロジェクトは「お遍路」「野球リーグ」しかでてこない。

*メタンハイドレートの開発を書くべき(首都圏広域計画には「研究」と表現あり)

 

8)九州 

 

 *中国・韓国からの圧力をもろに受けているが、自動車・半導体の一層の発展以外に智慧が浮かびかねている。

 *東アジアへの門口といいながら福岡空港の強化一つ言い出せない。

 *一人当たり所得も経済力も低下傾向から抜け出せず、相変わらずの各地の産業クラスターしかいいだせない。

 *コンパクト都市もいいが、釜山、下関、広島、松山などを含む九州諸都市ネットワークで3000万人大都市圏を形成しない限り関東大都市圏の所得水準を上回る経済圏はできない。

 

4.広域地方計画の総括、そのほか

 

4−1 全国計画で書いて広域地方計画に採用されている概念で理解がしにくいものを列挙すると

 *2地域居住         *山から海岸までの土砂管理     *「新たな公」

 *低炭素社会        *志ある多様な主体      *BCP(事業継続計画)  

 *漂流・漂着ごみ  *農−6次産業

 

4−2 大きく計画自体の意義を考えてみると、今後は、「計画」という枠のなかでなく、プロジェクトを個別に決める、その都度、時流にあわせ「方針」をきめていく、のが行政の流れに即している。なぜか。人口減、経済停滞は、国家としては簡単には受け入れがたいことであって、計画のフレームは成り立たず、フレームを否定していける戦略プロジェクトを語って「計画」とすべきである。

 北陸計画が、人口減を容認しない、国民の気概に期待、を打ち出している点で、質的に全国計画を上回っている。北陸計画のトーンで全国計画を書き直すべきである。

 

4−3 この広域計画は、数年の年月と通算すれば万人にも及ぶ多くの人間が関与して、議論しまとめたものである。その効果は、じわじわゆっくりと日本の社会全体を動かす力となっていこう。

(以上)

 

 

 

 

再び広域地方計画を読む:国土計画行政の今後を見る

 

平成24317

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

1.はじめに

 

平成218月に政権交代、今だ民主党は国土計画の展望を持ちえず、日本の将来は混沌となっている。自民党政権下に作った国土形成計画(全国・広域地方)が、このまま、指標に留まりうるのか?

 研究会では、広域地方計画について素描と批判を論じたが(平成21.9)、読みなおしの感想をまとめたい。

 

2.首都圏広域地方計画は、八つ場ダムの建設を主張し通せるか

 

*八つ場ダムは、大規模水害対策の第一のプロジェクトとして整備の推進が掲げられている。政権交代とともに、大臣から中止が指示され、3年近くの混乱を引き起こした。結局、24年度本体着工になったが、国土形成計画の無力ぶりを明らかにした。

*東名リニア新幹線は、JR東海の事業のためか「実用化技術の推進」としかうたっていない。スカイツリーは、観光資源として出ているが、情報通信のプロジェクトに挙げられていない。横田は、軍民共用化への取り組みを推進と前向きになっているが、動き鈍い。

*歴史5街道の保存など新しい提案も多い。産業イノベーション創出プロジェクトは、数多くのプロジェクトがあり、大事な戦略であるが、公共投資としては何が期待されているのか、わからないので、迫力に欠ける(カネが来なければ息切れだけだ)。

 

*「地方分権」の証として、全国計画に理論を書き、広域地方計画でプロジェクトを書くという役割分担で計画は作られた。が、実際には、多くが、各都県からの浮ついたアイデアの列挙に終わっている。プロジェクトに軽重がつけられていないのは、計画論的にトータルの投資可能規模と必要施設への資金の配分の考察がないからだ。

 

*「WEB(蜘蛛の巣)構造」は、拠点地域の機能向上、交通・情報通信網の整備推進で首都圏の一体的発展を図るとする。関東の作成担当幹部の命名だが、残念ながら共感を得難い。

*首都圏整備法は、なお存続だが、首都圏整備計画(業務核都市、つくばな計画)は、このまま自然消滅のようだ。ハード面でのブロックの意思統一を果たしてきたので残念。一括予算計上権も空しい。

 

*総合地方行政機関としての道州制の実施も遠からず、見込み、今後の課題に何を取り込むか?筆者は、出生率の増加のためのソフト施策をもりこむべき(堕胎禁止、男女共同参画の廃止、扶養手当など家族給与制度の普及、婚活など)と思うが、今回の計画で「多文化共生」を正面から取り上げているのは評価すべきである。

 

3.北陸広域地方計画は、出生率を誇りうるのか

 

*出生率が高く女性の就業率も高い北陸圏(富山、石川、福井)の計画は、「出生率をさらに高め」と断言したところが、優れている。若い熱心な担当者の努力による。「暮らしやすさ日本一」から一歩進めて、道徳、規律の積極的意義をもっと強調して、全国をリードしてほしかった。

*原発立地への安全について、放射線への小学校からの教育を取り上げているのは、正しい。東北、北陸も原子力の全国配置からの見直しは必至。       

*北陸新幹線による連接都市圏の形成に期待する(岡山・広島、豊橋・浜松・静岡など横のつながりの魅力あり)。

*そうはいっても310万人規模の地方ブロック計画は、厳しい。中部、近畿と組むべきであろう。現在、なお推進中の中部圏開発整備計画(世界に開かれた多軸連携構造)には、捨てがたいものがある(実質、動きが鈍いのかもしれぬが・・)

 

4.近畿圏広域地方計画は、文化首都を「大阪都構想」で実現できるか

 

*関西復権というけれど、経済では東京一極集中の補完しか言えなくなっている。やっと文化首都を標榜している。「ほんまもん宣言」も空しい感じがする。

経済も住民意識もしっかりしたものがなければ「文化首都」も難しいであろう。

 

*橋下徹に言われてみれば、その通り、大阪府と大阪市、京都府と市、兵庫県と神戸市の権力の争奪、分裂(同胞排さい互いに時局を乱り)勢力を長く浪費してきた(為に大道を誤れり)。「大阪都」を大阪府民に後押ししてもらい実現すべき。

*税収よりも生活保護費のほうが多いなどの腐敗を脱するためには、計画で「高福祉圏域」の看板は、下ろすべきである。

*文化首都圏では、「文化政策・まちづくり大学院大学」の設置などのプロジェクトを不退転で実現すべきであろうが、実は、皇室の遷宮、日銀の大阪移転など、スケールの大きな「一極是正」策を、プロジェクトの中に忍ばせるなど、巧妙な策謀が、関西には必要である。

 

*次世代産業「知の拠点」プロジェクトは、バイオ、ロボット、光、コンテンツなどなど、にぎやかなメニューである。地域クラスターもたくさん掲げているが、公共予算がどの点でどう援助に入るのか、民間投資の見通しなど、考え方が、明瞭でなく、絵に描いた餅になりかねないのではないか。

 京阪奈、彩都、神戸、大阪ベイエリアなど、なんでもバラバラ、・・やはり強力な集権権力で、調整する必要があるのではないか?道州制につながる関西連合もトップを中央から持ってきてでも(国との中間機関)強い権力がいる。

 

*都市開発も梅田にしろ、大阪南港にしろ、指導力がなく、なんとなく遅れ遅れの印象を持つのは、間違いだろうか?

 

*メタンハイドレート開発、紀淡トンネル、伊勢湾横断道路、伊丹・空港跡地=マンハッタン計画、リニア名阪、リニア四国九州、京都遷都など大規模プロジェクトをやはり、絶え間なく言い続ける胆力が、関西には、ほしい。

 

5.国土形成計画の全国計画と広域地方計画の役割分担は、続くか

 

*民主党政権は、政権維持にキュウキュウで長期ビジョンは持とうにも持てないのか、あるいは体質的に底流の組合主義的な意識が、賃金・休暇にしか目がいかないのか。国土形成計画への関心は、いまのところない(計画廃止論から実質凍結になっている)。

*内閣に、国家戦略会議および国家戦略室を設け、直近の戦略は、建てようとしている。普天間問題、東日本大震災などの緊急問題の処理に追われ、とても内容の詰まったものはでない。

*国土交通省は、平成2311月、「持続可能で活力ある国土・地域づくりの推進」を発表し、「4つの価値、8つの方向性」を打ち出した。低炭素システム、医職住の近接、国際競争力の基盤整備など、個々のテーマを集大成したものである。24年度予算要求などに備えたもの。

 

*国土形成計画の全国計画、広域地方計画とも背後に資金計画、資金配分計画がないため、「絵に描いた餅」として等閑視されても誰も痛くも痒くもない。担当部局は、計画のフォローアップ、新計画の策定準備というが、空しい。

*公共投資としてどれだけの額が、計画期間中に投入可能かの検討がなければ、どんなに立派な計画を作文しても「絵に描いた餅」である。財務省も「査定」の権力を失い、アヘン的福祉の膨張に押し切られている。

 

6.おわりに

 

*公共投資の是非、プロジェクトの是非を長期的、広域的な観点から判断することは、容易ではない。球技に審判団が必要なように、国土計画にも専門職としての国土計画家の集団が、相当程度、質量ともに国家機関に、また地方地方で、あるいは、民間の分野、学界などで必要である。修学、修練、訓練、実地体験などの機会と人材育成が必要。それなくては、公共投資は成り立たず、国家も成り立たない。

(以上)

続:再び広域地方計画

続:再び広域地方計画を読む:無力感を脱せよ

 

平成24526

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

1.はじめに

 

 平成219月前の政権交代の前に駆け込みで策定された国土形成計画(全国計画)、広域地方計画は、この3年間、実質凍結されてきた。当・青山研究会で小生は、「国土形成計画を批判する」(平成23.11)、「広域地方計画を読む」(平成21.9)「再び広域地方計画を読む」(平成24.3)と論じてきたが、今回は、九州・東北計画を読み直した。

 政局は混迷を極め、政府は全国計画の改定を持ち出すのも躊躇し、東日本大震災を受けての首都機能バックアップ分析でお茶を濁している。

 

2.九州広域地方計画は、中国の経済成長に対応できていない?

 

*東アジアへのフロントランナーとしての九州圏の形成のため、国際イベント、大学研究交流、投資交流をうたい、カーアイランド、シリコンアイランド、フードアイランド、観光アイランドを目指すとしている。インフラでは、九州新幹線の整備インパクトを取り上げている。

*中国の奇跡の成長は、ついにGNPで日本を追い越し、世界経済を動かしうるまでになった。隣接する九州・沖縄が、しょぼくれて置いて行かれる状況にある。

*九州計画に掲げられているプロジェクト、事業は、所詮、おのおのの地方県で実施中のそれらの延長でしかなく、日中関係でカギを握る全国規模の影響力のあるものは何一つない。東アジア国際交流軸(中国が主柱だろう)が九州・沖縄を素通りしている(日本を素通りしているともいえるが・・)

*ナショナルプロジェクトを全国計画に売り込むべき。例えば、日韓トンネル、新福岡空港、有明海大干拓、国際リニアコライダー計画(脊振)、ソフトでいえば、立命館太平洋大学クラスの国際大学・九州群設立、コンテンツ国立研究機関など。今の九州計画には、一つもない。

 

3.九州・基幹都市圏ネットワークに望みはあるのか

 

*九州の主要都市は、人口・文化・経済の集中度が高く、都市産業の発達が顕著である。特色を生かし日本全国、アジア、さらには世界に共同して売り込むのに最適である。

 計画にも「文化・知識集約化による創造都市形成、多彩な人材」とあるが、具体のイメージ、目標がわからない。

*例えば、大分・別府は、「西瀬戸地域と交わる東九州の拠点の形成」「駅周辺地域の市街地整備」「国際文化芸術の交流」などが抽象的、並列的にあげられていて戦略のイメージがわかない。九州での福岡一極集中には、否定的なようだが、では代わりにどうするのか。各県ばらばらでは日本・東京、中国大都市などに吸い込まれてしまうだけだ。

立命館アジア太平洋大学(学生5700うち国際2500)は、戦略的に成功しているが、これと同様の大学の拠点配置などを九州計画としてもっと積極的に生かす作戦を書くべき。

 

4.東北広域計画は、東日本大震災への対応が十分、もられていたか?

 

*「大規模地震・津波対策」は、広域プロジェクト13のうちの3番目に「日本海溝型地震等大型地震」を取り上げていた。津波観測網、避難場所確保の促進、

広域連携、三陸縦貫道など適切な対策を書きあげていたが、それらを上回る地震・津波であったということ。東海も含め太平洋海溝の国を挙げての研究機関を、地質、海洋、地理学者などを総動員して数兆規模で設立することを国土計画としては早急に決定すべきなのであろう。現在、検討の開始もないのは、怠慢な政権であろう。

 

*原子力発電は、東北計画ではことの重要性がわかっていない。低炭素・循環型社会という観点で新エネルギーなどを取り上げているのは、頓珍漢だ。「原子力発電」は、基幹電源と位置づけてはいるが、東通、女川、福島第1、福島第2、柏崎刈羽の5か所、全国原発の42%を管内で背負ていることの国土構造上の切迫感が、計画に現れていない。安全性の確保は、一言触れているが、今回のような千年大地震・大津波、テロ攻撃、国内外の戦争状況などまで想定した安全策を国土計画レベル(全国計画)で確立し、それを地方計画に具体に描くべきであったろうし、今からでもそうすべき。例えば、原発の孤立化防止のためのインフラをどう考えるか。

*東北として、原発への問題意識が強ければ、地方独自にプルトニューム問題、トリウム原発、廃棄物処理問題など取り上げたがいい。それもなしに安全を国に縋り付く、あるいは一方的に攻撃して、協力姿勢を見せないは、恥ずかしいこと。むつ小川原で、「原子燃料サイクル」「核融合エネルギーの早期実現」など他人事のように書けないはず。

 

5.広域地方計画から国土形成計画(全国)をどう考えるか?

 

*プロジェクトは地方計画でという計画体系をとったが、やはりナショナルプロジェクトの全国観点での認定が必要である。

 ナショナルプロジェクトとして、宇宙、科学、海洋、世界インフラ(日韓トンネル、北方領土返還など)防衛、環境などを取り上げるべきであろう。それを逆に地方計画におろし、地方での受け入れの条件を書くべきだ。

 

*現今の国土計画で最も緊急、最大の課題は、人口減の阻止である。外国人労働者の移民もあるが、日本民族の維持発展の観点から、どう民族問題として取り組んでいくか、正面から取り上げるべきである。少なくとも男女共同参画法のような悪法、誤れるフェミニズムを横行させている国の政策(主として内閣府、文部省、厚生労働省など)を止めさせることを国民に訴えるべきである。

 

*前回にも指摘したことだが、せめてナショナルプロジェクトだけでも投資額計画が背後にない限り、国土形成計画はほとんど意味をなさない。それを許さないとしたら財務省主導の国家行政はご破算にしたがいい。

 

*民族の道義/志操を高めていく国民運動は、過剰福祉を排除するものにつながり、赤字国債の発行を止めることにもつながる。過剰福祉の排除は財務省主導の国家行政ではできない。カネ勘定に終始する財務省体質では、人間の品性の向上につながる政策は思いつかないからである。

 

*民族の道義/志操を高めていく国民運動は、政治・行政の分野では、国・地方一体の道州制を実現するなかで、実効を上げていくことができる。福祉の削減は、政治・行政の第1線としての市町村の強化なくして、できない。市町村行政に対して、国、都道府県の強力な政治・行政の指導が必要である。権限移譲の面からいう「地方分権」は一定の正当性を持っているが、国家再生、民族再生の指導力は、中央の政治・行政の指導力を絶対的に強いものにしなければならない。

 なお、広域計画と行政については矢田俊文が地方庁を提案している(注。

 

6.おわりに

 

*国民は長い経済不況に無力感を感じている。5か条のご誓文に「官武一途、庶民に至るまでおのおの志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す」とある。次の国土計画が、政治の新勢力によって起案されることを期待する。国民の民族の心に訴えるプロジェクトを盛り込まなければならない。

*「多様な広域ブロックが自立的に発展する国土」という国土形成計画は、破棄すべきである。

以上

参考

平成219月のコメント

 

@九州 

 

 *中国・韓国からの圧力をもろに受けているが、自動車・半導体の一層の発展以外に智慧が浮かびかねている。

 *東アジアへの門口といいながら福岡空港の強化一つ言い出せない。

 *一人当たり所得も経済力も低下傾向から抜け出せず、相変わらずの各地の産業クラスターしかいいだせない。

 *コンパクト都市もいいが、釜山、下関、広島、松山などを含む九州諸都市ネットワークで3000万人大都市圏を形成しない限り関東大都市圏の所得水準を上回る経済圏はできない。

 

A東北

 

 *新潟を含む6県、仙台が地方中枢都市として影が薄い。新潟が政令市で、中枢都市として並ぶが、東北全体に力を持てるか?新潟=会津=郡山=いわき、もしくは新潟=福島=仙台の連携ができれば可能であろう。

 *原発拠点(新潟・福島、むつ)が地域開発拠点として意味をもつ。核燃料もある。低炭素で「環境先進圏域」となる。

 *青函新幹線を打ち出せていない。格子状骨格高速道路ももう少し強く促進を書くべき。

 

注)矢田俊文「地方支分局は、災害・環境対策、インフラ整備など府県域を超えた課題解決に有効、かつ、現場の実態認識と対応の速さで優れている。支分局を一つに統合、地方庁とし、長官は首相が任命、首長等の協議会の意見で、広域地方計画を実施すべき」

(人と国土21:平成21/11

再生

「日本再生戦略」を読む

 

平成2484

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

 

1.はじめに

 

 平成247月、野田佳彦内閣は、国家戦略会議で平成32年(2020)を目標とする「日本再生戦略」を閣議決定した。その意味合い、国土計画との関係、日本の展望などの感想をまとめたい。

 

2.「日本再生戦略」の概略

 

*平成32年(2020)までの政策の体系を内閣としてまとめたもの。国家戦略会議(議長:首相)で議論した(事務局=内閣府国家戦略室;担当相・古川元久)。震災復興に加え、環境、医療、科学技術等、約450項目の施策をあげ、特に11の戦略分野と38の重点施策を掲げる。

*経緯=政権交代に伴い内閣に国家戦略会議が置かれ、平成226月には、菅内閣として「新成長戦略」をまとめた。東北震災と消費税増税案とをうけて

施策体系を打ち出さざるをえなくなった。25年度の予算編成の柱となる。

 

*副題=フロンティアを拓き、「共創の国」へ

*目玉(新聞論調より)医療・介護・健康=50兆円の新市場、雇用284万人

  環境=50兆円関連新市場、雇用140万人、次世代自動車:販売5

  観光=訪日2500万人

「日本再生の4大プロジェクトの実施」=3つの重点分野(環境・エネルギー、医療・介護、農林漁業)とセットで、「重点分野を支える担い手の支援ちいさな企業に光を当て地域の核となる中小企業の活力倍増」

 

11の戦略分野と38の重点施策:グリーン成長戦略、ライフ〃、科学技術イノベーション・情報通信戦略、中小企業〃、金融〃、食農再生〃、観光立国〃、アジア太平洋経済〃、生活・雇用〃、人材育成〃、国土・地域活力〃。38の重点施策=例えば「活性化の突破口となる総合特区、環境未来都市等の活用、新しい公共の活動推進」ほか

 

3.ねらいはなにか(天本の批判;1

天本俊正のホームページより

一口時評24/7/12:国家戦略会議の「日本再生戦略」を一読。嘆かわしい。成長率3%を無理やりつくり消費税増税を実現しようとする、ご都合主義のビジョンだ。今、政府がやるべきことは、社会福祉を削減し、家族・地域・職域の基盤強化で、日本民族の衰退を食い止める覚悟を国民に求めること、そのことに尽きるのに・・・。勤労公民、老若男女がそろって「一つ心」になって民族繁栄を願うべき。

 

4.中期経済計画が再び必要ではないか、代替になってない(天本の批判;2

 

*以前、経済企画庁が作成していた経済計画は、平成13年省庁再編の時になくなった。経済財政諮問会議が、それにかわり、民間委員の意見を重視、活用するやり方に変わった。政権交代で、国家戦略会議と衣変えしたが、この体たらくである。極言だが、財務省の影の誘導にしてはひどすぎる。

 

*雇用は、新技術、新制度(福祉政策、規制緩和)で増加するものか?経済理論がわからない。需要があり供給があり、需給バランスがどうなっているか、をみるのが経済学であり、財政の運営、国家の運営もその理論的バックアップをもつべきであろう。政策担当者や在野の学界・マスコミなど、その方面の議論がほとんど聞かれず、ただ聞こえのいいスローガンばかり並べている。

 

*デフレ脱却を柱に挙げている。日銀に期待では無責任。筆者の経済見立ては、「失われた20年」の不況の隠れた2つの原因は、@デモグラフィック(人口統計学)要因にある。高齢者が「定年」で働かなくなり、女子は誤れるフェミニズムのせいで子供を産まない。民族として生生流転の正しいシステムが壊れている。道徳・修身の再興があれば意外に短期間で健康な人口構造に戻れる。Aリストラ恐怖症の国民感情がある。平成バブルの始末をリストラ本位、いびつな規律強化(競争入札、公取横暴、選挙法改悪などなど)で進めた結果、国民はビビッている。将来への展望も開けず、カネはため込むだけため込む(その実、銀行口座から返還不能な国債に化けているのをご存じない)。家族・地域・職域での暖かい交流が欠けている。これまた、道徳・修身の再興があれば意外に短期間で健康な精神構造に戻れる。

 これらの隠れた要因に目をつぶって、消費税増税、日銀インフレ率目標と言っても効果はない。むしろ交際費減税、相続税撤廃などが、デフレ脱却になろう。

なお、TPPも逃げ、ただ農林漁業を4大重点にいれる誤魔化し姿勢あり。

 

5.グリーン成長戦略もライフ成長戦略も世界的に時代遅れ(天本の批判;3

 

*「原発からグリーンへ」と、また見当はずれ、臍をかむスローガンを打ち出している。太陽光発電、風力・地熱発電などは、すぐにボロがでる。4年前、アメリカ・オバマは、グリーン革命を持ち出して大統領になったが、今年はもういわない。グリーン革命の先進地とされたヨーロッパの停滞は、現実が厳しいことを示唆する。

*原発は圧倒的にコスト安、世界的な安全性の向上に伴い、アメリカ、中国、インドなど大国で利用は進む。日本は遅れる。いいのか。電気自動車の普及も怪しくなる。

320.*グリーン戦略の1項目で「環境不動産1000万m3」あり。やってみるべき。

 

 

*ライフ成長戦略も、医療・介護等で一見、雇用が増えるように見えても社会的に生産性を上げるでもなく、新たな分野の科学・開発を作り出すわけでもない。世界の進運に後れを取り、国力ダウンの可能性がある。高齢化社会は高齢者自ら家族・地域・職域の生活基盤の中で自分の位置をみいだすしか解決の道はない。赤字国債を垂れ流して社会福祉を水ぶくれにしても、「ギリシャの破綻・苦悩」の二の舞。

 

*科学技術イノベーション・情報通信戦略に選んだのは、評価する。官民あわせて研究開発投資をGDP4%(2020)はいい(今3.7%)。宇宙・海洋の戦略的利活用もある。「光の道」(2015に全世帯ブロードバンド)は心もとないとりあげかただ。

 

6.「分厚い中間層の復活」とはなにか?道義国家の復活か(天本の批判;4

 

*年収200万以下層の増加、所得中位層の貧困化の傾向を止めたいとしているが、若者や女性の就業率を上げる目標、有給休暇・育児休業など政府・労動・使用者交渉の合意事項を並べることで、国家構造を変えうるのか、疑問。現代版・教育勅語などを復活し道義国家に戻るがよい。「貧にして楽しむ」「貧乏は達者の元」「貧乏人の子だくさん」と考えるべし。西洋の個人主義の衰退があり、東洋の道義国家建設が、世界の大きな流れであろう(例えば、中国も共産国家から儒教の世界に戻ろう)

 

*「社会保障にも聖域を設けず歳出を見直す」を本当に実行すべき。国民活力・民族再生の鍵である。「政労使の社会的合意」を振り回し連合(日教組、自治労の天下)支持の民主党左派が、これを押すとは思えず。

 

*それにしても「中間層の復活」の項目の中に「国土・活力活性戦略」がくくられるのはどういう意味だろう。よっぽど持て余し?特区、環境未来都市、良質住宅ストック、コンパクト都市など、新味のない施策の羅列にしかならないのは、いかにも知恵のない話である。

 

*自民・公明の強靭国土(10年間で20兆円の公共投資)に対抗心がありあり。大都市再生と災害に強い国土・地域の構築を最後に滑り込ます。

なお、道州制・地方出先機関改革は、触れず(地方分権・地域主権国家は単語だけ:官公労大反対)

 

6.おわりに

 

消費税増税で苦境を乗り切ろうとするより、国旗国歌の尊重一つでもいいから誠実な道義国家の復活を呼びかける政治であってほしいし、道義国家をみずからの民族の問題としてとらえる国民であってほしい。

以上

7.国土形成計画Uと国土情勢(平成28年9月10日) 

「対流促進型国土」をめぐる国土情勢の動きについて

(試論)

平成28910

天本俊正

 NPOジオストラテジー研究機構会員

1.はじめに

 

 平成278月の国土形成計画U(全国計画)、同283月の広域地方計画の策定を経て、国土計画の分野は、今、その実行、フォローアップの段階に入っている。此の間、関連する分野の政策は、内閣を中心に「まち・ひと・しごと創生」「1億総活躍プラン」「日本再興戦略2016」などが目白押しに動いている形であり、平成29年度予算編成(骨太方針、概算要求)、東京2020オリンピックの準備などが進んでいる。

 国土形成計画Uにいう「対流促進型国土」は、現実に効果を発揮する方向に動こうとしているのか、日本を正しく導いていけるのか、論評を試みたい。

 

1 国土つくり、地域つくり

 

2.「まち・ひと・しごと地方創生」政策の推進と失速

 

2−1.「まち・ひと・しごと創生」の政策の体系と事業展開

 

 少子高齢化の歯止めと地方振興のために平成26年12月に「長期ビジョン」と「総合戦略」を策定し、地方において地方版総合戦略を府県・市町村に作成させた。「ビジョン」は、2060年(平成72年)に1億人人口の確保、「総合戦略」は、平成27−31(2019)の政策目標・施策;@地方の雇用創出A地方への人の移動B出産・子育ての希望C地域連携、を内容とする。平成28年から事業展開に入ったが、そのための国からの交付金は、補正予算、年度予算で1000億円−1500億円程度しか全国の地方に配布できず、地方からの顰蹙をかっている。

 

2−2.「まち・ひと・しごと創生」の考え方と実効

 

 地方において「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環とそれを支える「まち」の活力という触れ込みであるが、上滑りだ。政策パッケージを精一杯担ぎ上げ、KPI(業績評価指標)を根拠薄くても示す。例えば若者の就業率を78%にあげる。言うだけで実現するなんて考えられないが、・・・・。地方は、多くない交付金に惹かれて地方版を作ったようだが、実効は、はなはだ怪しい。行き過ぎていた「地方分権」に冷や水を浴びせた効果はあったろう。

 

2−3.「まち・ひと・しごと創生」と国土形成計画U

 

 観光地域づくり(日本版DMO)を中国爆買いツアーにあわせて「地方と世界をつなぐローカル・アベノミックス」としている。IOT(もののインターネット)の活用などあげている。文化庁の京都移転は、成果。コンパクト・プラス・ネットワークの推進は、国土形成計画Uと整合している。しかし、結局、国土形成計画Uがねらう東京一極集中是正(地方創生)は、このプランには、頼れない。

 

3.国土強靭化計画

 

 国土強靭化基本法(平成25年12月)により「国土強靭化基本計画」(平成26年6月)が策定され、「国土強靭化アクションプラン2014」が公表された。東日本大震災を受けての施策であるが、南海トラフ地震、首都直下地震、火山噴火等の大規模自然災害等に備えて国、地方のインフラも含め広範な対応、さらには地域、企業における防災、事業継承まで、「強靭化」を図るものである。計画は、5年ごとに見直される。都道府県、市町村もそれぞれ「国土強靭化計画」を策定することになっている。

 平成29年度概算要求は、4兆4600億円(内閣官房・国土強靭化推進室まとめ)である。

 

 国土形成計画では「震災、水害、風害その他の災害の防除及び軽減に関する事項」(第3号)として計画事項に上がっている。今度の計画Uでも「災害に対し粘り強くしなやかな国土の構築」(第1部3章2節)などの計画記述があるが、国土の骨格づくりとの関連に力点を置いての対策と考えるべきなのであろう。対して「国土強靭化計画」は、公共事業縮減の傾向に対抗するためのキャンペーン的要素が強いとみるべきだろう。折しも熊本地震なども起こり、国民の関心を引き寄せているが、実際に公費ベースの財政は、現状維持が精いっぱい。企業、地域の関心を呼ぶところにメリットがありそう。

 

4.社会資本整備重点計画、交通政策計画、住生活基本計画などはどう動くか

 

4−1 社会資本整備重点計画

 

 従来の道路、治水などの施設別5か年計画は、行政改革の一環として見直され、平成15年に社会資本整備重点計画法として統合された。国交省、農水省、警察庁の所管の13施設を通じて全国計画、総論計画が策定された。第4次計画(平成27−32年)が平成28年3月に策定され、国土形成計画の広域地方計画に合わせて地方版の社会資本整備重点計画も策定された。

 従前のように5か年間の個所付けと事業費が積み重なれるわけではないが、整備の重点目標と事業概要がしめされ、広域地方計画と合わせてみると公共事業の見通しがわかりやすくなっている。この社会資本整備重点計画は、法の趣旨としても国土形成計画と整合を取ることとなっている。インフラの老朽化、脆弱国土の克服などが目標に上がっている。

 

4−2 交通政策基本計画

 

 交通政策基本法(平成25年)に基づき交通政策基本計画(平成26−32)が、平成27年2月に策定されている。地方に下りては、地域公共交通網形成計画が平成32年までに100件、具体に策定されるなどが目標に掲げられている。

 

4−3 住生活基本計画

 

従前の住宅建設計画法および5か年計画に変わり、住生活基本法(平成18年)により住生活基本計画(全国計画)が策定される。現計画は、平成28年3月に平成28年―37年の計画期間で策定されている。既存住宅の流通、空き家の利活用、住生活産業の活性化などが計画内容となっている。計画内容のソフト化は、国土計画のソフト化へ通ずるものがあろう。

 

 

2 総合政策、経済政策など

 

5.1億総活躍プラン;アベノミックス第2弾

 

5−1 1億総活躍プランの策定までの経緯

 

 安部2次内閣は、平成24年12月に発足とともにアベノミックス3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間刺激の成長戦略)を打ち出し、特に日銀の新政策により一定の成果をあげたといえよう。平成28年6月に一億総活躍プランを閣議決定した。これは、平成27年秋の第2弾のアベノミックス・新しい3つの矢(GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職0)を受けて、働き方改革などを加え、地方創生も取り込むなどして安倍政権の総合政策として打ち出したものである。

 

5−2 1億総活躍の内容と効果

 

平成28年度予算で「一億総活躍」の内容を見ると、@「GDP600兆円」については、地域総合戦略の新型交付金1000億円、観光産業の振興416億円、臨時福祉給付金450億円、A「出生率1.8」では、児童扶養手当(2人目5000を1万円)1746億円、地域婚活5億円、B「介護離職」では、サービス付き高齢者住宅320億円などといった具合である。福祉赤字国債予算30兆円に比べいかにちまちました、ばらまき予算であるかがわかる。

 

5−3 一億総活躍の効果をどう考えるか

 

 「女性も男性も、お年寄りも若者も、失敗した人も障害、難病の人も、家庭、職場、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる総参加型の一億総活躍社会を実現」あきれたプロパガンダというしかないだろう。昭和前期の「億兆一心、八紘一宇」の方が、まだましだ。

中央政府の「国民への訴え」が甘いプロパガンダでしかないということは、国家としての目標、「くにがら」を見失っているからである。

 

6.日本再興戦略2016

 

 安部2次内閣の発足とともに成長戦略として、産業競争力の強化を図る「戦略」をさだめた。第4次産業革命(ビックデータの活用など)、生産性革命、「稼ぐ」力の強化、農協などの岩盤規制改革などがあげられている。

 

7.平成29年度予算編成に向けてのうごき

 

7−1.我が国の経済の状況と見通しと財政

 

 経済成長は、低成長しか見込めないし、財政の好転は、計画できていない。

 

7−2.見いだせないプロジェクト:例えばリニア新幹線の大阪延伸しかないか?

 

 大規模な公共事業のプロジェクトを見いだせないでいる。東京オリンピック2020が、わずかにカンフル剤で、他は見渡せない。「人口減少社会」を是認し、赤字国債垂れ流しの福祉膨張に手がつかない限り、国民の意気は、このままでは上がらない。まず国としてのポテンシャルをあげる国家戦略を、本来ならば国土計画に期すべきだし。そのための予算、人材配分をなすべきであろう。

 

3.国土形成計画Uの見直し

 

8.国土形成計画の進行と見直し

 

国土形成計画Uは、全国計画、広域地方計画が、実行段階に入っている。対流促進型国土のイメージを具体化して、国土国民一体の奮起につながって行くことが望まれる。しかし、この10年は、「日本の命運を決する10年」と大上段に振りかぶった割には、計画は力を持ち得ていないことがわかる。計画は始まったばかりだが、根本的に見直しを図るべきだというのが、正鵠というものであろう。広義の国土ビジョンの国民共有が必要なのだ。

 

8−1.人口政策

 

 人口政策は、あきらかに国土計画の分野に入っている。ソフトの国土計画として国民運動的な動きを奨励することが必要である。「一億総活躍」でいう「希望出生率1.8」の「希望」は子を産まない安楽を求める「希望」であって、人類にとって悪徳に基づくことを「日本民族」は世界にアピールすべきである。天皇人間宣言(昭和21.1)にいう。「家と国を愛する心は日本民族において、熱烈なものあり、人類愛の完成に向かって献身努力し、人類の福祉と向上に絶大なる貢献をすべし」(人口増殖は、家と民族を基礎とする世界観によるとは日本の人口政策の明言するところ=昭和16)

 

8−2.福祉政策

 

 赤字国債による身に過ぎた福祉過剰は、国民精神を腐敗させている。日本民族は「団結し、あいよりあい助け寛容相許す気風を作興し、自ら奮い、自ら励まし大業を恢弘せよ」

;天皇人間宣言(昭和21.1)。福祉を削り耐乏生活を耐え、「貧乏人の子沢山」の道を進むべきである。国土計画は、このことを「くにがら」として、明示していくべきである。

 

8−3.国際関係

 

 文化と経済との水準を確保できる先進国の地位を、「貧乏人の子沢山」で維持していけることができるならば、わが日本民族は、「人類の福祉と向上に絶大なる貢献をなす」所以たる民族性を持っていることを世界に示すことができる。

 

9.おわりに

 

 国土形成計画Uのフォロ-アップが、日本民族再生につながる根本見直しにつながることを願う。(例えば、コンパクトシティは、人口減の対応でなく、街の効率化、ひいては、街中での出産、育児、教育、介護、みとりまでの生活完結型にし、それで全国的な人口増に備える、などはどうだろう。)                        以上

 

国土計画のソフト化を考える

平成29年ー平成30年

国土計画のソフト化を考える

平成29520

ジオストラテジー研究機構会員

天本俊正

構成

 

 1)はじめに 2)「心の国土計画」石川栄耀の提唱、「日本地政学」(小牧実繁)に学ぶ 3)戦後我が国の国土計画の形と目的・趣旨 4)「新たな公」国土形成計画T、「地域つくりの担い手」同Uをみる 5)「国民精神」作興詔書に学ぶ

 

1 はじめに

 

 昭和36年の一全総に始まる我が国の戦後国土計画は、要約するところ「都市・土木施設計画」であったといえよう。戦後経済復興などの成功に一応の成果を与えてきた。今、世界は大きく変わろうとしている。国民精神から生活態様まで日本も変わらなければならない。施設計画だけ追っかけていては、国土計画は実効ない。国土計画の正しいソフト化を考えてみよう。

 

2.戦前(大東亜戦争)国策の扱い (注=@Aは平成256月研究会報告を再掲)

 

@都市計画家である石川栄耀は、「国土計画―生活圏の設計」(昭和17、河出書房)の最後でこう言っている。現在進行中の「物の国土計画」を第一期とすれば「心の国土計画」こそ第二期なり。生産拡充を重点とするのみでは、「民族」そのものを失い国土はなりたたない。厚生、社会、教化などの精神部門の前進を待たなければならない、と。

 石川は、具体的な方策としては、地方行政の組織に根本的な吟味を加えるべきとしている。21世紀を迎えている平成日本ではどう捉えたらよいのだろう?

 

A小牧実繁の「日本地政学」を見てみよう(柴田陽一の論文による)。「米英を首魁とする金融資本主義国家による世界旧秩序を破壊して、新秩序を齎す建設計画の科学的武器たらんとする地政学」を日本地政学に求めた。日本地政学は、世界の各地域の住民や文化を尊重して世界共存をはかる多文化主義的思想である。「万邦をして各々その所を得さしめ兆民をして悉く安堵せしむ神ながらの道」と小牧は言う。

 

B竹内啓一(一橋大・地理)は、本研究会(平成12628日)で日本の地政学は、「神がかり」過ぎたところはあったが、その主張するところは、おかしくなかった、とのべた。

 日本史をたどれば江戸時代の「鎖国」も立派な国土計画に基づく基本国策で、成功事例ということができよう。

 

3.下河辺・国土計画の目指したもの

(戦後国土計画への証言:日経評論社による)

@国土庁創設時期の考え方

 年度の予算は大蔵省主計局が行うのに対して、国土庁調整局は、大規模事業の承認を大蔵支配下でやろうとしたが、消えた。昭和54年に国土庁プロパーの採用を始めたので、30年後に巻き返すのを期待したという。

 

A3全総の時は、新全総の時とかえて、土木・建築・都市工学の専門家を外して文化人・芸術家を集めて、国土に文化性を作ろう、と企画した。

 

4.国土形成計画T・Uにおけるソフト的計画事項について

 

@国土形成計画Tにおいては、戦略的目標に国際交流・地域・国土に関することと並んで「新たな公」というソフトの手法を提示した。個人、NPO、企業等の民間主体が、公共的価値を含む私の領域、公と私の中間領域に活動を広げて地域づくりに取り組むことを挙げている。

「新たな公」を基軸とする地域づくりシステムの構築を国土計画の内容として推進するとしている。同計画Uでは、その取り組みが拡大,多様化し、共助社会づくりが進展した、と評価している。

 

Aその前身的な役割としての「国民生活時間の分析」がある。3全総から4全総にかけて国民生活時間の分析が、計画策定の柱として取り上げられた。

その結果は、文化的ソフト的産業の振興や都市産業の育成・発展などの政策的主張につながっていることが、今更ながらに注目される。

 

6.国土計画のソフト化の最大課題;人口政策の提唱と政策化について     (吉田忠雄ほか編「世界と日本の人口政策」を読む)

 

6−1 人口抑制のための人口政策

@人口政策は、人類の人口増加への恐怖心から、ながく繁殖を抑える方向にコントロールされてきたことが、歴史的にみられる。社会の近代化のために人口抑制が必要としている。西欧の世界制覇は、人口抑制の力を成長のエネルギーに変えてきたことによるのである、という考えである。アジアほかが西欧に追いつくには、人口抑制の人口政策が必要というのが人口学者、人口政策の考えになってきた。

 

A例えば、韓国は19611971に人口増加率を年率2%に下げることを目標にした。このためIUD(子宮内挿入器具)、経口避妊薬の普及など、政府が先頭に立って出生率引き下げの運動を展開した。人口の静止が契機となって韓国経済は高成長の軌道に乗った、と人口学者は見る。台湾もIUD推進国だった。

 

6−2人口政策の転換

 

@いまやPOWOPOSTWEST WORLD  ORDER欧米主導の世界の後の秩序)の時を迎えようとしているのに、人口問題の学界は、国連等機関も含め、依然として人類繁殖抑制の思想にとらわれている。ローマクラブの思想の悪影響が、国際社会に広まっていることによるのだ。

 

Aこのような人口抑制論の底流にあるのはマルサスの人口論である。マルサスの理論は、1)人口は生存資料によって制限される。?)人口は、生存資料の増えるところでは増加し、減るところでは減少する。3)人口増加と生存資料と同一水準に保たせるのは、道徳と困窮に帰着する、としている。しかしながら、マルサスの理論は、破綻している。食糧の増産は、科学・技術の進展により人口増加を上回り、健康医療の進歩は、人口増加を可能にしている。

 

B人口増と食糧生産について;食糧は、世界的には人口を上回って増えてきた。空気中の窒素から化学肥料を作る技術が20世紀初頭に開発され、1ヘクタール1トンの穀物単収は、610トン程度まで上がった。アフリカなどの途上国で先進国なみの化学肥料が、使われるようになれば地球は2倍の人口も扶養できると、川島博之(東大)はいう。農産物は、余って仕方ない状態になっていて、ガットやWTOの交渉の主役になったのである。(日経;やさしい経済学=平成28102日付けほか)

 

6−3 人口政策の展望

 

@科学の発展、とくに素粒子物理学、分子生物学の発展などにより、人類は生物としての種属の新発展の段階に入っている。20世紀に入っての人類人口の急増は、人類がこれまでの数万年以上に及ぶ人類史と異なる新段階に入っていることを、今、平成および平成後の日本の国土計画は、自覚することが望まれているのである。注;地質学者が、アントロポセン(人新世)を言い出したのも符合する。

 

A人口政策の「舞台」を国土計画に移すことが勧められる。我が国の厚生労働省・社会保障・人口問題研究所の寄って立つ根本思想、人脈を流れる思想が、人口増を嫌悪する伝統的な流れから離れることは、容易でないと小生・天本は推測するからである。

 

B聖書のマタイ伝に言う如く、人類は、地球上のすべての動植物を引き連れて、宇宙に飛び出す時代に来ている。「宇宙大航海時代」の人類史を幕開くにふさわしい、国土計画草案が期待されている。

 

7.おわりに

 

 我が国の国土計画が、施設計画の延長線上にしかないハード計画である時代は、戦後70年ではとっくに終わっているはず。戦後40年の昭和60年(1985)には、本来あらたな人口政策も含むソフト計画に衣替えしていれば、国土計画は日本の衰退を防ぐエース足りえたであろう。占領憲法からの脱却も民法改正に基づく「家を愛する心と国を愛する心で熱烈なるをみる」国民伝統の復活も間に合っていたであろう。今、「失われた20年、30年」と言われるに至っている。

 

 遅まきながら国土形成計画の改定と強力なる実行を期待する。ただ、その前にソフト国土計画とは、いかなる形か、内容か、今少し推考すべきである。

 

以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国土計画のソフト化を考える(その2)

平成2978

ジオストラテジー研究機構会員

天本俊正

構成

 1)はじめに 2)本当にソフト化国土計画でいいのか?大規模インフ国際インフラの提言=パラグ・カンナ「接続性の地政学」に学ぶ 3)あまりに委縮する文明論=ローマクラブ「成長の限界」を再び読む 4)国土計画における国民運動は可能か=朝鮮総督府・韓国のセマウル運動に学ぶ 5)おわりに

 

1 はじめに

 

(前回の論理) 昭和36年の一全総に始まる我が国の戦後国土計画は、要約するところ「都市・土木施設計画」であったといえよう。戦後経済復興などの成功に一応の成果を与えてきた。今、世界は大きく変わろうとしている。国民精神から生活態様まで日本も変わらなければならない。施設計画だけ追っかけていては、国土計画は実効ない。国土計画の正しいソフト化を考えてみよう。

 

 ハードとソフトは並立しなければ国土計画はなりたたない。特に、国際大規模インフラは、決定的に国土計画の立ち位置を決める。

2.大規模国際インフラの提言=パラグ・カンナ「接続性の地政学」に学ぶ

 視点=国土計画のソフト化は、インフラの整備をおろそかにしてよいことを意味するか。そうではない。パラグ・カンナの「接続性の地政学」(原書房)は、インフラ、特に国際的大規模インフラが、世界の各国各地のつながりを強固なものにし、世界的に経済・文化・社会の発展を促すことを指摘している。

 

2−1 接続性の地政学

 

「インフラストラクチャ―は、グローバルな交流を求める人間にとって、新たな強大強力な物理的可能性をもたらす。都市群は、国家間の関係を超えてつながりを持つ」(同書;上p.32)

「世界的都市に必要なものは、土地(地域)ではなくて、接続性(=サプライチェーン)」というのが、パラグ・カンナの主張である。

 

筆者天本の立てる仮説がある。カンナの説、それは、世界交易の拡大とともに正しい見方であろうが、一方、人類の増殖・維持は、文化・統治、家族形成、環境保全など広範な課題に一定の解決を確保しつつなされるものであろう。国民国家の形成、民族の維持・増殖もまた、成長とともに必要である。両者のバランス、調整された形こそ、地政学が、国土計画に寄与するときに失ってはならない観点である。

 

2−2 中国とアラブ文明:非西欧文明の行方

 

 パラグ・カンナの中国評価は高い。「中国に流れ込む資本より流れ出す資本の方が今や多い。世界最大の投資国になりつつある」

「中国は、一つが1億を超えるメガシティが20を超える数も存在する形で再編されつつある」

 なにが中国の超高度成長を可能にしてきたのか?

 

アラブについても同様の視点を持つ。ドバイ(アラブ首長国連邦の大都市)は、サプライチェーン世界の首都とまで言う。「アラブ地域の政治的地理は漂流しているが、アラブ文明は新たな機能的つながりを促進する文化的な共通点、富を持っている」(p.164

 例えば、バスラ(イラク東端)−アカバ(ヨルダン南端)にいたるエネルギー軸など。

 

2−3 移民について

 

「移民は、垂直権力から水平権力に移行しつつある世界の、そして領土を共有せずとも精神を共有するコミュニティの先駆者である」(上p.97)「政治的な世界から機能的な世界へ=多元的システムの世界」

 

 生産関係ではそうかもしれないが、生活関係(瀬地山角のいう主として女性が担う再生産労働;種族の維持)では、一定程度の民族主義、国民国家体制が、少なくとも数世紀の単位、もしくは半永久的に続くだろう。

 

 

3.委縮する文明論=ローマクラブ「成長の限界」を再び読む 

 

*ローマクラブの考え方

 

「成長に自主的な限界を設定し、自然の限界内で生きようとするのがいいか、技術の飛躍に望みをもって成長を続けるがいいか。人類社会は、一貫して後者の道をとって成功してきたが、前者の道を選択することを忘れた」(p135)

 

「成長の計画的抑制と安定化された世界モデル」を推奨している。安定に達する世界の人口は、現在よりわずかに多いだけである、としている。

 

 ローマクラブ(I971年に国際会議に提出)は、科学と技術の発展を悲観的に見ていたというべきであろう。

 

*ローマクラブは、民族間の公平不公平にも関心を寄せているが、筆者・天本の観点は異なる。もちろん、これからの将来世界も、宇宙開発などを踏まえるとしても、民族間の切磋琢磨の競争の時代を人類はさけることはできまい。そこで、懸命に努力し働き学ぶ民族と、遊びほうけ勝手放題の民族が、広がり深まった膨張する人類社会(究極は200兆人?)のなかで、同じ待遇を受けるのは、逆に不公平・不公正であろう。格差是正にとりつかれている観のローマクラブは賛成できない。

 

*人類の生物としての事実上無限の増殖を前提として、将来とも経済を動かしていくには、社会として戦略的制度が、考え出されなければならない。特に、金融、信用創造の仕組みは、すでに現代から検討されなければならないし、将来人類社会に向けて、必ず必要な潤滑油的存在が、「通貨」である。

 

*ローマクラブの主張は、筆者・天本にいわせれば、衰退する西欧文明の「遺言」であろう。*1

 

4.国土計画のソフト化

 

41.韓国セマウル運動に国民運動を学ぶ

 

 セマウル運動(新しい村)は、朝鮮総督府が進めた農村振興運動をモデルに朴正熙大統領が提唱した(昭和45=1970)。すべての住民を自発的に参加させ、精神革命を起こした。「勤勉」「自助」「協同」を基本に農村の近代化を図った。「セマウル運動歌」(大統領作詞作曲)、特急「セマウル号」とか、金融機関「セマウル金庫」さらには、功績者には「セマウル勲章」を授与した。

 

 平成日本・平成後日本に今喫緊に必要な国民運動は、結婚奨励・早婚化、出産奨励である。韓国のセマウル運動のように国民全体が熱意を込めて参加する運動に中央・地方政府を挙げて盛り上げるべきである。*

 

42.国土計画のソフト化

 

@人口政策

 

 我が国の国土計画のソフト化の第一は、人口政策を国土政策の一部として展開することである。反動的人口政策を現在のわが国では見ることができる。1)男女共同参画法 2)フェミニズム、3)憲法24条、我妻民法、これらを早く破棄すべきである。

Aしかし、人口政策の失策がもたらすかもしれない過酷な様相を見逃してはいけない。もしも科学・技術・文化・道徳の発展が、人口増に追いつかない、分布・対流がまずいときは、民族間の非情な排除・競合もありうるからである。民族間競争に打ち勝つ民族でないと生き残れない。

 

B国土計画のソフト化の政策の例示

1)大家族居住、多地域居住などを飲み込んだ住宅政策の展開(=一世帯一住宅ではない)が望まれる。国土計画の中心的な課題にこのような新住宅政策を柱建てすれば、国土計画のソフト化は一気にすすむ。

2)オーソドックスには、ソフト化国土は、市場の拡大、雇用機会の増大をとりあげるべき。行政なり国土計画の本来的責務だ。狭い自治自立の地域政策ではだめだ。地方、全国、世界、宇宙まで、ある意味、単一市場になってくる。

(パラグ・カンナの「接続性の地政学」は、この間の論理を言い当てている。)

5.おわりに

 

戦後国土計画が、都市・施設計画であったことを、ソフト化で乗り越えない限り、国土計画の存在意義はない。人口政策、国民精神などにまず言及すべきであるが、しかし、パラグ・カンナの「接続性の地政学」がいうようにインフラの整備が、政治的な制約を超えて国民、民族の福祉の向上につながる面があることを、今更に世界経済の観点から強調さるべきことも、また見逃せない視点である。

 

(以上)

 

=======図示;ソフト化国土計画の課題===========  平成29.7.8 天本俊正

 

     ソフト化国土計画

 

世界視点から日本の国土・民族を考える 

 

1世紀超の民族意思;人口政策に取り組む

 

 

生きる意欲を持つ人類増殖:民族繁栄

 

非西欧文明の勃興

2122世紀の文明

 

宗教心も取り戻したプラス思考のソフト

 

民族精神の各民族間での尊重;切磋琢磨

 

出産増;宇宙進出、科学・技術の振興

 

 

勤勉、道義国家、自立自存

 

 

大規模プロジェクト;国際プロジェクトの

奨励、企画、実現、富の生産と管理通貨のコントロール

 

発展するハード、柔軟、豊かなソフト

 

 

 

 

 

 

 

     戦後日本の国土計画

 

日本国土に閉じこもったフレーム展望

 

10年単位の委縮した国土展望と人口減少容認

 

現段階の文明に満足する傲慢さ;人類衰退

 

西欧文明の陰り

1920世紀の文明

 

甘ったれ傲慢精神にとりつかれた文明

 

人種差別と行き過ぎた個人主義の蔓延

 

出産減;守りの姿勢の生活、行き過ぎた環境保全、社会におもねり偏った人権思想

 

怠慢、行き過ぎ自由、(自立を奪う社会主義思想)

 

プロジェクトへの不信・嫌悪

分権主義、気に入らねば強権主義

 

 

委縮するハード、人間不信のソフト

補注

 

*1 ローマクラブは、1970年にスイス法人として設立された民間組織。経済成長、資源、環境への地球的危機感によって設立された。人口、工業生産、食糧、汚染、資源などにより世界モデルの標準計算を行い、幾何級数的成長の限界を指摘した。

 

*2 昭和161月の「人口政策確立要綱」は、人口増の具体の諸政策の提示に先立って、次の国民精神の確立を掲げ、これを基準として政策を計画するとしている。@永久に発展する民族の自覚A「個人を基礎とする世界観」の排除と「家と民族を基礎とする世界観」の確立B東亜共栄圏の指導者としての教示と責務C国是の達成のための内地人人口の量的質的発展が基本との認識。

このことは、世界的に人口学者が、個別の人口政策の可否についてしか論じない欠陥を補って余るものがある。このような国民精神的盛り上がりの中でしか人口増の政策は効果を表さない。社会主義でないので国民に強制ができないからである。このようなシステムの例としてセマウル運動がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国としての地域づくり政策の取り組みの現状と課題

= 国土計画のソフト化を考える(その3)=

平成2999

ジオストラテジー研究機構会員

天本俊正

構成

 1)はじめに 2)国土形成計画U「稼げる国土;知的拠点プラットフォーム」 3)内閣府「まちひとしごと創生」 4)国土計画における地域づくりの変遷と成果 5)ソフト化国土の地域づくり 6)おわりに

 

1 はじめに

 

(前回まで述べた論理) 昭和36年の一全総に始まる我が国の戦後国土計画は、要約するところ「都市・土木施設計画」であったといえよう。戦後経済復興などの成功に一応の成果を与えてきた。今、世界は大きく変わろうとしている。国民精神から生活態様まで日本も変わらなければならない。施設計画だけ追っかけていては、国土計画は実効ない。国土計画の正しいソフト化を考えてみよう。

 

 国土計画の基礎的部分には、生活圏計画がある。高度成長の後の現国土では、「まちひとしごと」や「地産地消」的な地域づくりが取り上げられているが、真の国土形成の力になり得ているか、疑問である。 

2.国土形成計画U「稼げる国土;知的拠点プラットフォーム」

2−1;経過

 平成278月の国土形成計画Uの策定以来、2年余が過ぎている。計画の実施が、課題となっている。同283月の広域地方計画に続き国土交通省では、国土審議会部会に「稼げる国土専門委員会」を設置してローカル版「知的交流拠点」つくりマニュアルを平成293月に取りまとめた。

 

2−2;先行事例

 マニュアルで取り上げられた先行事例は、@農産品等A観光資源Bものづくり集積・産地C最先端研究・技術のそれぞれ活用である。限界集落、エコツアー、伝統漆器、デニム産地、バイオなど多様な成功事例が分析される。

 

2−3;知的対流拠点

 地域発イノベーションの創出には、地域資源、自治体ほか多様な取り組み主体が連携、アイデアを出し合い活動に繋げる「場」が必要である。

 知的対流拠点づくりには@活動主体AコーディネーターB活動空間C活動を支える交通ネットワークが必要であるとしている。

 

3.内閣府「まちひとしごと創生」 

3−1 概観

 

 内閣府の地方創生は、平成26年度に法制定、平成32年度(2020)を目標とする総合戦略に基づく諸政策を実行するもの。29年度は中間年。地方創生の新展開として大学の立地規制、文化庁の京都移転、交付金事業の推進、地域資源を活用の「仕事つくり」などを行っている。

 

3−2 平成29年度のポイント

 

 ローカル・アベノミックスの推進、東京一極集中の是正(在京大学定員の抑制など)、地方の「平均所得の向上」、地方創生版・3本の矢(意欲ある自治体へ支援)などが挙げられている。空き店舗、遊休農地、古民家等遊休資産の活用なども取り上げている。

 

3−3 政策の効果

 

 平成28年度で地方創生交付金1000億円、拠点整備交付金900億円などが手当てされている(29年度ほぼ同じ)。総合戦略の目標には、地方若者雇用30万人、2060年(平成48)に人口1億人程度確保など挙げている。

 「しごと」と「ひと」の好循環、支える「まち」の活性化を目指しているが、この政策による効果は、出ているとは言えない。

 

4.国土計画における地域づくりの変遷

 

4−1 生活圏計画

 

 国土計画の根本に立ち返ると、その内容は、人口の配分、産業配置、文化の確立、国防等になる(石川栄耀による)。国民の生活態様に即して地域に下ろせば、日常生活圏・週末生活圏・月末生活圏・季末生活圏に区分される。それらが積層的に積み上げられて地方圏計画さらに国土計画となる。

 人々の居住が生涯を通じてほぼ地域に限定され、産業も農業を中心に自給的であれば、このような整備対象の地域積み上げがなりたつ。

 我が国では、昭和4050年代の国土計画・地方計画では、建設省の主導する「地方生活圏」、自治省の主導する「広域市町村圏」が社会資本整備の公的計画として機能した(全総としては広域生活圏、定住圏)。そこでは生産・生活の両面から各種施設の調和の取れた整備計画が、全国末端まで準備された(筆者の記憶では15年間100兆円の計画)。

 内容的にはモータリゼーション、都市化の進展、さらには環境対策などがもりこまれ、国民の社会資本便益の享受のレベルアップに貢献してきた。

 

4−2 新産・工特、テクノポリス、などの産業都市構想

 

 昭和40年代は、全国工業化と新全総に乗って新産・工特の都市構想が、高度成長を押し上げた。安定成長期に入り頭脳集積都市(アルカディア)、さらには中心市街地整備計画などが地方都市整備の方策として出てきたが、工業の海外流出などの逆流を乗り切ることはできなかった。

 

4−3 CCRC(高齢者居住都市)ほか、平成・平成後日本の地域づくり

 

 今、まちひとしごと構想で新たに都市構想としてCCRC(continuing care retirement community)が、地方都市対策として内閣府から市町村に呼びかけが行われている。時宜にあっている。

 

 また脱少子化のコミュニティづくりには、合計特殊出生率が3.0を超えている隣国・フィリピンの地域づくり・人づくりに学ぶといった姿勢が国の指導として必要である。フィリピン人は徹底的にやさしい国民性を持っている。ただ、今のところ、この構想が政府にあるわけではない。

 

 筆者が、4全総計画官時代に「個性派まちづくり」を打ち出そうとしたが時期尚早と却下された。今、平成30年代を迎えようとして、地域資源、地元人材、自治体が先導する「まちひと」「知的拠点」はある意味、「個性派まちづくり」で、全国的に花咲く状況になれば、国土計画としての意義も大きい。

 

 

5.国土計画での地域づくりの位置づけ(個人的考察)

 

*ローカル知的拠点にしろ「まちひと創造」にしろ、その持つ面的広がり、人的つながり、商圏・資材調達などはどうしても狭く部分的なものになりがちである。地元人材の熱意が決め手であることはわかるが、やはり情報産業時代には、その「広がり」「深さ」「速さ」は、グローバルに競争できるものでなければならない。

(筆者の経験=4全総の提唱の一つとして「小さな世界都市」があった)

 

*その時々の国土計画の柱となる「地域づくり」は、やはり我が国の置かれている産業構造、地域構造、社会条件などを全国的な分析結果の上にのって政策的誘導等がなされるべきである。ただただ、才能、地域資源、世の評判などで、思い付き的に取りまとめられ、補助金・交付金で後押しするのは、根付かないし、失敗の可能性が高い。昨今の地域づくりは、国からの選挙票・人気目当ての政治的なリードが強すぎ上滑りである。地域振興にならないしGNP向上にもならない。(注;安倍政権は700もの戦略・政策を打ち出してきたが効果は疑問と新聞もたたく+日経:平成29・8・22)

 

6.おわりに

 

 今までのハードの施設計画に対し、「まちひと創生」はそのソフト版であるとは、内閣府まちひと審議官の一人から聞く説明だが当を得ていない。

 

今後の国土計画は、人口政策、過剰福祉の是正を含め日本の「新国是」に乗ったソフト・ハードの強力な中央政府の系統だった地域づくり計画が主流になることが望まれる。

今の国土計画の地域づくりは、行き過ぎた分権主義に乗って「地域資源を活かす仕事創出」を唱っているが、国民の覚醒に基づく出生増の民族主義再興を内容とする国土政策・人口政策が生み出す将来の人的資源を全国的コミュニティ繁栄につなげていくことを柱にすべきである。ある社会学者(宮台真介)いわく「過剰流動性」(グローバリズム、インターネットの結果など)は人の結びつきの「隔離化」を招いている。絆を取り戻す、道徳・人格教育、家庭・家族基盤の強化などが、人的資源増殖の生産手段である。

 

地球を支配するアントロポセン時代から宇宙進出への人類発展の要素を日本の国土計画が取り込んでいく必要もある。

(以上)

補論

 

1.ローカル・アベノミックスといわれる地域づくりは、GNPアップに貢献できるのか。ICTの普及は、国民生活を内容的には大きく変じた(例えば携帯、スマホの世界)、経済的にはむしろ貧困を招いていないか。世の若い男性が適齢期になっても妻帯できないのは、つまりは貧困化でないか。

 社会保障費増加の効果はGNPアップに貢献しているのか?

 

2.国土計画に基づく人口構造の変化、産業構造の変化、国際経済・文化上の変化など、計画は明瞭にしなければいけない。

 

3.婚活、見合い相談所、助産婦増員、配偶者控除の税優遇など具体の政策が掲げられてしかるべきだ。

 

4.人口政策の国民運動本部としての道州制は、社会保障のマイナスシーリング(各種政策の総合化、知恵の出しどころ)、大規模プロジェクトの調整などとともに新設の効果が期待される。過剰福祉国土の是正は、福祉正常化30兆円の節約になろう。

 

5.ソフト化国土計画は、財源措置付きの投資計画を根幹に据えることは、変わりない。大規模戦略インフラプロジェクトは、国際版(日韓トンネル、新大東亜共栄圏=一帯一路と共存)国内版(宇宙開発、原子力、ILC;正副2事業など)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国土計画での科学インフラの扱いについて

= 国土計画のソフト化を考える(その4)=

平成291125

ジオストラテジー研究機構会員

天本俊正

構成

 1)はじめに 2)国土形成計画Uにおける科学インフラ 3)原子力の利用開発について 4)宇宙開発と日本の国土 5)科学インフラの方向と国土開発 6)おわりに

 

1 はじめに

 

都市・土木・建築の施設計画の上に乗った国土計画は、それはそれなりに有意義であるが、21世紀から22世紀に向けて人類が大きな転換を図る時には、よりソフトな計画、スケールの大きな計画が必要である。人口政策の取り込み、ソフト施策の展開などを指摘してきた。国土はトンカチでは築けない、真心で磨き上げるものであろう。(その4)では、原子力、宇宙、情報など科学インフラともいうべき分野を取り上げる。

 

2.国土形成計画Uにおける科学インフラの取り上げ方

 

日本が世界をリードしていく一翼を担うためには国土形成計画Uにも科学インフラに関する計画が、萌芽にせよ、なければならない。

 

2−1 原子力=福島原発被災後の稼働停止が企業活動に悪影響を与えていることから安全優先の再稼働をいうが、可能な限り依存度を低減させるとしている。エネルギーインフラの充実、地域でのエネルギー確保で原子力を取り上げることはしていない。各論では、ベースロード電源として重要性を指摘している。

 

2−2 宇宙開発=計画の見通し期間(平成622050)を通じては人口減少社会を前提としているためか、人類の生存空間としての宇宙に触れていない。宇宙技術の活用は、高精度測位社会の実現として部分的に取り上げられている。宇宙太陽光発電システムも取り上げている。

 

2−3 科学インフラ=巨大加速器ILCなど素粒子物理はビック公共投資の最たるものだが、国土形成の要素として意識されていない。情報産業革命は、5

Gの整備など世界最高レベルの情報環境を取り上げているが、国土のありようへの計画は、本論で正面から取り上げているとは言い難い。

3.原子力

 

3−1 安全神話

 

@20世紀最大の科学的スキャンダルとして近藤宗平(放射線医学者;阪大)が糾弾する。国連科学委員会は、直線閾値なし仮説に基づき微量の放射線の厳重管理を勧告した(1958)。微量放射線は毒でない。原子力への恐怖症を植え付けた。*補論的に言えば、そのくせ医療のレントゲンの日常的使用、原潜・原子力空母などの軍事利用への警戒めいた指摘は、見られない。

A原子力の軍事的利用と平和的利用には画然たる一線がある。原爆には、ウランの濃縮率が78割必要である。原発の燃料となる濃縮率は数%オーダーある。例え原発に爆撃があり、大災害があっても原爆のような大爆発を起こすことはない、と筆者は信じている。

B原発の原料として今は、ウランが使われているが、本来、トリウムを使う方式もある。開発の効率性から軍事用も併用できるウランが普及し、軍事用に転換しにくいトリウムの原発開発が、遅れてしまった。日本でそのことを強く主張した故・古川和男氏の功績を讃えたい。

C広島・長崎への原爆投下は、大東亜戦争の終結を呼んだ。米国の原爆による「勝利」は、国際戦略のうえで「核兵器」の特別の意味合いを国際世論にもたらした。戦後世界平和は、核兵器の一部国家の占有による威嚇力によって齎されたところがある。無辜の民を被災させる兵器は、兵器として欠陥がある。諸国家の所有に一定の秩序が必要である。*補注;核兵器に限らず生物兵器など無差別虐殺兵器の使用抑止力は、世界的な政治的自由(民主主義)の成熟にある。

 

3−2原発の開発

 

@アインシュタインのE=mc2 は、21世紀人類の勝ち得た貴重な理論である。人類繁栄のため研究工夫を加えて使いこなすように努めるべき技術である。

A世界の動向:

原発の開発・撤退の両方に各国の動向は分かれている。撤退を主張しているドイツ、北欧諸国が目立つ。ドイツは、自国は反原発だが、隣国フランスから原発による発電電力を購入している。逆に原発に積極的はフランスである。アメリカ、イギリスは、両論の間で行き来している。アメリカはスリーマイル島事故で中止していた原発新設を再開した。原発建設にも最も熱心なのは中国である。中国は、近い将来、原発王国になるとされている。日本は、どういう立ち位置をとるのか、国土計画の中心課題である。

B国内原発立地の計画的促進

・福島原発被災の避けえなかった限界を見極め国内原発の一斉再稼働を行うべきである。福島原発は、1000年津波・大震災によく耐えた技術であることを立証した。原発規制委員会は、根本的に組織替えをすべきである(国際謀略的な構成になっていると筆者にはおもえる)。

・エネルギー長期計画を原発積極立地の線で改定すべき。大方針を国土計画で策定すべきである。現状の立地のように、僻地山地に隠れたように建設するのでなく、堂々と安全施設を開示しつつ、建設すべきである。海底建設も検討すべき。

B高速増殖炉・核融合など

・ウランは原子炉の中で反応してプルトニウムになり中性子を吸収して核分裂を起こす。残存プルトニウムを再使用するのが高速炉増殖炉「もんじゅ」の目的だが、難航、廃炉で出直し。高速実験炉「常陽」をふくめ核燃料サイクルの堅持をめざすべき。プルサーマル計画もある。

・核融合反応の国際計画も推進すべき(現在フランスで建設中)

・原発の廃炉、核廃棄物の処理技術も大いに推進すべき。

 

4.宇宙開発

 

4−1 宇宙開発と国土計画

 人口著増の人口政策の実現のためには、国民に無限に近い居住展望を与える人類宇宙進出ビジョンが国土計画に明示される必要がある。平成前期の「失われた20年」の前の日本には、積極的な宇宙進出プロジェクトが多かった。

 

4−2 月面基地と地球からの宇宙港

 昭和6263の頃のプロジェクトをスクラップ集(TA super scrap2000)より紹介する。@日の丸月面基地(宇宙開発事業団)A宇宙港構想(キリバス共和国)B宇宙へ意欲(波立つ建設業     )(補論;切り抜き記事参照)

 

 平成後期(ポスト平成)における日本の宇宙基地は、鹿児島/種子島・内之浦しかなく、関連ないし候補地区としても北海道・大樹町、宮城・角田、つくば程度しかなく、不十分である。

 

4−3 宇宙開発への積極的取組の課題

 宇宙進出は、国際関係での幅広い合意が必要であり、時間と周到な準備が必要である。「失われた20年」で日本は、宇宙船基地への一部協力を除いて新しい動きがない。遡って平成前期での日本の問題意識を振り返ってみよう。(前項に続いて)C日米欧加協定一本化D宇宙大国路線E宇宙島

 日本を含め欧米ロが、スローテンポで宇宙開発に取り組んでいるのに対し、急速に力を入れているのは中国である。インド・インドネシア・ブラジルなども動き出している。

 多々ますます弁ずが、これからの1020年の世界の動きとなることは喜ばしいことであるが、日本も少しでも優位性を確保していく必要がある。

 

4−4 宇宙開発のための財源確保

 原子力、後述のビッグサイエンスも含め宇宙開発に揺るがぬ開発財源を確保するためには、現在の過剰福祉の赤字国債たれながしの動きを止める必要がある。その上でここまで1000兆を超える赤字国債をむしろ積極的に生み出され積み上げられた信用創造として、これらの宇宙開発、原子力、ビッグサイエンスの開発整備のための財源へ転換する工夫を考えだすことが望ましい。その道筋は、国土計画が考え出すべきである。

 

5.科学インフラ

 

ビッグサイエンスには、バイオテクノロジー、情報産業革命(5G,IOT,光ファイバー網、など)などあるが、ここではILC(国際リニアコライダー)だけ取り上げよう。

 

5−1ILCの必要性

 

 素粒子物理は、アインシュタイン100年から超弦理論・M理論の新段階に進もうとしており、その推進役になる人材を多く生み出す民族が、2223世紀に向かって、世界の先導的な民族に自ずからなっていくであろう。

 

5−2ILCの国内候補地

 東北・北上と九州・背振が、地質(玄武岩の台地が望ましい)から上がっている。1か所8000億円という投資額を国際的に分担するとあり、各国は、尻込みがちである。日本は、1000兆を超える赤字国債累積を抱えており、その信用創造を振り向ける対策の一つとして、ILCの積極引き受けだけでなく、正・補助基地として2か所とも建設を引き受けるほどの大胆な政治的決定が望まれる。我が国の国土計画が、目覚ましい著増人口政策に成功すれば、1,2兆程度の投資を引き受けても世紀的に考えれば、十分、取り返せる限度に入っていよう。

 

6.おわりに 

 

国土形成計画Uは、「対流促進国土」を目指しているが、その内容が実際的に国民の相互絆の強度化につながり、それが出生率の飛躍的改善につながるならば、ここに挙げたような科学インフラ整備によるソフト化国土、も夢でない。  

 

 

補遺   昭和後期(「失われた20年」前)の宇宙開発のビジョンから

 

1.日の丸月面基地

・人工知能ロボットを使ってのみで月面基地を建設し、酸素・水素燃料の供給体制を作る。

・放射線防護のため土嚢(高さ2.5メートル)レンガ工場も作る。

・宇宙開発事業団は、現在、JAXA宇宙航空研究開発機構。

 

2.宇宙港(有人宇宙往還機の発着場);地球側に作る発進基地

・赤道直下のキリバス共和国は候補。

・高さ2000メートルのカタパルト発進台が中心施設

・日本のゼネコン各社の研究会による

3.波立つ建設業;有人宇宙活動へのゼネコン参加

 

4.日米欧加協定

・宇宙基地―多国間協定へ、法律適用問題(属地主義)

5.宇宙大国路線

・日本国政府の長期政策懇談会(昭和62);実に30年前から動かない

21世紀めざし15年で6兆円

6.宇宙島

GKオニール(プリンストン大)の発案;「200兆人の宇宙」にも。

・宇宙島=6キロ直径、30キロ長さの円筒人工・宇宙島に100万人居住。

(以上)

 

ソフト化国土計画の推進体制;山東良文・州制度論の周辺

国土計画のソフト化を考える(その5

 

平成30127

ジオストラテジー研究機構会員

天本俊正

構成

 1)はじめに 2) 国土形成計画T、Uにおける推進体制 3)道州制論の展開と挫折 4)新社会政策の推進と地方大都市圏制度の創設 5)新財政の柱を築く国土計画と道州の役割り 6)おわりに

 

1 はじめに

 

戦後、敗戦の結果、我が国は歴史的経緯と伝統とを離れた国家統治体制を取らざるを得なかった。自治体警察の実質的廃止、各省の地方機関の設置、国土開発における首都圏整備委員会や北海道開発庁などの設置などが国・地方の関係の是正策として取られてきた。昭和後期の経済成長期を乗り切ってきたが、平成に入り「失われた20年」に現れるように国土計画行政をみても適切の対処できたとは言いえない。「地方分権」と称する「改革」は、国土の衰退さえ萌しかねないマイナスの効果を生じさせている。

本論考の(その1)から(その4)まで見てきたように補注1、国土計画は人口政策をはじめとする新社会政策を取り入れなければ時代・世界の趨勢の対応できない状況にある。道州制の採用は、建て方によっては決定的な道を開きうる。府県維持の「州制度」を長年主張した故・山東良文氏の功績は今後生きよう。

 

2 国土形成計画T、Uにおける推進体制

 

国土形成計画T(平成207)では、国土基盤の戦略的な投資に主眼を置いて国と地方は共同で、ブロックの自立的発展を目指すとしている。広域地方計画は、地方の協議機関を通じて案を作成し、できた計画に盛られたプロジェクトは、国・地方あわせて推進を図るとした。シームレスアジアの形成もとりあげられた。「新たな公」を軸とする地域づくりシステムも提唱された。国の地方支分部局の統合による地方庁の提案もでた。補注2

(参考1;多様な広域ブロックが自立的に発展する国土=国交省資料)

 

 

その計画Tの成果が思わしくないうちに国土形成計画U(平成278)の策定につながっていく。「対流促進型国土」は、まちひとしごと創生や国土強靭化計画の狭間にあって、いわば必ずしも決定打を持たないまま登場した形になった。スーパーメガリージョンの形成(東名リニアほか)とコンパクト+ネットワーク都市構想とのタイアップはわかりにくい形のままで、現実になし崩しに動こうとしている。

 

中央政府の赤字国債の無責任な発行に乗って社会福祉関係の公共支出が、少子高齢化に無力の政策に便乗して増え、国民生活の不安定化と財政破綻を同時に引き起こしている。世界政治の転換の中で外交的には日本の独自主張が貢献をなしうる立場にある。国内の長期ビジョンとしての国土計画が、人口政策を含め、国民運動の盛り上がりと国民の気概の旺盛とを伴わない限り、外交的にも失速するかもしれない。

 

3 道州制論の展開と挫折

 

道州制論議は、昭和10年代の田中義一内閣の時の提案、戦後・昭和30年代の地方制度調査会第4次答申、府県合併法などの長い歴史的な変遷を経てきている。その主流は、府県に替わって広域の道州を設置するとする。現実に動こうとすると都道府県知事の強硬な反対などで、潰されてきた(昭和20年敗戦までの一時期、地方総監府の形はできた)。戦後民主政治の国・地方展開のなかでも道州制の必要性を考えれば、府県の残存を容認したうえでの道州設置が現実性がある。関東・東北のダム群の建設、琵琶湖の開発、北海道開発など、国土開発にブロック機関の果たしてきた役割は、組織は小さくても効果的であった。

 

国土形成計画Tがブロック自立を表に出したときに、当然、道州制の設置の機運が高まり、政府の検討も進んだ。内閣に「道州制ビジョン懇談会」も設けた。主として市町村サイドの反対意見が反映した形で、道州制の検討は影が薄くなった。ブロック開発調整機関が、公共事業の長期にわたる抑制基調のもと、その存在感を低めたこともある。

 

近年の国土構造、経済構造などに関連する事業群と財政の関係を見れば、公共事業が実質的に前年同額ベースでしか動かない状況では、道州制の必要性は減っている。民間活力もある。

しかし、国力からいえば、 会福祉 などとの総合調整が不十分なままバラマキ財政になっていることは、大きなマイナス要因である。人口政策により少子化を反転させ、人口増の日本列島を取り戻しつつ、国土つくりをやっていくためには、道州制による国の行政能力と総合調整力の強化が必要である。その設計図としての国土形成計画、広域地方計画の重視が早急に取り戻されなければならない。経済成長より社会政策の新展開が道州制論議に必要である。

厚生労働省の今のままの組織拡大など、強力な圧力団体などの存在を考えると許されない。

(参考2;国・地方の組織の再編=国土計画協会ワーキンググループ資料)

 

4 新社会政策の推進と地方大都市圏制度の創設

 

 国土計画の中に人口政策と社会福祉の地域経済・労働行政などとの総合調整を含めるべきということは、筆者としては別途、論じてきたところである。概観だけ言えば、世界と地域経済とのつながり、情報経済の高度化、文化や生活水準の一層の向上を前提にすれば、日本列島の中に巨大都市圏をそれぞれ組み込んでいくことの必要性はいうまでもない。当面21世紀の中頃を見て3000万から4000万の人口の巨大都市圏を創り。整備するためには、関東を除き近畿中部の再編の大都市圏、東北・北海道の新地方大都市圏、中四国・九州の新地方大都市圏を国の分割統治の超広域圏域として制度組織を早急に作るべきであろう。

 日本民族の増殖力を高めるための国民運動本部をそれらの巨大都市圏の行政組織の中に設置し、管内の最末端組織(町内会、企業組織、各種社会組織など)まできめの細かい指導を、都道府県、市区町村の自治体と協力しながら。構成していくことが必要である。小規模でも強力な国の指導機関があって初めて社会福祉予算のシーリング統制が可能になってくるであろう。

 

 現在の過剰社会福祉の我が国は、いまや「社会主義国」と言っても過言でないたるみを包蔵するに至っている。社会主義が20世紀世界政治の中で、失墜に終わっていることは、ソ連、東欧、アフリカ、キューバなどで実証済みである。中国の「社会主義の近代化」による統治は、その語義通りの現実政治・統治はあり得ない。

 

 我が国は、平成の時代に「地方分権」「政治改革(過剰ポリティカルコレクト政治公正)」「女性蔑視のフェミニズム」などの誤れる政治思想に国民が毒されて、ソ連、毛沢東中共、ポルポトに続くようなギリシャ化の道を突き進まんとしている。

(参考3;「地方分権」論者のイメージの「国―地方」関係=中川八洋)

 

5 新財政の柱を築く国土計画と道州の役割り

 

@国土計画協会の研究会で提案された制度をとりあげよう(伊東光晴氏による)。道州制は、国の形を変える変革であるからには、国の最大課題である財政危機を解決する手段も提供できる。国家の国富、債務・債権を地方ブロックに分割し同州政府に管理させ、日本銀行との交渉協議も行える地位を与える。道州制の確立とともに累積の赤字国債は道州連合体で地域間競争をしながら解消する。中央政府は、「安定成長協定」を、例えばアジア経済圏各国と結ぶことなどもできる。

 

A「日銀の総資産は、500兆円にのぼる。そのうち50兆円でも保有国債を無利子の永久国債に転換する。償還の必要がなくなるので、政府はこれを受け防災対策など10年間で100兆円のインフラ投資をする」これは昨年11月中原伸之氏(元/東燃社長)が提唱したものである(日経新聞)。道州制による地方ブロックがこのようなインフラ投資におのおの責任を持てば、過剰社会福祉の是正ばかりでなく本来の広域インフラの全国的整備も進むことになる。

 

6 おわりに

 

国土計画の政策は、平成の最後においてまったく忘れ去られている。人口減少社会をまともに受け止めるような計画は、国民の幸福を招来しない。人類文明が大きく転換しようとしている文明認識が、毫も計画策定者とその組織にないことが致命的である。覚醒を期待したい。

 

補注1:平成29・5「国土計画のソフト化を考える;石川・小牧・下河辺+人口政策」29・7「その2=広域インフラ:パラグ・カンナほか」29・9「その3=国土形成計画U批判・アンチまちひと」29・11「その4=原子力と宇宙」30・1「その5=ソフト化国土計画の推進体制=道州制」

補注2:矢田俊文(北九州大学長)の説(人と国土21:平成2111号所収)

 広域地方計画策定からみた課題@府県・政令市ではブロック全体を俯瞰する発想力は弱い。国の地方支分部局も所掌を超えたデザインは出にくい。A広域地方計画を実行する行財政権限を持ち、トータルの計画進行を管理する組織がない。B支分部局を統合して地方庁とし、長官は首相が任命する。この地方庁が広域地方計画の実施の役割りを負う。(現在の計画作成では、有識者を含む協議会がこの役割を果たしている)

 

ソフト化国土計画からみた「世界と人類のゆくえ」

国土計画のソフト化を考える(その6

 

平成30331

ジオストラテジー研究機構会員

天本俊正

構成

 1)はじめに 2) 人類の増殖 3)人類経済の発展と文明 4)人類世界が育んできた思想・哲学 5)日本民族の人類将来歴史における役割 6)おわりに;附=平成29年度取りまとめ

 

1 はじめに

 

今年度(平成29年度)にソフト化国土計画に関しての本論考(その1)から(その5)までが見てきたように補注1、我が国の国土計画は今や、人口政策をはじめとする新社会政策を取り入れなければ、時代と世界の趨勢の対応できない状況にある。

論考のまとめにあたって、世界と人類のゆくえを筆者なりの独断と偏見で改めて振り返ってみたい。

 

2 人類の増殖

 

世界人口は今76億人(国連推計2017=平成29)だが、人類の発生500万年前から長く数億人にも満たない人口の時を経ている。いや文明と言われる時期になってからも1万年にもならず、超長期的にみれば、人類は、地球の歴史のほんの最近の短時間に急速に発生した動物の1種にしか過ぎない。

アントロポセン(人新世)という地質時代の誕生(1950年から?)を言い出す科学者が出るに至っていることは、まことに驚愕に耐えない。アントロポセンが、人類の繁栄を意味するのか、限界を警告するものか。

 

アントロポセン(人新世)とは、ドイツの化学者クルッツエンが、数年前に言いだしたことで、地球の地質時代に人類の足跡が明確に確定される地質層があらわれているというものである。科学的に確定しているものではないが、人類の自然への克服の一時代を画しているといえよう。

 

宇宙への人類の進出は、20世紀に始まったばかりであるが、地球をいわば「征服」した人類が、科学・技術の進歩、さらには道義社会の新展開を勝ち取って宇宙に本格的に出ていくのは、数百年オーダーにしても遠くないだろう。

 

22 地球規模での出生率の構造

 

世界主要国の出生率は、極端に地域偏在、民族偏在を見せている。世界最高の出生率の国はアフリカのニゼールで、合計特殊出生率は7.2(世銀統計)。最低は、韓国、ポルトガルの1.2(台湾も1.2)。アフリカ諸国が出生率4以上は独占している。(別表参照)。アジアで健闘しているのは、アフガニスタン、イラク、イエーメン、パキスタン、フィリピンである。出生率2以下は、軒並みヨーロッパ諸国、アジアの有力国である。

フランスが2.0とほぼ維持水準に近いが、移民の割合が高い、家族形態が崩壊している、もう今までにさんざん低出生率の時期を過ごしてきた、ということから、筆者天本は、我が国の人口論で目標国に取り上げていこうとする風潮に苦い思いを持っている。

 

23      人類人口の将来推計

 

 国連や世銀、OECDなどが世界の将来人口の推計を行っており、それなりに権威をもって受けとめられている。中位・高位・低位に分けて推計をしている。それぞれの国・民族がこれから将来にかけて出生率が変化していくのに仮定を推計している。

 22世紀初頭まで仮に現在の出生率・死亡率が継続した場合の人類人口は300億人に上るとされているが、国連等の推計は、各国・各民族が所得・文化等の向上から出生率の一定の低下があるとみて推計している。

 これは問題がある。ヨーロッパ等の先進諸国は今、均衡維持水準を大幅に下回って人類の再生産をやっている。この文化・文明を受け入れれば、超長期の将来世紀に人類は滅亡することになる。

 人類は、食糧・エネルギーの確保、医療・居住環境などで多くの苦難を乗り越えてきた。人口増が抑制できるならこれに越したことはないというのが、伝統的な人口政策になっている。人口抑制、減るのは困る、で均衡水準2.09が政策目標になっている面もある。

 

 人類は、アントロポセンの時代に入っている。宇宙人口は200兆人という声もある。人口政策を西欧文明主流から切り替えて、意欲的に人類人口増のシナリオに切り替えていかなければ、人類に真の希望はない。


3 人類経済の発展と文明

4全総(昭和62)に先立って長期展望作業が行われた。そこでの将来の世界経済の展望はどうであったか。

 

2025年にむけて中・低所得国が、人口増のもと依然として貧しい状態にあるならば、発展途上国と先進国のあつれきが増す。途上国の人口調整の近代化への自助努力と先進国の経済援助・安定成長が不可欠である。(報告書p28)

 

だが、30年たった今、世界経済の態様は、先進国の停滞、中国・ブラジルなどの躍進が顕著になっている。先進国の停滞は、人口減が最大の要因である。経済・科学技術・文化でまだ先進国は、リードしているかにみえるが人口減のボディブローは、確実に世界リードの勢力の交代を日程に乗せている、というべきであろう。

 

4 人類世界が育んできた思想・哲学 

 

人類の歴史の大半は、民族間の交流の少ない時間であった。近世に入り世界が狭くなった時、「人種差別」が始まった、と言えよう。文明、経済力の差は、軍事力になり、世界は、白人種が数世紀にわたり支配した。科学と技術、文明の発展は、アントロポセンと言われるように人類が、地球を差配できる段階に来た。その時に、先進文明は、人類再生産の思想・哲学を失ってしまった。出生率の1点台はその証左である。

 

つい30年か40年前に人口政策の教科書(勁草書房「世界と日本の人口政策」)を読むと最初の文章は、こうである。地球は、「人口爆発」により苦悩している。地球は人類の異常なまでの増加により着実に死の淵に立たされている。

今、先進国は軒並み人口減少に悩まされている。人口減対策は、つい半世紀にも満たない短期間に人類が取り組まなければならない緊急問題であり、人類の死活にかかわっている。

 

旧約聖書の創世記にいう。「生めよ、増えよ。地に満たせ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地を這うすべての生き物を支配せよ」これに比べてアントロポセンを実現していながら世界人類の思想は民族自殺、人類自殺の腐敗したものになっていないか。

今や、脱欧・入亜(アフリカ・アジア)への文明転換が必要とされている。PWWO=POST WEST WORLD ORDERを求めなければならない。トランプ米大統領、プーティン露大統領の出現、英EU脱退さらには習近平独裁まで、これまでの西欧文明支配の地球文明の転換を示しているのかもしれない。日本は、日本民族は、いかなる役割を果しえるか、国土計画の論争にも問題提起があってしかるべきであろう。

 

5 日本民族の人類将来歴史における役割

 

 日本は、明治維新から大東亜戦争にかけて、自国のみならず世界において人種差別撤廃のために力をふるってきた。その理想の実現一歩手前で、西欧文明の科学・経済力にたたきつぶされた。大東亜戦争の意味はそこにある。

 

 昭和16年、日本政府の人口政策確立要綱は、「個人を基礎とする世界観」を排し「家と民族を基礎とする世界観」の確立によってはじめて民族人口の増殖が可能であることを主張した。その時点で、日本国民は、「家を愛する心と国を愛する心において熱烈なる」ものがあった。戦後の新年勅語で「献身的努力により、日本国民は人類の発展に絶大なる貢献をなしうる」との言葉があった。筆者天本は、これは、日本が民族の伝統習俗を取り戻すことが、平成日本に対しての世界的要請であると考える。

 

 6 おわりに

 

平成の最後を迎えようとしている。我が国において国土計画の政策は、国民から忘れ去られていることを前回まで指摘した。「人口減少社会」を受け入れるような計画は、国民の幸福を招来しない。人類文明が大きく転換しようとしている文明認識が、毫も計画策定者とその組織にないからである。小生の立論は、赤恥のいたすところであるが、国土計画策定者と関係筋の覚醒をいまさらに期待したい。

 

補注1:平成29・5「国土計画のソフト化を考える;石川・小牧・下河辺+人口政策」29・7「その2=広域インフラ:パラグ・カンナほか」29・9「その3=国土形成計画U批判・アンチまちひと」29・11「その4=原子力と宇宙」30・1「その5=ソフト化国土計画の推進体制=道州制」

 

;附=平成29年度取りまとめ

 

 

;附=平成29年度取りまとめ

 

国土計画のソフト化を考える

天本俊正

 

1 はじめに

 昭和36年の一全総に始まる我が国の戦後国土計画は、要約するところ「都市・土木施設計画」であったといえよう。戦後経済復興などの成功に一応の成果を与えてきた。今、世界は大きく変わろうとしている。国民精神から生活態様まで日本も変わらなければならない。施設計画だけ追っかけていては、国土計画は実効ない。国土計画の正しいソフト化を考えてみよう。

 

2.戦前(大東亜戦争の前)国策の扱い 

@都市計画家である石川栄耀は、「国土計画―生活圏の設計」(昭和17、河出書房)の最後でこう言っている。現在進行中の「物の国土計画」を第一期とすれば「心の国土計画」こそ第二期なり。生産拡充を重点とするのみでは、「民族」そのものを失い国土はなりたたない。厚生、社会、教化などの精神部門の前進を待たなければならない、と。

 石川は、具体的な方策としては、地方行政の組織に根本的な吟味を加えるべきとしている。21世紀を迎えている平成日本ではどう捉えたらよいのだろう?

 

A小牧実繁の「日本地政学」を見てみよう(柴田陽一の論文による)。「米英を首魁とする金融資本主義国家による世界旧秩序を破壊して、新秩序を齎す建設計画の科学的武器たらんとする地政学」を日本地政学に求めた。日本地政学は、世界の各地域の住民や文化を尊重して世界共存をはかる多文化主義的思想である。「万邦をして各々その所を得さしめ兆民をして悉く安堵せしむ神ながらの道」と小牧は言う。

 

3.人口政策の転換

@いまやPOWOPOSTWEST WORLD  ORDER欧米主導の世界の後の秩序)の時を迎えようとしているのに、人口問題の学界は、国連等機関も含め、依然として人類繁殖抑制の思想にとらわれている。ローマクラブの思想の悪影響が、国際社会に広まっていることによるのだ。

A科学の発展、とくに素粒子物理学、分子生物学の発展などにより、人類は生物としての種属の新発展の段階に入っている。20世紀に入っての人類人口の急増は、人類がこれまでの数万年以上に及ぶ人類史と異なる新段階に入っていることを、今、平成および平成後の日本の国土計画は、自覚することが望まれているのである。注;地質学者が、アントロポセン(人新世)を言い出したのも符合する。

 

B人口政策の「舞台」を国土計画に移すことが勧められる。我が国の厚生労働省・社会保障・人口問題研究所の寄って立つ根本思想、人脈を流れる思想が、人口増を嫌悪する伝統的な流れから離れることは、容易でないと推測するからである。

反動的人口政策を現在のわが国では見ることができる。1)男女共同参画法 2)フェミニズム、3)憲法24条、我妻民法、これらを早く破棄すべきである。

 

4.国土計画のソフト化

 

@世界の中の日本の位置づけ

「一帯一路」に抗する「環アジア太平洋構想」も十分に日本が提唱に値する。

 

A国土計画のソフト化の政策の例示

1)大家族居住、多地域居住などを飲み込んだ住宅政策の展開(=一世帯一住宅ではない)が望まれる。国土計画の中心的な課題にこのような新住宅政策を柱建てすれば、国土計画のソフト化は一気にすすむ。

2)オーソドックスには、ソフト化国土は、市場の拡大、雇用機会の増大をとりあげるべき。行政なり国土計画の本来的責務だ。狭い自治自立の地域政策ではだめだ。地方、全国、世界、宇宙まで、ある意味、単一市場になってくる。

(パラグ・カンナの「接続性の地政学」は、この間の論理を言い当ている。)

Bローカル知的拠点にしろ「まちひと創造」にしろ、その持つ面的広がり、人的つながり、商圏・資材調達などはどうしても狭く部分的なものになりがちである。地元人材の熱意が決め手であることはわかるが、やはり情報産業時代には、その「広がり」「深さ」「速さ」は、グローバルに競争できるものでなければならない。

 

5.おわりに

今の国土計画の地域づくりは、行き過ぎた分権主義に乗って「地域資源を活かす仕事創出」を唱っているが、国民の覚醒に基づく出生増の民族主義再興を内容とする国土政策・人口政策が生み出す将来の人的資源を全国的コミュニティ繁栄につなげていくことを柱にすべきである。

地球を支配するアントロポセン時代から宇宙進出への人類発展の要素を日本の国土計画が取り込んでいく必要もある。

(以上)

 

 

 

=======図示;ソフト化国土計画の課題===========  平成29.7.8 天本俊正

 

     ソフト化国土計画

 

世界視点から日本の国土・民族を考える 

 

1世紀超の民族意思;人口政策に取り組む

 

 

生きる意欲を持つ人類増殖:民族繁栄

 

非西欧文明の勃興

2122世紀の文明

 

宗教心も取り戻したプラス思考のソフト

 

民族精神の各民族間での尊重;切磋琢磨

 

出産増;宇宙進出、科学・技術の振興

 

 

勤勉、道義国家、自立自存

 

 

大規模プロジェクト;国際プロジェクトの

奨励、企画、実現、富の生産と管理通貨のコントロール

 

発展するハード、柔軟、豊かなソフト

 

 

 

 

 

 

 

     戦後日本の国土計画

 

日本国土に閉じこもったフレーム展望

 

10年単位の委縮した国土展望と人口減少容認

 

現段階の文明に満足する傲慢さ;人類衰退

 

西欧文明の陰り

1920世紀の文明

 

甘ったれ傲慢精神にとりつかれた文明

 

人種差別と行き過ぎた個人主義の蔓延

 

出産減;守りの姿勢の生活、行き過ぎた環境保全、社会におもねり偏った人権思想

 

怠慢、行き過ぎ自由、(自立を奪う社会主義思想)

 

プロジェクトへの不信・嫌悪

分権主義、気に入らねば強権主義

 

 

委縮するハード、人間不信のソフト

 

かちがらす