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NPOジオストラテジー研究機構の研究会での発表論文を収録しました。研究機構の設立趣意書を最後に収録してあります。

 

目次

新々3.次期・国土形成計画への注文(前編)=天本俊正:平成28年11月ーーーこのページに直接、採録:目次の直後を見られたい

新々2.第2次国土形成計画を論ず=天本俊正:平成27年9月ーーーこのページに直接、採録:目次の次の直後を見られたい

新々1.国土計画のこれからを論ず(試論)=天本俊正:平成26年11月ーーーこのページに直接、採録

新1.新国土計画と超長期人口計画(天本俊正:平成26年2月)このページに直接、採録

新2.新国土計画と脱・福祉亡国(天本俊正:26年4月)このページに直接、採録

1.社会資本整備の思想と国づくり(山本基)社会資本整備の思想と国づくり(山本基)

2.離島の過疎問題(芦田充)離島の過疎問題(芦田充)

3.電柱地中化:追捕(平成21年6月)電柱地中化:追捕(平成21年6月)

4.効率性の追求と社会全体の利益:水文観測員の事例(山本基:平成21年9月)社会(山本基:平成21年9月)

5.民主党政権下の国交省関連政策(芦田充:平成21年9月)民主党政権下の国交省関連政策(芦田充:平成21年9月)

6.日本人が学ぶべきこと(山本基:平成21年12月)日本人が学ぶべきこと(山本基:平成21年12月)

7.国力の発展をめざす社会資本整備(山本基:平成22年5月)国力の発展をめざす社会資本整備(山本基:平成22年5月

8.道義国家の作り方(天本俊正:平成24年10月) このページに直接、採録

9.ああ、日本(山本基:平成24年3月) このページに直接、採録 ああ、日本

10.公共事業を考えるー財政の視点と国づくりの視点(山本基:平成24年10月) このページに直接、採録 公共事業を考える

11.国土交通省の現場事務の執行体制の変革について(天本俊正:平成24年12月)このページに直接、採録

12.民族再生緊急措置法(天本俊正:平成25年6月)このページに直接、採録

市ヶ谷研究会

以上 目次

 

新々3.次期・国土形成計画への注文(前編)=天本俊正:平成28年11月

次期・国土形成計画への注文

(前編)

平成281112

天本俊正

ジオストラテジー研究機構・会員

 

構成  @人口政策―3億人の国土(国民運動+憲法24条・民法家族法改正)A脱・福祉亡国―人口政策と対をなすB国防C宇宙―ロケット、ロボット、バイオDエネルギー;原発、核サイクルEバイオ―食糧増産、科学=ILC、ビックサイエンス、高等教育などF国土の構想

 

1.趣旨

 

 国土形成計画Uは、「対流促進型国土」をテーマに動き出したが、早くも次の計画の策定を準備しなければ、日本の国土そのものが衰退局面に入ってしまう恐れが強い。アメリカ大統領選挙の結果や欧州の再編成、中国超高度成長の失速など世界の構成の変化に日本は対応しなければならない。次期・国土形成計画への注文としてその要点を書きだそう。

 

2.「人口減少社会」の否定;次期の国土形成計画の根幹にすべきテーマ

 

 「人口減少社会」を是認して、姑息な成長政策を正面に出すのは、むりだ。人口減少の原因は、女性が出産を手控えるからであり、手控えるのは出産より就業を好む性向にあるからである。その性向は、世界的に先進国・新興工業国に共通している。「個人主義」のめざめは、工業をはじめ資本主義的生産を増加させたが、行き過ぎは、出産率の顕著な低下をきたしている。

 

 人類は、永遠に増大することを自ら追求しなければならない。食糧生産、エネルギーの調達、宇宙空間への進出など可能性は、無限にあり、人類の世代を繋いでの無限の努力が運命づけられている。「神は彼らを祝福して言われた。産めよ殖せよ地に満てよ。地を従わせよ、また、海の魚と地に動くすべての生き物を治めよ」(旧約聖書マタイ伝創世記128節)

 工業生産主力の成熟社会から情報生産主力の「生まれ変わり社会」に切り替わっていかなければならない。「成熟」のまま停滞することは許されない。生まれ変わる社会、生まれ変わる国土、これが次期の日本の国土形成計画のテーマでなければならないし、世界をリードする役割でもある。

 

 前稿で指摘したように世界的には、現在の出生率の趨勢を維持するならば、アジア、アフリカ等の増加を柱に総人口は283億人=22世紀となるが、国連・OECDなどは開発途上国の西欧文明の浸透により人口増勢の低下を見込んで100億人の線を出し、日本国は5000万人を割るような予測を出している。

 

西欧文明の行き詰まりから日本も含めアジア・アフリカ等諸国が抜け出す、あるいは反転するなど(西欧自身の変身も)を考えると、日本が今の世界人口での割合の確保の数字は3億人である。日本が非西欧文明の道を進むが前提になる。その道を意識的に国民は探すべき段階だ。国土計画の長期課題である。

(参考図―1)

 

3.22世紀にかけての日本の人口政策のための考察

 

@現行の憲法24条・民法家族法の改正ないし撤廃

 

 現行憲法24条(国民の権利義務の1条)は、婚姻・男女平等などの規定である。占領軍のバイト女子大生のシロタ某女の素案作成になる。米憲法にも同趣旨はない。占領憲法そのものが無効に近いが、この条文のような自然法的な人間の権利義務は、歴史的、伝統的、慣習的に出来上がるもので、法文に仰々しく書くものではないはず。

 内容だが、「婚姻は両性の合意のみで成立」するという。血縁、地縁、職業関係などもろもろがからみ、総合的に決まっていくものであって、最終的には本人同士の意思の尊重があったが望ましいとしても、婚姻の社会的規定の在り方としてこのような決めつけが国民と社会の成り立ちにいい影響を与えるわけがない。偏見である。「配偶者選択、相続、住居選定、離婚、など」細部まで「個人の尊厳」と「両性の本源的平等」に立脚との制約など、行き過ぎ、不当というべきである。婚姻に関しては「男は男らしく、女は女らしく」が当然で、「両性平等」など次元の全く違う観点を持ち出すべきでない。

 

 このような憲法の暴論的規定を教え込まれた若い世代が、結婚というものにとんでもない思い違いの常識、生活感をいかに吹き込まれてきたか、考えるだけでもおぞましい。日本には、家と家とのしっかりした土台を基礎にする「お見合い」の制度などが社会に普及していた。戦後70年で見事に破壊され、少子化の最大要素になっている。調査では、交際相手のいない未婚者は男性7割、女性6割とか。

 現行民法・親族法の改正は、当然である。

 

Aフェミニズムの偏見を考える(瀬地山角;「東アジアの家父長制」(勁草書房)を読む)

 

A−1 近代主婦、現代主婦

 

 日本の農村では既婚女性も農作業に従事が普通であった。明治維新以来の近代化により「男=生産労働;女=再生産労働」という分担システムのもとに「近代主婦」が誕生してきた。戦後日本では、家事労働時間の減少とともに「現代主婦」が、再生産労働(出産・育児のこと?)だけでは飽和しない型として出現する。労働力として主婦を求める産業化の要因と、生産領域への参入を許容する家父長制、外での就労に生きがいを求める傾向が重なって現代主婦の多くは、就労する、と瀬地山は説明する。

大都市では専業主婦が誕生しやすく地方都市では兼業主婦になりやすいとも指摘する。

 

A−2 労働力再生産コストという考え            参考表1

 

労働力再生産費用の負担は、社会化、国家関与の「社会主義型」を目標としても、税負担が重くなる。日本は、もはや個々の女性や親族による育児等は期待できない。公的保育を充実し、育児に限らず労働力再生産コストを個々の家庭に任せるのでなく社会で薄く広く分担する方向を目指すべきとしている。

 

 瀬地山の説明では、出生率の低下が、社会問題化するという視点は、まったく欠けている。女性を生産領域に算入させる戦略として、企業が対等な人材として女性を見るという方向を押している。

 

A−3 フェミニズムと出産率改善

 

日本の出生率低下は、危機的状況にあるにもかかわらず、経済界、政治、行政、マスコミなどが,瀬地山のような異常なフェミニズム論理に乗った政策、対応しか講じようとしないところに致命的な問題がある。安部政権も女性の活躍、一億人の活躍という取り上げ方で、結婚の促進、出産の奨励などの肝心の方向に触れないし、政策で取り込もうとしない。おかしい。

 

瀬地山は、女性が母として、子供とセットに考えられ女性が「個」として男性に対するという状況が生まれないのを非難している。これではフェミニズムは、現在に連なる女性の存在をすべて蔑視している。人類が、特に今の西欧文明の狂気のフェミニズムにとらわれている限り、衰退の道しか取れない。

 

Bやむえない移民の導入と日本国民のアジア・世界への進出の促進

 

 人類は、種族として本能に従い無限の発展を願望するだろう。大量の宇宙への移民の進出もそう遠い未来ではないだろう。地球の上での民族のすみわけ、宇宙空間での協力体制など課題を克服していく。日本列島への一部移民の受け入れは、日本民族の対外進出(経済的、文化的な)が盛んになることへの相互主義の一環であろう。大東亜戦争の八紘一宇も、一方的な侵略戦争などと言われるいわれはない。吉田松陰の「北海道を開き琉球を収め朝鮮をとり、満州、中国を圧し、インドに臨み、もって進取の気勢を張るべし」は民族としての気概の問題である。

 

 戦前の宰相・広田弘毅は、「20500万人の満州移民」を唱えた(11)。平成日本でも計画的移民の受け入れと日本人の計画的な海外進出を国土計画の中に盛り込むべき時期に来ている。

 

C人口政策の具体策

 

 ほぼ昭和161月の「人口政策確立要綱」に掲げられた出産奨励の具体策の実行あるのみ。その基本、基礎となる国民運動の奨励のために、政治、行政、宗教界、マスコミ等での協同した立ち上げが必要である。国・地方挙げて取り組むためにまず国土計画の内容に取り上げるのが、最も有効であろう。

 

4.福祉政策の転換;自立家族・自立地域・自立職域を基盤とする福祉へ

 

政策全般に福祉予算のマイナスシーリングの設定を行い、計画的に財政赤字の解消をはかり、福祉の内容も自立家族・自立地域・自立職域に基礎を持つものに合理化、効率化を図っていく必要がある。このための道州制の検討、財政の手段としての「国富」の意図的な増大政策など、画期的な検討が必要とされよう。

 

以下、5.国防、6.宇宙―ロケット、ロボット、バイオ 7.エネルギー;原発、核サイクル 8.バイオ―食糧増産、科学=ILC、ビックサイエンス、高等教育など 及び9.国土の構想については、後編による。

 

おわりに

 

 日本は大東亜戦争の「敗北」から本当に立ち直っているのか?世界の体制が、冷戦も、米国一極世界も終ろうとするとき、日本民族がどう世界に自分たちの主張を打ち出していくのか、考える時だ。国土計画は、その手段として20世紀での「八紘一宇」「大東亜共栄圏」に変わる自己主張の目標を持つべきであろう。「子供のあふれる国土」「若返りの国土」とか?

以上

参考図1 世界人口

参考表1 労働力再生産費用負担のパターン

 

 

 

 

新々2.第2次国土形成計画を論ず=天本俊正:平成27年9月

 

2次国土形成計画(全国計画)を論ず

融通無碍の計画は国民の期待と自覚を呼び覚ますか?

 

平成2795

NPOジオストラテジー研究機構・会員

天本俊正

1.概要

 

1−1.経緯

 

 第2次国土形成計画は、平成27814日に閣議決定を見た。終戦70年首相談話と同じ閣議になったのは、象徴的だ。

国土形成計画(第1次)(全国計画)は平成207月に2020年までのおよそ10年の計画として作成された。国土交通省では計画の中間見直しとして「国土のグランドデザイン2050」を平成266月に作成、公表した。その間の作業とも軌を一にして、人口減、地方消滅のテーマが、政治的課題として急上昇した。安倍内閣は、地方創生の政策を急遽まとめた。まち・ひと・しごと創生法の成立は、平成269月。2612月「まち・ひと・しごと創生」計画の閣議決定に即応して国土形成計画も前倒しの改定となった。

閣議決定を受けて「広域ブロック計画」の策定作業が進み平成28年度内に国土交通大臣決定となる。

 

1−2.計画の骨子:「対流促進型国土」形成の計画=戦後7番目の国土計画

 

@計画の意義=「国土に関わる広い分野に、長期見通し、統一性のある方向づけ、国づくりの推進エンジン」。

1次計画(133ページ)の3割増の分量(173ページ)の大部な計画である。

 

A基本コンセプト=対流促進型国土(「対流」とはなにか?交流と違う?)

[コンパクト+ネットワーク](「クラウド国土」とは違う?)

 

計画の内容については、国交省国土政策局の概要メモを見られたい。

 

2.計画の限界と融通無碍さ

 

2−1 計画の性格

 

 国土形成計画法は、全国総合開発法に基づく国土計画と性格を異なるように制定された。@国先導でなく国・地方対話A「開発」でなく「整備」Bハード志向からソフト、など。その結果、具体事業の明示回避、事業費の裏付けなさに心もとなさが生じた。今回の2次国土形成計画も、表現は多様多岐、豊かにあるが、具体のイメージ、財源ある事業に結びつかず、策定に業界、地方、各種団体等の関心はほとんど呼ばなかった。

 

しかし、全国計画、地方ブロック計画の策定作業には、膨大な人力、知力の参加がなされた。行政官をはじめ学者、業界、民間、幅広い国民的意見の集約が見られる。現在の我が国の状況は、いわば混迷をきわめ、「失われた20年」と言われるように国民一般の思想のまとまりもない。財政は破綻している。計画の内容に焦点が定まっていないとしても、関係者が、今後、自らの行動規範にこの計画を参考にしていくことが、日常茶飯事的に行われるならば、その成果は、全国的に盛り上がりに繋がっていくであろう。

「対流促進型国土」とは、地域地域、各部各部が「個性」を生かしてエネルギーを止まることなく噴出していく、そのような国土のイメージであろう。計画の融通無碍さは、国民を激励していく要素を持っていると評価したい。

 

3.国土づくりの課題と計画の示す方向をどう考えるか

 

3−1.「国土計画」のありよう

 

 今回の国土形成計画は、国土形成計画法(平成17年)に基づくものであり、法の計画の定義に即して策定されている。筆者は、国土計画は、もっと広い定義「国土を総括的、統括的に秩序づけ、人的資源と経済的資源を正しき場所に、正しき目的のために、正しき形に配置すること」(小牧実繁)をとりたい。「産業、交通、文化等の諸般の施設、および人口の配分計画を土地との関連において結合的合目的的に構成」(昭和15年国土計画設定要綱)をとりたい。

 

3−2.現在の国土の課題と計画の扱いぶり

 

@今回の改定のきっかけとなったのは、人口減問題である。出生率の低下は、放置すれば、22世紀には、日本の人口は半分にも満たなくなる。「まち・ひと・しごと創生」は、人口増の政策をとり、20601億人確保という目標を出している。だが、政策は明確ではない。この国土形成計画では、法が認めていないこともあるが、所与の条件として書き出しているだけである。本来は、国土計画としての計画意思が、主張さるべきである。社会主義体制でないので国民に強制はできないが、国民精神として、「個人を基礎とする世界観を排し、家と民族を基礎とする世界観を確立する」(昭和16年人口政策確立要綱)を取り上げるべきであろう。

 大東亜戦争の間近の政策は参考にもしない、という論理は合点がいかない。安倍内閣は「戦後レジームからの脱却」を政策の柱にしており、平成の人口政策に、このような観点を持ち出すことは、矛盾はあるまい。冒頭、814日閣議決定が同時を象徴的とするのは、このことである。

 ことほど左様に、出生率を民族繁栄の水準にまで、早急に戻すことは、いかなる国土づくりの課題に優先する。今回の国土形成計画策定担当者の多くが、このことが言えないことに無念の思いがあると信じたい。*(注)

 

*(注)補足を3点行う。@諏訪春雄「戦後の新民法は、鎌倉時代以来の伝統的な家制度を崩し、分断と孤独に生きる小家族とした。大きな家族の精神的つながりで、包み込み連結することが今、切実に求められている」Aまち・ひと・しごと創生法では、結婚、出産は、個人の決定に基づくとして、人口政策に消極姿勢であるが、戦後、国を挙げて出産抑制に走ったことを忘れたの如くである。(詳しくは、山本基「社会資本・・の思想」p177-181)種族の保存という本能を否定する若い女性の大きな存在は、社会秩序からみて由々しきこと、放任はできないことだ。B日本人の急速にして永続的な出生増(発展増殖)が具体化できないとすれば、質的向上でのカバーには限度があるので、相当の外国人移民の受け入れを覚悟しなければ、経済規模の維持発展は、見込めない。そのことの問題指摘を今計画は触れていない。

 

A福祉予算の膨張による財政破綻と国土づくりの関係に、当然、国土形成計画は触れるべきであろう。都市における福祉、医療、環境等の機能維持との関連でしか触れられていない。福祉予算は、国家税収の6割にも及んでおり、赤字国債のここ20年近くの連年の累増の根源となっている。一日も早く、福祉予算にマイナスシーリングを計画的にかけて、中長期的に健全財政を取り戻すべきである。公共投資をはじめ国土づくりの施策は、身の丈をはるかに超える過剰福祉による財政破綻が続いている限り、形にならない。政府の行政権サイドから、言いだせないこと。政治に国民が要請すべきことであろう。

 

B「対流促進型国土」「コンパクトシティ」は、国土の均衡ある発展と齟齬なく共存できるのだろうか。策定最後の段階で、政治的な意見も出たが、筆者は、「スーパーメガリージョン」(東京―名古屋―大阪)に大きな期待を寄せることには賛成しかねる。情報技術基盤の今後の急速な発展は、クラウド型国土、いやアジアを通ずるクラウド型アジア圏を予想していく方が可能性が高いと直感する。地方創生の具体化で動こうとしている中央省庁の地方分散(例=文化庁を京都に)は、クラウド型国土のわかりやすいモデルと思うが、実現は疑問だ。

 

4.いくつかの課題に対する計画の対応

 

4−1.土地市場に与える影響のいくつか

 

@コンパクトシティの提案は、そうはいっても人口減少が止まり、反転するまでにとるべき都市政策であろう。各都市において土地活用の選別の一層の進化を促すことになる。

 

A「二地域居住」政策もこの形成計画のなかでは強調されている。その成否は地方創生の胎動に大きく影響していくものである。今後の住宅政策が、家族の在り方がどう変わっていくかによって、方向が大きく変わっていく。核家族化が止まり、マルチ地域居住も進み、経済も文化も新たな成長を見せれば、わが国の住宅も豊かな内容を包含することが期待できる。

 「地域の個性」も取り上げられているが、今や日本では人間どこに住んでいようと少なくとも仕事の相手は、世界である。地域に閉じ籠ることはできない。

 

Bこの計画では、正面からの人口政策、移民政策が取り上げていないが、政策無力のまま推移すれば、財政破綻ともども、国土の混乱は、必至である。都市政策、土地政策ともに、慎重な展開が要請されるこの10年であろう。

 

4−2.エネルギーの見通し他について

 

@原子力発電については、重要なベースロード電源として認め、可能な限り低減させるとしてはいても(各論;産業―エネルギー)、踏み込んだ見通しを出している。メタンハイドレートは、控えめ。水素社会の実現についても控えめ。総合的なエネルギー見通しについて確実な方向性を追求している。

 

A前の計画では、広域ブロックがアジアと交流するなど自立的に発展する国土構造を主張していたが、「対流促進型国土」は、その色彩は薄れ、むしろ地方分権の行き過ぎへの一定の反動が、見られると言えよう。シームレスアジアも消えた。

 

4−3.ソフト化国土のいくえ

 

@前計画には「新たな公」を基軸とする地域づくりのシステムが、登場したが、今回は「国土づくりを支える参画と連携」としてソフト課題が、主張されている。「若者希望社会」「女性活躍社会」「高齢者参画社会」「障害者共生社会」などを実現する共助社会づくりを主張している。内容に実はないが、これらは、時代の流れを反映しているものであろう。筆者の「融通無碍の計画」との評価に沿うものである。

 

A日本民族の特長は、挙国一致ができることである。ソフト化国土づくりをリードしていく動きは、どこにどう期待できるのか。「新たな公」も今回の「地域を支える担い手の育成」も、意地悪く見れば国家権力の弱体化を、暗に含んでいるかにみられる。民族が自殺的な出生率低下に陥っていることを自覚して、脱出を図ることが、喫緊の国土の最大課題であるが、これは、「民族の課題」である。「地域を支える担い手」ではなく、「民族を支える担い手」を育成しなければならないはず。その担い手の活動の場が、家族であり、地域であり、職域であり、地方であり、国である。

 

B「戦後レジームからの脱却」は、長い日本民族の民族としての歴史の流れに戻ることではないか。国土づくりのソフトは、世界が、近代西洋思想の支配から脱しようとするとき、自らの民族特性に目覚めることにより形作りができるはずである。

 

おわりに

 

2次国土形成計画は、困難な世相の中、国土計画関係者をはじめ各界各層の多くの気鋭の士の知恵と汗の結晶であるので、必ずや我が国の再生に大きな役割を果たすことが期待できる。

 

 ただ、本来の国土計画が持つべき、世界の地域構造の中での日本列島の在り方が描かれていない。前計画は、最後に「アジアの未来へ!地域は個性を!」のスローガンを掲げたが、今回は、その余裕がない。TPP、中国の超高度成長の失速などを踏まえ、日本なりの地政学的研究が、政府として必要である。

 

(以上)(4300字)

 

新々1.国土計画のこれからを論ず(試論)=天本俊正:平成26年11月

 

国土計画のこれからを論ず(試論メモ)

(国土グランドデザイン平成26.7を読む)

 

平成26118

NPOジオストラテジー研究機構・会員

天本俊正

1.概要

 

1−1.経緯

 

 国土交通省は、今年7月に「国土のグランドデザイン2050」を発表した。国土形成計画(平成208閣議決定)の見直し作業の一環である。「まち・ひと・しごと地方創生」政策が、安倍2次内閣の主要事業として取り上げられ、国土形成計画の見直しも前倒しの対応が、急ぎ必要になっている。「グランドデザイン2050」には、これからの日本の運命を変えるような課題が、生煮えのまま取り上げられている。その焦点となる課題につき、私論を論じたい。

 

1−2.主張

 

 私論としての提起は、日本民族として世紀を超えての国是をどう考えるか、である。国土計画として「日米・環太平洋の新・大東亜共栄圏」の構想を、人口の発展増殖、科学技術・文化の進展、経済とインフラの柱を考えながら、素描を試みる。

 昭和159月の「国土計画設定要綱」の時間的空間的な規模の大きさに比べ、昨今の国土計画の諸プランは、狭い範囲の問題意識に委縮しすぎていないか。

 

2.国土計画議論の混迷の状況=「国土のグランドデザイン」へのコメント

 

2−1 「グランドデザイン2050」の趣旨と背景

 

*時代の流れとして@少子化Aグローバリゼーション(ユーラシアダイナミズム)B巨大災害・インフラ老朽化CICTの進歩などを挙げている。

 

*基本戦略として@コンパクト+ネットワークA「小さな拠点」と高次地方都市連合Bリニア新幹線を踏まえスーパー・メガリージョンC田舎暮らしの促進、D観光立国などを挙げている。「対流促進型国土の形成」とする。

 

*人口減少は、2050には、一億人を割り込むとするが、政府あげての少子化対策と環境整備で、出生率は回復し、中長期的に1億人程度の人口構造を保持できるとする。ただ、フランス並みのペースでも回復は、悲観的である。

 

*少子化で地域機能が維持できなくなる恐れがある。コンパクト+ネットワークで高次の都市機能を維持していくとする。高次地方都市連合とあわせ、近年、中山間地・離島等で「田舎回帰」の人口の社会増が見られるのを注視し、可能性をつなげたいとしている。

 

*外海の遠距離離島(いわゆる国境離島)の居住環境の整備と地域社会の維持を図るとしている。日本海は、これを内海とする国土の地政学上の位置づけ、ユーラシアダイナミズムへの対応から、日本海側重視の国土利用を必要とする。

 

2−2.「まち・ひと・しごと創生」:安倍2次改造内閣の取り組み

 

*国土交通省が、各省と協議しながらまとめた習作「グランドデザイン2050

を追いかけるように安倍改造内閣の看板として出てきた。国土形成計画(閣議決定=平成20/7)の見直しと歩調を合わせる必要も出ている。

 

3.「日本」を取り戻す国土計画の私的提案

 

=「日米・環太平洋の新・大東亜共栄圏」の構想=

 

31 脱・少子化の国土計画

 

*筆者の超長期人口計画(発展増殖)は、当研究会(平成262.7)で「21103億人の国土」で論じたとおりである。今の危惧は、上記「グランドデザイン2050」の国土交通省の作業において、出生率向上の対策としてフランス、スエーデンでの事例を国土政策の柱として取り入れようとしたことである。フランスは、人口停滞が長く続いた国だが、アルジェリアなどの旧領主国のイスラム移民が多くなり、一方、白人の間の社会道徳規範は、事実婚の紊乱など乱れに乱れている。社会福祉も過剰であるなど、いろいろな絡まった要因で出生率が相対的に高まっている。しかし、維持水準には遠い。このような国の政策を模倣することは、仮に出生率が多少向上しても我が国の社会規範が乱れてしまっては、成功とはいえない。「グランドデザイン2050」は、さすがにフランス風の政策は表に出していない。

 

日本は日本民族の歴史・伝統・文化・慣習に即し、しかも広く世界のイスラム・ヒンズー、アフリカなど諸民族のそれにも学んで、出生率向上の政策を具体に高じるべきである。早急に、少なくとも男女共同参画法の撤廃、abortioncontraceptionの政策を具体に検討すべきだ。

 

32 脱・過剰福祉の国土計画

 

これについても筆者は当研究会(平成264.56.7)で論じてきたところである。福祉マイナスシーリングで財政破綻を回避しなくては、国土も都市も、そして民族としての気概も復活しない。人口増と過剰福祉脱出なくしては、国土計画として将来計画をつくる意味がない。机上の楼閣にしかすぎない。

 

33 太平洋・アジアと国土計画

 

331 中国の覇権主義的海洋戦略への対応

 

 中国は、伝統的大陸戦略から「海洋強国戦略」へ転換した(言葉は石平氏による)。中国が、ケ小平の改革開放路線に乗って、国民が市場経済に目覚めて超高度成長を走るようになったこと自体は、隣国として喜ばしいことであり、その限りで一定の軍備増強もやむを得ないとみるべきであろう。しかし、江沢民、習近平の広範な反日教育に見られる我が国への半ば敵対的攻勢(尖閣問題をはじめ)は、わが国としては到底黙認することはできない。日本民族のいわば「生死」にもかかわることになる。

 

 日米同盟の強化とTTPを契機とする環太平洋ネットワークの国際連携関係は、中長期的に国土計画の視野に取りこまなければならない。

 

332 アセアン諸国の開発計画

 

*インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどのアセアン諸国の開発整備計画は、日本国の利害に直接、緊密に関連するものとして、関心を寄せ緊密な協力関係を充実させていかなければならない。

*この地域の開発は、ややもすれば西欧植民地型の単作プランテーション的なものになりがち(例えば、最近では、椰子油の大規模畑作)。小牧実繁は、戦前だが、民力浮揚の複合開発を主張していた。戦後日本の農村工業化とか、生活圏整備とか、学校・教育を核とする整備など、日本の経験を理論化して生かす地域がまだまだ多いであろう。現段階では、水平分業のスタイルを前提とすることになろう。

 

333 太平洋島嶼国への開発援助

 

*海上・航空自衛隊の飛躍的増強を背景に南太平洋諸島の開発計画に国を挙げての支援をなすべきである。アメリカ、豪州、インドネシア等との国際協力は、不可欠である。

*この南太平洋諸国はあわせても数百万の人口の圏域でしかない(フィジー81万、ソロモン43万など)。広範な面積の圏域にネットワーク構成のインフラは相当の知恵を絞らなければ成功しまい。小牧実繁は、日本航空路の南洋諸国内線の完成を言っていた(日本地政学の諸問題)。

*ミッドウエー海戦の敗退で制海権を失ったにもかかわらず「大東亜審議会では、共栄圏のバラ色の構想が打ち出され、日本人を指導者として送り込み、地域開発をおこなう提案に熱中していた」と故・中村隆英は、揶揄する(昭和史上p.401

 

34 国土計画インフラとアジア・太平洋の振興

 

*日本をふくめアセアン・太平洋の諸国を一体の圏域と考える開発整備計画を日本として考える(各国との関係は、お互いに自主独立を前提とする互助敦睦に乗っ取ったものは、当然)

 

*根幹となるインフラ計画の方向は、次のとおり。

 

@航空網の整備=この近隣国際・アジア太平洋圏域の総体としての交流を飛躍的に拡大する。日本国内では、福岡、札幌、新潟、那覇などの国際拠点空港の整備を進める。この航空網では、LCCの世界的先進地域となる。

A港湾の戦略的配置、整備=シンガポール、上海、プサンとは違った港湾ネットワークが望ましい。

Bレベルアップして情報・通信網の整備=宇宙開発の推進とマッチするであろう。

Cエネルギー=原子力への次世紀的な国民理解を、このアジア太平洋諸国連合で、深めていくべき。日本が一番、問題?C科学、文化、スポーツをこの国際圏域で重視すべき(産業育成と同様に)。イベント、コンベンション都市の国際圏域展開、などなど。

 

4.新・大東亜共栄圏の制度と組織

 

*先に試論で「21103億人の国土となり、世界の指導国の一つになる」とした。その道筋を、筆者なりに妄想してみよう

 

@道義国家たることを誇りにする(脱少子化・脱過剰福祉の路線)。武力、策謀で勢力拡大を図ることは、今までもなかったし、これからもない。マッキンダー地政学的パワーバランスに基づく国力の振興は国を挙げて行うべきである。

 

A大東亜共同宣言(昭和18.118)の精神を22世紀に向けて日本から発進する。

 

B国連UNと共存する世界組織をアジアから作っていく運動を進める。思想的、文化的(引き続き科学、経済も)なものをアジア、イスラム、アフリカ、南米(非欧米)に学ぶ。

 

C文化、スポーツ、科学、芸術の世界交流を深める。宇宙の共同開発を進める。海洋もまた、共同開発を進める。

 

Dアジア・太平洋の単位で、国土計画を策定する。日本は、サービス機能を量的質的に豊富なものを太平洋・アジア圏域に重点的に供給する。この圏域のなかでホロン的に中央集権と地域分散を両立させる。

 

5.おわりに

 

*吉田松陰「北海道を墾き、琉球を収め、朝鮮を取り、満州、中国を圧し、インドに臨み、以て進取の気勢を張るべし」。これは、非難さるべき国民思想だろうか?「八紘一宇(道義的に天下を家とす)」を東京裁判・清瀬一郎弁護士は「日本固有の道徳であり、侵略思想ではない」とした。

 

*経済、交通、情報通信、文化科学などあらゆる分野が世界化した21世紀から22世紀にかけて、しかし、逆に民族民族の独自の文化・文明が尊重され、互いに競い合う関係が堅持されなければなるまい。

 

*わが国が、現在の人口減少、領土紛争、財政破綻に端的に見られるような民族の存亡の危機的状況を脱するには、それなりにまとまりあげた国民思想、国民精神が必要となっていることを、一日本人として言いたかった。

(以上)

参考1:グランドデザイン2050

  2:太平洋・アジア広域圏の国土計画策定参考図一覧

 

新1.新国土計画と超長期人口計画(天本俊正:平成26年2月

 

新国土計画と超長期人口計画(発展増殖・配置)

(提案メモ)

 

平成26220

NPOジオストラテジー研究機構・会員

天本俊正

 

1.概要

 

 安倍2次内閣は、新国土ビジョンを策定しようとしている(国土交通省)。そこへの提案をしたい。特に国土計画における超長期の人口計画(発展増殖・配置)に焦点を据えて論じたい。

 

 脱少子化の国土計画は、大東亜戦争以前の日本を取り戻すことにより初めて可能である。

 

(注1;私論「日本国の見方」は、文末添付)

 

2.平成の人口政策;道義国家の基礎

 

 ・男は、女を愛し、女は男を愛する。道義の基本のひとつである。自由主義、しかし家族主義で、民族安栄を目指すべき。

 ・子供は、親が自ら責任を持って育てる。教育費が負担、養育にカネがかかる、などとして子供をつくらない主義、主張を社会として許さない。いかに自由主義社会とはいえ、わが国の社会、地域、家族・親族でのモラルとして許さない。「子を作る作らないは、個人の自由」ではない。

 ・民族安栄のため、社会主義、無政府主義、快楽主義、行き過ぎた個人主義などの「浮華放縦の習い」(国民精神作興詔書)を排す風潮を醸し出すべし。

 

 ・人口減を止めさらに積極的に人口増を図る人口政策を、政府としては、強硬に主張、実行すべきである。道徳教育の全世代にわたる実施から、はては避妊具への重課、堕胎の禁止(堕胎はいまでも違法)なども。社会主義ではないので個人の意思に強制はできないが、政策の展開の範囲はひろい。

 

 ・世界の先進国の人口政策は、現状では、誤った政策というべき(民族自殺的な政治誘導)。

 

・昭和161月の閣議決定「人口政策確立要綱」注2の平成版を中央政府の政策として策定する。柱は「婚活国民運動」「家族復活:民法改正」にある。人口計画(発展増殖・配置)を策定する。

 

 ・経済主義だけで出生増を主張するのは、よくない。年金がだめになるからとか、労働力不足とか、ご都合主義をまかり通らせない。「貧乏人の子だくさん」でいい。むしろ「子沢山」が貧乏に通じるというなら、あえて受け入れるべき。

 

(福祉亡国論)

 

 ・社会として道徳を復活する。親孝行を国民に「義務」づける。自由主義のもとで、どう「義務」づけるか? 義務的に考える雰囲気を社会として作る。宗教にもお出ましいただくもよいだろう。教育は子供教育とともに成人、高齢者にもほどこすべき。社員教育、地域教育も行政として行いうるか?

 

 ・子供が多いほど老後は楽、子供がいない少ないは老後に安心感が持てない。社会規範として受け入れるべき。出産奨励、結婚奨励、家族尊重の「婚活」国民運動をおこすべき。最後は、世論一般の責任だが、行政もできる限りのことは積極的にすすめるべき。マスコミも自ら悟るべき。

 

 ・民法を改正すべきである。家制度を部分的にでもとりもどすべき。「男が外で働き女が家庭を守る」の原則を捨て去らない。占領民法を改正し、明治民法を併存でもいいから復活すべき。

 家族、親族の絆を強めるため、家父長、家母長の指導性、親族間扶養義務の範囲の拡大など、明治民法の一部復活などを選択制のなかで認めて行く。

 

 ・「福祉」は、個々人の自立心を失わせる恐れが強く、慎重、抑制的に行うべき。昨今の日本の財政、厚生行政、労働行政は、堕落している、の一語につきる。予算シーリングを「福祉」諸政策に張り巡らせ、シーリング内での福祉・労働担当者の努力を期待せよ。

 現況の過大な福祉予算は、戦前、「臨時軍事特別会計」下の軍事費膨張に匹敵する。今や「臨時過剰福祉是正特別会計」(仮称)を国・地方を通ずる財政制度として設定する必要がある。

 

 ・平成の男女共同参画法は、廃止または180度逆転に改正を急ぐ

 

3.国土計画と人口計画(発展増殖・配置)

 

 ・人口計画(発展増殖・配置)は、国土計画の主要課題である。現在、検討中の「新国土ビジョン」が、疎かにしているのは、遺憾である。東京一極集中の是正は、平成日本の変わらぬ国土計画の課題である。

 

 ・地域での過剰人口は、「移動」を慫慂するは、当然。地域の過少人口にも手立てを講ずるべき。自由主義経済のもとでの工夫に期待する。

 

 ・海外労働力の導入も、国土計画でとりあげるべき。超長期には、国際・国家間の移民も、「個人の選択」「自由」の問題で権利であろう。国家間の相互主義を尊重して、その上での当面のコントロールが政策として許されよう。平成日本では、厳しい条件(日本の国是を承認させるなどの要件)を付して、入国を認めたがいい。当面、日本人の人口減が、続かざるを得ず、労働力を海外に求めるのは、一定程度、望ましいことである。ただ、野放図になるのは欧米の経験に照らしよくない。

 

 ・人口政策の第一線は、地方自治体が任務を負い、指導は国家が責任をもつ。広域調整として、道州制が、都道府県と国との調整機関として設置されなければならない。

行き過ぎた「地方分権」を是正しなければならない。

 

4.日本「2110人口計画(発展増殖・配置)」の天本提案

 

 ジオスト研:平成25.11.16の山本基「企業の海外展開と日本の国づくり」(3)3「新たな大都市圏の創造」の論考は、参考になり考え方に賛同する。筆者なりの一歩すすめた意見を表したい。

 

@3億人の国土

 

100年と言わず50年で、人口均衡に戻し、100年では3億人国土人口を目標にした。「3億人の国土」については、「百華」寄稿小論(平成68月)がある(注4

 

A大都市圏創造の50年後、100年後の国土構成

 

大都市圏創造の50年後、100年後の国土構成は、3000万から7000万の単位の4大都市圏を構想する。

 

1)北日本大都市圏(北海道・東北)

2)関東大都市圏

3)中央大都市圏(北陸、中部、近畿)

4)西日本大都市圏(中四国・九州・沖縄)

 

それぞれの2050(平成62),2110(平成112)の人口目標は、次のとおりである。

 

別表:日本列島・超長期人口計画(発展増殖・配置)

  現在 2050 2110
北日本 1400 2500 8000
関東 4200 4200 8000
中央 4000 4000 8000
西日本 2500 3000 8000

合計

12100

13700

32000

(万人)

 

B施策ごとの人口増加効果の試算

 

 人口増加施策は、原則、昭和161月の閣議決定「人口政策確立要綱」を踏襲するものとする。

 

 1)国民精神の剛健化;現在の軟弱な国民精神の改変には、民主主義のもとでは数十年は軽くかかる。民族の使命に燃えれば、出生増は確実におこる。

 

2)民法改正:家制度を復活し、選択制でいいから、家族の絆の強化を法制度でもバックアップする。家庭裁判所の各種認定基準を、家族結束、出産奨励に変更していく。戸籍制度を活用する。戸籍活用で家族の扶養義務等の認識を強める。過剰福祉を防止し、醇厚な家族主義の社会を創る一助とする。

 

 3)婚活の国民運動を行政でも支援する。地方自治の大きな責務として婚活を制度化すべき。だんだん効果が表れれば、年間50万人分(上記1)+2)+3)の効果)くらいは期待できよう。

 

 4)中絶禁止、避妊抑制は、これは堕胎禁止の現行法制の厳格施行に移るだけで効果は即効である。年間20万人の生まれるべき子が、殺されている。避妊製品に重消費税を課す新制度を35年内くらいで成立させる。避妊回避もふくめ年間40万人の出生増を見込む。

 

 

 5)女性の就労/就学形態を、大幅に変える。男性本位の勤労・就学体系とは別に女性本位の制度を導入する。出産を終えた年代の女性の就労/就学を容易かつ有意義なものにすることにより、若い女性の結婚促進、出産意欲の向上につながる。年間10万人出生増の効果を期待する。

 

 なお、今、左翼的勢力が狙っている女性援助(就労、幼児、介護援助)の多くは、逆効果である。女性を甘やかせ、一層、家族形成をしり込みする言い訳になっている。財政負担も、過大になってくる。

 

 6)税制で、家族給制度、扶養手当などの制度は、拡充すべき。ただし、子供手当は、子供を育てる親の責務を蔑(ないがしろ)にするもので、やめるべき。子供は親が責任を以て育てる意識を社会が奪ったり、薄めたりしてはいけない。

 

 7)「昭和16年人口政策確立要綱」にない項目を2つ追加する。現在の過剰福祉予算の計画的削減により、国民の家族・地域・職域の助け合い精神は各段に厚くなり、若い女性の嬉々として出産に臨む意欲は倍増する。効果は、年間50万人出生増にも相当する。

 

赤字国債の発行は、不要となり、国民の鬱陶しい気分は一掃されるが、その効果の計測は、おまけにしておこう。

 

 8)新人口政策は、新生活運動の対象を宗教活動にまで広げる。宗教・政治の分離は、近代社会の社会規範になっているが、人口増は、政治から宗教への働きかけがなくては、実現しない。我が国での宗教心の一般的な高まりがこれによって引き起こされるならば、「醇厚中正を帰す」道義国家を期待できる。道義国家が人口衰退を見ることはありえない。

 

以上のような政策を、国、地方、企業、地域で徹底させていけば、おおむね年間100万人の新生児のペースを、10年で200万、30年で300万、50年で500万(いずれも年間出生数)に増やしていくことができる。これで2110年に3億人の国土は可能である。ただ、天本主張は、3億人国土の最後の1億人は、アジアなどからの移民によることも考えられる、とする。

 

C地域間の人口移動とこれを支える地域政策の展開

 

 民主主義国家では、移動・居住の自由は、保証されなければならない。しかし、まったく自由に任せていては、経済法則は、人口配置を国土の観点から望ましくない方向に実現してしまう。自由主義に矛盾しない賢い産業政策、地域政策、社会政策を必要とする。

 

 山本基の「新たな大都市圏の創造」(平成25.11.16)は、関東、近畿、中部の人口抑制とそのほかの地域での人口増加が、西暦2110年に、わが国の人口水準を回復、バランスさせる政策展開を主張している。結論は、賛成だが、具体の政策手段には触れていない。筆者なりの提案を項目だけでも提示する。

 

 1)創造される地方大都市圏(つまり非既存大都市圏)の生産生活両面のインフラの魅力が、おのずと人口移動を引き起こすような整備の内容を考え出す。単に既存大都市圏の投資抑制、創造大都市圏への投資偏重というのでは、フェアでない。

 

 地方創造大都市圏での生産基盤投資として

@コンテンツ・データバンク投資

A光ネットワーク重点整備

B情報研究教育機関の重点整備

C宇宙・海洋開発、素粒子物理などの大型実験研究施設の整備

D既存大都市圏の水準を上回る高質の文化施設、自然リゾート施設の整備などがあげられる。

 

 2)全国観点からの公共投資の戦略的プロジェクトを新たに考え出す必要がある。明治に高等教育機関の全国配置を戦略的に整備したがごとく、21世紀戦略プロジェクトを地方・創造大都市圏に優先することは、全国的効率などからみても許される。行き過ぎた「地方分権」は、エゴの張り合いであれば、許されない。

 

 3)地方での出生増を国家政策として優先的に行うには、女性に対するイメージ・ソフト戦略が、もっとも重要であろう。

日本民族は、色彩感覚、デザイン感覚で世界の他の民族特性を凌駕している。地方に国営のデザイン世界大学を34か所設置するなどは、どうだろうか。財源は、福祉削減からの十分に出てくる。

 

地方の生活条件として家族形成に特段に発酵要素を持つものを考え出す。

 

4)国防インフラの各種整備は、地方を重点に行なう。中国(北朝鮮含む)ロシアの軍事的脅威に備えるには、東北・北海道、九州・沖縄・中四国が防衛拠点になる。

 

5)そのほか、思いつくことはどんどん提案、採用していこう。これこそ「ホロン社会」への移行だろう(もう清貧ファッシヨには、こりこりだ)

 

5.おわりに

 

おそらく2110年ころは、「太陽系宇宙の大航海時代」になっていよう。あまり真剣に先を予測するには、限りがある。SF物語でなく、目の前の国民政治の課題をしっかり見据える必要があるのだ。

「敷島の大和の国は神代より女ならでは夜の明けぬ国」で、平成日本でも女性性、婦人層の踏ん張り、自覚こそ求められている。

(以上)

 

 

 

注:1.@日本国の規定

 ・天皇を元首とする立憲民主主義国家である。

 ・日本の歴史、伝統、慣習、文化を尊重し、民族が「心ひとつ」にまとまることを国柄(国体、国本)とする。

 ・自由と私有財産を守る(社会主義、無政府主義などの軽佻危戟の風を排す)

 ・明治以来「文明国家」の建設に国民あげて努力してきた。大東亜戦争は、西欧に抑圧されないための独立運動であり、「東亜解放」の民族使命に基づくもので、「侵略戦争」では断じてなく、手段も「ことむけやわす」(言向け平和す)であった(東京裁判史観の否定)。

 ・大正1211月「国民精神作興詔書」により、明治に次ぐ近代日本の方向が国民に示された。不幸にして大東亜戦争の敗北に連なった。目的、手段は、正しかった。敗戦で押し付けられた西欧思想が世界的に衰退思想になっているとき、日本は、民族の歩んできた道に戻り、道を踏み直す覚悟が必要となっている。

A国民、国民規範

 ・よく働き、よく育て、よく産む。子孫を育むに必要な食糧、エネルギー、インフラを確保するにぬかりはない。必要な行動(アクション)に民族をあげて挑戦する。歴史、伝統、慣習、文化を尊重するが、陋習にとらわれ、自ら、いたずらな制限、制約、限度を設定し、縮こまることをしない。例えば、原子力の開発にはとことん追求;日本民族使命は、人種差別撤廃の次は、「科学、宇宙、文化」であろう。決して「経済成長」「世界制覇」などにあらず。

 

注2 人口政策確立要綱=昭和16.1.22閣議決定(別添1)

注3 山本基「大都市圏の創造」平成25.11.26(別添2)

注4.「3億人の国土」:東京並の密度の居住で国土の自然・農地など保全しながら3億人が日本国土に住める。(別添3)

 

 

 

新2.新国土計画と脱・福祉亡国(天本俊正:26年4月) 

 

国土計画における福祉政策の位置づけの考察

(試論)

平成2645

天本俊正

1.概論

 

福祉予算は、戦前の軍事予算のように国家予算の過半を占める横暴ぶりである。これを国土計画の観点から正常化せざるべからず。考える道筋を提案して諸賢の批判を仰ぎたい。

 

2.福祉財政の膨張の実態

 

 ・社会保障給付費(平成23年度)で107兆円、GNP500兆円の22.7%をしめている。医療34兆円、年金53兆円、福祉その他20兆円(うち生活保護4兆円)。高齢化とともに際限なく膨張の傾向にある。

 ・財政から見ると社会保障は27兆円、税収が42兆円、国債等の借金44兆円。つまり、社会保障は、放蕩三昧。国家財政を破綻させている。

 

 ・福祉膨張は、この「失われた20年」の期間に急膨張している。ほぼ50年前、公共事業費6200億円に対し社会保障は5000億円であった。今やこの比較は、5兆円と29兆円(平成25)になっている。土建政治と言われた田中角栄が「福祉元年」(昭和48=5万円皆年金、高齢医療無料)を作ったのも皮肉なものである。

 

3.国土計画の「逆襲」

 

 国家財政の事実上の破たんの中では、尋常な国土計画は立ち行かぬし、むしろ、国家財政の救済策として福祉退治の国土計画が望まれている。

 

3−1.国土計画の範疇

 

 昭和159月の国土計画設定要綱(閣議決定)は、日満支を対象にする気宇壮大なものである。満州国と中華民国と提携することを前提としている。産業政策のみならず国防から人口政策まで幅広い。当然、国内政治の統治の一環として福祉も含める。

 

3−2.小牧實繁の国土計画

 

 小牧實繁は、国土計画の草創期の戦前、昭和157月にいう。「国土を総括的、統括的に秩序づけ、人的資源と経済的資源とを、正しき場所に、正しき目的のために、正しき形において配置すること」これが国土計画であるとする。

 いわば、万能であり、現代においていえば、ソフトの政策、福祉の政策をここに対象とすることになんら不思議はない。

 

3−3.現行・国土形成計画における福祉

 

 例えば、「労働力の不足や社会保障給付の増加が見込まれる中、市街地の荒廃、公共サービスの低下など諸問題を懸念」と「都市圏の形成」の項目で指摘している。医療、福祉、教育等の都市機能を維持していくための対応が必要なことを指摘している。

 

3−4.国土計画からみた福祉政策の正しいあり方

 

 国土計画は、国民がおのおの自立し、そのうえで国家としてのまとまり秩序を保つことを自明の論理とする。したがって、社会なり政府なりが個人の自主性を乗り越えて過剰な助力を講ずることは、適切でないとする。

 

以下、国土計画から見て、現行福祉政策の評価できるもの、評価できないものを羅列して検討の対象としていきたい。

 

@生活保護  原則、全廃すべきであろう。

 

 ・現状=受給者215万人(159万世帯)最多;大阪市12万世帯(平成25

 不正受給、就労支援などが言われるようになり、制度の見直しが始まった。現行制度でも、余裕ができたときの受給金の返還、親族間の助け合いの徹底など改善すべき点は,多い。

 

改善策としては、貸与制度に切り替える、扶養親族の義務履行などの抜本策をとるべきだし、予算にはシーリングを各所において、給付の削減につとめるべき。労働政策との共生を図ること。生活改善のため福祉当局から紹介・斡旋された就労機会は、いかに通勤等の条件がきつくとも、遠距離であろうとも断ることはできないこととし、一方、福祉当局もアフターケアに責任をもつこと。支給停止は、受給者の責任とすること。各地方公共団体(福祉当局)は、与えられた生活保護の総額の中で、地域として最大効果がもたらされるように、給付配分に責任をもつこと。

 

・「地方分権」は、その責任逃れの言い訳になっている。国からの責任追及を逃れ、福祉補助金を野放図に引き出しているのが、この10年余の制度のたるみである。都道府県・市の福祉事務所、ケースワーカーが、「甘い」認識に立つのは許せない。ここに、行政としては「道徳教育」を徹底すべきだろう。

 

 

憲法25条の「最低限生活の権利」は、自立・自由国民の考え方からいって間違っている。「かの道路に迷い、飢餓に陥り、家を破り、身を失うの徒は畢竟、不学によるなり」(明治5・学制)

 

A年金  原則、民営化すべきであろう。

 

年金への財政負担は、最大の福祉コストになっている。老後のために個人個人がたくわえを持ち、その民間金融の制度の一つが、民営年金であることは何らかまわない。その制度の保証機関として公的組織が当たるのは、「信用」が社会と国家権力によって作られ保証されるのだから、一定程度いい。逆にそれは、「保証料」として財政にとっては、収入源になってしかるべき。財政負担になるものではない。(注)平成24.3「ああ、日本」で山本基は、国による社会保険制度の廃止を主張している。

 

以下、年金の現況と見通し、課題をのべる。

 

A−1 公的年金の現状と見通し

 

a. 種類=厚生年金、共済年金、国民年金(保険料月1.5万、納付率59%)

b. 支払額50兆円、保険料30兆円、国支出11兆円、不足7兆円(運用益・積立金取り崩し)(平成24年度)(注)8割方は民間自力で動かしている巨大な制度で、民営化は無理でない。検討されないのは謀略的)

c. 積立金管理法人GPIF130兆円(国内債券株式72%、外国26%)

 

A−2 公的年金の課題つれづれ

 

1)国・地方の公務員の共済年金は、雇用者と被雇用者の関係であって、民間年金と考え方は同じ。国民年金も、地方公共団体が、住民のために金融機関としてやればいいこと(国民に一律、加入強制をかけているのは行き過ぎ)。

 

2)公的年金の給付水準「現役収入の5割」を法律保証しているのは明らかに国の過剰介入である。民営化で、自分の選択で、掛け金も給付金も自分の選択で設定できるがいい。

 

3)民営化への道―段々に準公営化に切り替えていき、年金の運営主体が、それぞれ自己責任(加入者も自己責任)の度合いを増やしていくべき。これまで年金が苦しくなるのに従って統合の方向へ進んできたのは誤り。分化の方向で、民営化へ進むべき。

 

4)現行のように年金があまりに財政負担に頼りすぎる結果、年金財政の破たんを国民が許されないようになっている。ギリシャ化なり。

 

A−3 年金変革

 

 厚生年金、国民年金は、西暦2038-2040(25年前後あと)で積立金は枯渇と言われている。これは、毎年1020兆円もの財政負担を前提にしてのことである。財政負担をゼロにすれば、129兆円の積立金は、67年で枯渇する。

 

将来の運用益で無理な「高利回り」を計上して、「100年安心」と言ってい

るが、無責任な財政負担の継続と、あわよくば50%税率の消費税をねらっている。この変革は既存政党では無理、新生政党がいるだろう。

 

 「危機」を国民に知らせていない。大罪である。人口構造が、現状のような少子化を脱しないならば、社会は成り立たないし、年金も当然成り立たない。

 

 

B医療保険  国民皆保険の根幹は残すにしても対象を限定すべきである。

 

 国民皆健康保険を大事とするなら、年金、介護、失業保険などは、2次的なものに格下げの位置づけをはっきりさせること。健康保険の考え方を、今の高齢者優先から子供、働く若者、家族を形成する主婦、稼ぎ手保護を重点とするもの変えること。「貴壮賤老」を脱少子化の福祉政策の基本の考えにすべき。

 

健康保険の支払基準で、重症・難病と日常的軽症の病態とは、援助率を明確にわけるべき。例えば、風邪程度は、全額自己負担で診療を受けるべきだし,前述の世代層、勤労形態別などにも区分を付けるべきだろう。健康保険組合のそれぞれの考え方に任せるのもあろう。

 

胃ろうについては、保険対象から原則外すべき。

 

 

 

C失業保険  原則、民営化すべきであろう。

                                                                                                  

以上これらを実施することにより、現行30兆円の社会保障・国家予算は10兆円に減少させることができ、赤字国債の発行は不要となる。

 

4.国土計画と福祉

 

41  福祉亡国

 

 現在の福祉は、異常に巨大化したもの。この20年間に、福祉予算を野放しにした前の自民党政治(小泉・竹中路線)、民主党政治の責任は重い。財務省、厚労省の無責任、無能ぶりも決定的。国民の精神もおかしなものにした。脱少子化の国土計画は、国民精神を健全、剛健なものにするところから始めなければなるまい。傲慢福祉の鬼退治が、必要になっている。

 

国民道徳で、「親孝行」を最優先にするよう、道徳教育、国民教育で中央政府は、地方政府等を使って、慫慂すること。社会主義ではないので個人の意思に強制はできないが、慫慂、促進、優遇などは、断固、行政は信念をもって実行すべき。

 

世界の指導思想として西欧文明が、芯から腐りかけていることも忘れてはならない。西欧先進国、新興工業国を襲う少子化は、そのもっとも明確な証左である。日本の伝統的な政治思想は、聖徳太子から、互助互譲の和の精神である。大東亜戦争も、「ことむけやわす」の海外展開であった。多文化共生の文明の考え方であり、その限りで「八紘一宇」も侵略戦争の要素はない。

(もちろん、完全無欠などありえなかったが・・・)

 

昭和15年の国土計画設定要綱が示しているように、東亜共栄圏(今は、他に適切なカテゴリーを見出すべき)を発展させるには、産業・交通・文化等の施設と並んで「人口」の計画が、民族精神の高揚を基本として確立、実行されなければならない。平成日本では、醜悪な膨張した福祉退治が、もっとも喫緊の国土計画の課題であろう。

 

42.福祉政策と地方自治

 

福祉の実施主体は、地方公共団体である。生活保護、年金、戸籍、健康保険、介護、失業保険などなど、すべては地方公共団体(市町村)が、自治行政の中で、総合的に、効率的に、実態に即して、対応していかなければならない。この20年間ほどの「地方分権」の思いあがった勝手気ままな地方の主張は、怠慢を増長するためになされてきた。猛省と「改革」を促したい。

 

道州制は、今や傲慢福祉退治の先兵にならねばならぬ。国=道州=都道府県(知事公選)=市区町村(公選の長)のはっきりした国地方の統治体制で、この業病退治に国を挙げて臨まなければ、日本再生はない。

 

都道府県・市区町村の第一線での福祉事務所・社会福祉主事と民間の社会福祉士(現在、全国で17万人)の体制の強化が、過剰福祉予算の削減、行政正常化に必要である。そこで従事する人たちの道徳観、社会観を真っ当な形にするが、国の政治、本省、道州の指導的立場であろう。

 

5.まとめ

 

 健全な福祉政策をもつ「強い日本」を作るのは、国土計画の根幹的任務である。なにも軍事的に強い、経済的に強い国土ばかりが、国土計画の目的ではない。

 

以上

 

参考

国土計画設定要綱

収載資料:昭和社会経済史料集成 第11巻 大久保達正(他) 大東文化大学東洋研究所 1980.3 pp.169-172 当館請求記号:GB631-37
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                                国土計画設定要綱
                                                                昭和15年9月24日 閣議決定

第一、国土計画設定ノ趣旨


肇国ノ理想ニ基キ、時勢ノ進運ニ対処シテ新東亜建設ノ聖業ヲ完遂スル為ニハ、東亜諸邦ヲ対象トスル結合的経営計画ヲ樹立シ、之ヲ基準トシテ国力ノ飛躍的増強ヲ図ルノ要緊切ナルモノアリ。
即チ日満支ヲ通ズル国防国家態勢ノ強化ヲ図ルヲ目標トシテ国土計画ノ制ヲ定メ、地域的ニハ満支ヲモ含メ、時間的ニハ国家百年ノ将来ヲモ稽ヘ、産業、交通、文化等ノ諸般ノ施設及人口ノ配分計画ヲ土地トノ関連ニ於テ結合的ニ合目的々ニ構成シ、以テ国土ノ総合的保全利用開発ノ計画ヲ樹立シ、一貫セル指導方針ノ下ニ時局下諸般ノ政策ノ統制的推進ヲ図ラントス

第二、計画ノ種別並運用


一、日満支計画
日満支三国ヲ通ズル国土ノ総合的利用開発ノ計画ニシテ其各国ヲ以テ各単位地域トシ、之ニ対スル人ト施設トノ合理的配分方針ヲ策定スルモノトス
日満支計画ハ関係各国ノ行フ国土計画的事業策定ノ基準タルベキモノニシテ、皇国ニ関シテハ中央計画策定ノ基準タルモノトス
二、中央計画
中央計画ハ内外地全般ヲ対象トスル計画ニシテ、日満支計画ヲ基準トシテ策定ヲ図ルモノトシ、内外地各地方ノ特性ヲ発揮セシメ国家的見地ヨリスル国土ノ総合的利用開発ノ計画ヲ樹立スルモノトス
中央計画ハ各庁所管行政ノ基準トナリテ運用セラルベク、内地ニ於ケル各単位地域別地方計画及外地ニ於ケル開発計画策定ノ基準トナルノ外各庁所管ノ事業トシテ直接実施セラルベキモノトス

第三、策定要領


一、国土計画ニ関スル調査、研究、立案ハ本計画設定ノ趣旨ニ鑑ミ国家ノ総合国防力ノ増強ヲ図ルノ見地ヨリ常ニ発展的ニ統一的ニ之ヲ行フモノトス
二、計画立案ハ一定ノ目標時期ヲ定メ、日、満、支、南洋ヲ含ム東亜共栄圏ノ確立ヲ図ルヲ目標トシテ之ヲ企画スルモノトス
三、計画ニ当リテハ国土ノ愛護保全ヲ旨トシ、総合的交通計画、総合的動力計画トノ有機的関連ニ於テ産業及人口ノ統制的配分ヲ図ルニ重点ヲ置キ、常ニ防空上ノ考慮ヲ重視スルモノトス
四、経済ニ関スル計画ニ付テハ東亜共栄圏内ニ於ケル資源ノ開発、保全、涵養ニ依ル必要物資ノ確保ト其適正ナル交流配分ヲ図リ、併セテ国際経済ニ於ケル優位ノ獲得ニ努ムルヲ以テ目的トス
五、人口ニ関スル計画ニ付テハ人口ノ量的質的増強ト之ガ地域的職能的ノ適正ナル配分ヲ図ルヲ以テ目的トス
六、基礎調査ハ各庁ノ調査ヲ統合シ、民間ノ協力ヲ得テ内外ニ亘ル関係資料ノ整備ヲ図ルモノトス


第四、主要策定事項


一、日満支経済配分計画


二、工鉱業配分計画
イ、重化学工業ノ業種別配分計画
ロ、軽工業ノ業種別配分計画
ハ、工業地帯配分計画
ニ、鉱産資源開発計画


三、農林畜水産業配分計画
イ、農業計画
ロ、林野計画
ハ、水産計画


四、総合的交通計画
イ、内外地交通通信整備計画
ロ、東亜交通通信整備計画


五、総合的動力計画(燃料ヲ含ム)


六、総合的治山治水及利水計画


七、総合的人口配分計画
イ、都市配置ニ関スル計画
ロ、職能別人口配分計画
ハ、地域別人口配分計画
ニ、総合的移民計画


八、文化厚生施設ノ配分計画


九、単位地域別計画ノ基本方針

第五、事務所ノ機構並其運用


一、国土計画ハ内閣総理大臣ノ主管トシ、其事務ハ企画院ヲシテ掌ラシム
二、内閣ニ官制ニ依ル国土計画委員会ヲ設置シ、国土計画ノ策定並運用ニ関スル諮問機関タラシムルコト
三、各庁ハ国土計画ノ策定ニ参画シ、其所管ニ従ヒ、計画ノ内容タル事項ノ調査、計画、実施ヲ掌ル
内閣総理大臣ハ各庁ノ行フ事業ニ付国土計画ノ運用上必要ナル統轄ヲ行フコトヲ得ルモノトスルコト
地方計画ニ付テモ内閣ニ於テ之ヲ統制ス
四、各庁ニ設置セラレアル各種会議、調査会、委員会等ハ必要ニ応ジ国土計画委員会ト密接ナル連絡ヲ保持スベキモノトシ、之ガ連絡ノ方法ニ付テハ別途考慮スルモノトス
五、日満支計画ニ関スル満支両国トノ連絡ハ各関係所管庁ヲ通ジテ之ヲ行フ
六、中央計画ノ外地ニ於ケル実施ハ一般的ニ各外地官庁ノ所管トシ拓務省(関東州ニ付テハ対満事務局)之ヲ統制ス

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参考

基本国策要綱・国土計画設定要綱・人口政策確立要綱の概要

平成2645

天本俊正

1.基本国策要綱(昭和15.7.26

 

 皇国の国是は、八紘を一宇とする肇国の大精神に基づき、世界の平和を招来するを以て根本とし、日満支の強固な結合を根幹とする大東亜の新秩序を建設するにあり

 

2.国土計画設定要綱(昭和15.9.24

 

 日満支を通ずる国防国家態勢を強化するを目標として国土計画の制を定め、(地域的には)満支を含め、(時間的には)国家百年の将来をかんがえ、産業・交通・文化等の各般の施設および人口の配分計画を、土地との関連において、結合的、合目的的に構成し、もって国土の総合的・保全利用・開発の計画を樹立し、一貫する指導、指針のもとに、時局下、各般の政策の統制的推進を図るものとす

 

3.人口政策確立要綱(昭和16.1.22

 

 (皇国の使命の)達成のため、人口政策を確立し、@わが国人口の急激にして永続的な増殖発展と、Aその資質の飛躍的な向上を図るとともに、B東亜における指導力を確保するため、その配置を適正にすること、特に喫緊の要務なり。

 

 右、目的を達成するためとるべき方策は、左の精神を確立することを旨として、これを基本として計画す

 

1.永遠に発展すべき民族たることを自覚すること

2.個人を基礎とする世界観を排し、家と民族とを基礎とする世界観を確立徹底すること

3.東亜共栄圏を確立発展する指導者たるの矜持と責務を自覚すること

4.皇国の使命達成は、内国人人口の量的質的の飛躍的発展を基本条件とするの認識を徹底すること、

  以上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11.国土交通省の現場事務の執行体制の変革について(天本俊正:平成24年12月)

国土交通省の現場事務の執行体制の変革について

 

平成24128

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

1.はじめに

 

 国土交通省(旧建設省の分野)は、道路河川ダムなど直轄施工部門をもち、地方整備局・道路河川事務所を全国に展開している。定員削減に対応して公益法人(建設弘済会・協会)を活用していたが、民営化の変革が進んでいる。

公共事業の執行体制、建設業の在り方に影響を与える。

 

2.実態:直轄の現場の執行体制

 

2―1.国土交通省(地方整備局)の職員の数と構成

 

 国土交通省(旧建設省)は、昭和30年代に全体で約3.5万人、地方建設局で3万2600人の職員を抱えていたが、数次の定員削減計画を経て、平成24年度には2万600人程度まで減少している。第12次定員削減計画(平成22-26)も10%削減を計画している。国際水準の公務員数からみて非現実的だ。

 公共事業バッシングもあり、地方整備局は、アウトソーシングを定着、漸増させて、公共施設の維持改善を続けていくことになろう。                                            

 

22建設弘済会等の状況

 

 地方整備局では、行政補助と称して発注者支援(積算、技術審査、工事監督)、公物管理、用地補償をアウトソーシングした。建設弘済会等と民間コンサル(施工管理)で請け負ってきた(750億円、5000人程度=平成20年度ピーク)。

 道路公団改革で、建設弘済会等についても非公益法人化の見直しが迫られた(平成20年度)。公益法人改革とも重なって建設弘済会等は、全面的に民間への事業譲渡をすることになった(平成25年度以降3年間の間)。

参考図=別添

 

23.発注者支援業務の変革の背景

 

・行政改革の一環として定員削減が硬直的に行われてきており、業務をカバーするためアウトソーシングの流れが大きくなってきた。管理の責任の取り方、業務の効率化など問題を抱えたまま、政治的な圧力もあり、地方整備局は、しぶしぶ受け入れてきている。職員の再就職問題(定年延長)も絡んでいる。

 

・国各省を通じて非正規公務員の増加もある。「正規公務員は職場を転々するが、非正規は、契約更新で継続勤務し仕事内容に精通する。国家公務員の2割、7万人が非常勤である」(上林陽治)。国交省の場合、業務委託だが、継続勤務し仕事内容に精通では同じ。ホロン時代としては、必然である。

 

3.今後の動き:課題

 

 道路・河川ダムのおおむねの事業は、とくに新設改築を中心に概成してきて、今の地方整備局−事務所(工事)の体制の維持は難しくなってきている。

 そこに出先機関の地方機関への移転、さらに道州制につながる問題点がある。

 

 たとえば、雲仙復興事務所は、砂防が終わり、地元の要望で道路の代行施工をしているが、それも終わる。これが、環境省、経済産業省、農林省などの出先として統合化できれば、雲仙国立公園の整備、有明海の大干拓などにも技術者を結集できるはず。役人のセクト主義が、組織を硬直化させている。

 アウトソーシングを追及すれば、より広く民間の優秀な力を期待できる。

 

4.おわりに

 

4−1.国土計画のビジョンとしては、@道義国家での出生増A科学・技術・文化の振興B国防強化が重要だが、これが思いに任せない時期の下り坂の国運を支えるのは、公共インフラの維持・確保である。笹子トンネル事故への対応、自民党の200兆円・国土強靭計画も当面の課題としては、大事である。現場事務・事業体制のホロン化、ネットワーク化をすすめるべきである。

4−2.国土計画の事業調査費は、従来、事業の測量試験費から捻ねり出されていたが、今後は、維持修繕の民営化の委託費の一般管理費から捻ねり出すべきか。「平成の世直し」には、民間・公共、ソフト・ハードを通じて「国土の長期計画」が必要で、そのための調査費は、国家のすべての予算に優先すべきである。

(以上)

 

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8.道義国家の作り方(天本俊正:平成24年10月)

 

「道義国家」の作り方:試論

 

平成24106

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

 

1.はじめに

 

 出生率は依然として低い。西欧、新興アジア諸国(シンガポール、韓国、台湾)でも低い。中国は、一人っ子政策という特有の理由があり低い。世界全体では、人口増は、まだ激しい。諸外国はどうでもいい。日本民族が幸福かどうか。民族としての「繁殖率」が低い。動物の本能として健全なわけがない。

 

 軍人勅諭にいう。兵力の消長は国運の盛衰なり。国力のもとは、人口なのだ。一定の経済成長を得た後は、人口の水準維持は、決定的に国力を規定する。国民の個々の幸福も規定する。

 

 21世紀初頭の今、国土計画は、「人口増」を政策課題にあげなければならない。子供を産む・産まないは、個人の自由ではない。民族としての歴史と伝統、慣習の中に「知恵」が組み込まれてきている。外国から輸入できない。

 戦後のベビーブームを再現する道はあるか。日本民族の独自の精神構造の中からしか回復剤は見いだせないであろう。それを聖徳太子の憲法から教育勅語、終戦詔書までのなかでフォローしてみたい。民族維持、種族維持の種を忍び込ませていない道徳律など、なんの用に立つべきか。

 

2.戦前日本の人口政策、戦後ベビーブーム

 

昭和161月閣議決定の「人口政策確立要綱」(別添:参考1)がある。8000万人の人口を昭和30年までに1億人にする目標(1夫婦5人出生)である。避妊、堕胎の禁止、雇用条件、税制などの他、「永遠に発展すべき民族の自覚」「家と民族を基礎とする世界観」が、社会思想として推奨されている。

 

2次世界大戦後の日本も含めての圧倒的なベビーブームの要因は、凄惨な殺戮の終結からくる本能的なものなのか。そのチャンスは人為的には作れない。それぞれの民族が独自に民族維持・繁殖の社会思想を社会の中で創造していく努力しかない。「近・現代は、物質の再生産体制の増強には成功したが、人間社会における家族の問題・次世代の再生産(人口のコントロール)は、枠組みが構築されていない」(竹内啓=東大・統計学)といえよう。答えは、民族の歴史・伝統の中にしか、見出し得ないのでないか?

 

 

3.古代日本の国家道徳:近代日本の国家道徳

 

山上憶良は、「白銀も黄金も玉もなむせんに子に勝る宝しかめやも」と詠んだ。

 

聖徳太子の17条憲法(604)は、仏教、儒教の道徳思想に基づいた我が国最初の成文法である。天皇への忠誠などと並んで「百姓」の礼、物事を決めるに論争の必要などを挙げていて、日本民主主義(立憲君主の下)の根底を作っている。

 

明治(正確には慶応年間)の5か条のご誓文に通じている「広く会議を起こし万機公論に決すべし」「官武一途庶民に至るまで各々その志を遂げ人心をして倦まざらしめん事を要す」など。ただ、この国民道徳が人口増加に結び付いたかといえば、中世の時代には「間引き」などがおき、生産力不足を補えなかった。

 

 

4.明治の3大勅語=軍人勅諭、教育勅語、戊申詔書(勤倹勅語)と終戦詔書

 

 教育勅語は、近代日本の国民道徳の形成に多大の役割を果たしたが、一つは家族主義であること、勤労精神を叩き込んだこと、国家への奉仕の心を植え付けたことに特色があろう(明治23)。一方、軍人勅諭(明治14)は富国強兵の精神を培ったが、あわせて「兵力の伸長は国運の盛衰」と強い日本人を求めた。人口は、昭和に入り軍国主義的風潮に必ずしも人口増は結び付かず、外国出兵は出生率停滞をもたらしていた。勤労精神に関しては、日露戦争直後の経済的危機を乗り越えるため勤倹勅語と言われる戊申詔書(明治41)が、自彊已まざるべし、などを含み、国民を叱咤激励した。

 

 敗戦になり終戦詔書(昭和20)は、「固く神州の不滅を信じ、道義を厚く、志操を固くして」総力を将来の建設に結集するよう、呼び掛けた。戦後の高度経済成長の無意識下の励ましになっていたのであろう。昨今の「失われた平成20年」への反省でよく聞くようになった「心ひとつ」は、日本民族が危機に遭遇した時の合言葉である。

 

最近の道徳項目と「勅語」との比較

 

*最近、某出版社広告が挙げた徳目=勤勉、正直、親切、謙虚、素直、感謝

*軍人勅語=忠節、礼儀、武勇、信義、質素

*教育勅語=父母孝、兄弟に友、夫婦和、朋友の信、恭倹、博愛、義勇、奉公

*終戦勅語=挙国一家、神州不滅、総力を建設に傾注、道義、志操、国体精華

 

5.明治民法と戦後民法、最近の国民精神と国民運動

 

明治民法と戦後民法

 

家制度を否定した戦後民法が、戦後が深まるにつれ家族形成に及ぼした負の影響は段々に大きくなってきた。非婚、晩婚の原因であろう。もう一度、家制度(別添:参考2)に戻すことができるだろうか?

ここで、国土計画が出てくる。戦後、民族移動にも匹敵するといわれた人口の都市集中がある。都市に出てきた若者は、みな「故郷喪失」(ハイマートロス)になっている。端的に困っているのが、墓地の問題だ。介護の問題も深刻だ。これに少しでも解決の光を与えうるのは、家制度の復活ではなかろうか?

家制度には、家督権がある。家族の構成員の生活を保障するのは、家長の責任である。人口の都市集中でバラバラになった家族も居住地を飛び越えて、家長の監督のものにある家制度で、生活の規律を構成していくことが出来よう。例えば、田舎の墓と都市居住家族は、家制度を通じてむすびつきをなくさない。それを財産制度で、民法上も税制上も慣習上も尊重していく。娘の結婚は親が責任を持ってみる。

いや、戦後民法がいいという人も多いであろう。明治民法も戦後民法も併存させるべきであろう。「3代戸籍」の復活からはじめる手もあろう。イスラムでは、宗派ごとに家庭裁判所が違うという世間知恵が社会化しているとか。我が国も習っていいだろう。

国土計画は、マルチハビテーションをある面、推奨しているが、法的な家族制度の多様性の裏付けもかなえてやるべきである。

 

 ここで、出生率減への警告の論調をいくつか挙げれば、

 

@アメリカ・右翼政治家のパトリック・ブキャナンは、「病めるアメリカ、滅びゆく西洋」で、マルクス主義フランクフルト派が、女性の出産忌避の思想を社会に浸透させているとする。産児制限のマーガッレト・サンガーは、フェミニズムの流れに乗った。「自由社会は、女性に出産は強制できないが、子供を増やす社会貢献に報いて奨励はできる」とする。

A日本の右翼論客:中川八洋、渡部昇一は、「出生率4.0を目標にしろ」という。反共・民族主義の流れから出てきている。

B宗教は、カトリックのローマ法王は、堕胎禁止を主張する。日本の生長の家にもこの考え続いている。イスラム原理主義がある。ヒンズーはカースト維持による。途上国も、経済成長あれば低出生率になるという予測が、成り立つか。

 

最近の国民精神と国民運動

 

日本民族のデモグラフィック(人口統計学)な衰退への危機感もないし、国民運動もいまのところ前兆もみられない。

 

天皇の制度をうどう変えるかに国民の関心は高い。日本を滅ぼすために天皇制改悪に走る勢力が一部あることは否定できないが、逆に天皇を日本民族の統一の柱とする強い国民的・民族的合意が圧倒的にある。天皇家の在り方も、近視眼的に見るのでなく、天皇家そのもののご繁栄、皇室の基礎を、13宮家の復活、財政的基盤の復活など、総合的に行うことが、国民の意識を変え、ひいては、出生率の向上、民族の人口増にも好影響を与えよう。

 

6.国土計画への組み込み

 

@日本の今後の国土計画の第1項目には、「人口政策・道義国家」を掲げること。下地として新・日本民族主義の思想を広めること(政治の役割)。男女共同参画法を廃止すること。福祉削減・軍備増強で財政再建を実現すべし。例えば、3代戸籍の復活は、福祉予算の削減につながる。

 

A国土計画の新思想として「心ひとつの国土・国民」(ソフトの均衡国土)をいうべき。これは、情報産業時代の国土(ホロン)のバックボーンである。農村的都市と都市的農村の全国土的共存である。ある意味、分散政策となろう。

 

Bそうはいっても、人口増に食糧確保・環境保全が必要は変わらぬ原則(増殖にはエサ・生存条件がポイント)だが、その実現は、科学技術の振興、物質の生産能力増、ロジスティック、環境保全が、グローバルな、あるいは宇宙的に計画課題として継続する。SF的になるが、近将来の宇宙進出には「空気」の製造、移送がいる。

 

(注)心ひとつのことば=聖徳太子「衆とともに論(あげつら)う」、軍人勅諭「朕と一つ心になりて」、教育勅語「億兆心を一にして美をなせる」戊申「上下心一に」終戦「挙国一家、子孫に相伝え」

 

(以上)

 

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ああ、日本

9.ああ、日本(山本基:平成24年3月)

 

ああ、日本

山本 基


1.二度の発展に学ぶ

2.肩車とおんぶ

3.国民の力を活かす

 


1.二度の発展に学ぶ

日本は、近代国家になってから二度大きな発展をとげた。一度は明治維新後であり、もう一度は第二次世界大戦後である。明治維新後と第二次世界大戦後の二つの発展に共通している点として、以下の5点があげられる。

@国家存亡の危機

幕末から明治初めにかけて、日本は欧米列強のアジア侵略という外圧及び国内の内戦や動乱等により、国家存亡の危機を迎えていた。また、第二次世界大戦後、日本は歴史上初めて外国に占領されるという屈辱から出発した。この時も国家存亡の時であった。

A不連続性

明治維新後、欧米列強から日本の自主独立を守るために、徴税機能や軍事力などは中央政府に集中され、それまでの地方分権的な幕藩体制から中央集権の国家体制への転換が行われた。また、第二次世界大戦後には、GHQの指令等を受けて、日本はそれまでの軍事国家から民主国家・平和国家に転換した。国家の存亡を前にして、過去の流れとの断絶が図られた。

B上からの力

明治維新時の廃藩置県は、明治政府がまず薩摩・長州・土佐の三藩からの兵力により親兵を設置し軍事上の体制を整えた上で、薩摩・長州の実力者を中心に強権的に行われた。また、第二次世界大戦後は、GHQの指令により、日本を民主国家・平和国家にするための骨格がつくられ、反対する勢力に対しては公職追放などの措置がとられた。これまでの流れとの断絶は、上からの力により行われた。

C目標明示

明治維新後は富国強兵により自主独立を果たすことが目標として掲げられ、明治政府は殖産興業政策を進める一方で、徴兵制度を採用し、国民の国家意識を醸成させるなどした。また、第二次世界大戦後は、まずはアメリカが民主的な国家の理想とされ、アメリカに追い付くことが目標とされた。目標の明示は、国民の意識を統一するとともに、国民に将来への希望を抱かせる上で有効であった。

D集中的な社会資本整備

明治維新後は、日本を近代化するために、国内統一と文明開化のシンボルとして鉄道整備が集中的に推進されるとともに、河川、港湾、農業基盤整備等の社会資本整備が進められた。また、第二次世界大戦後は電源開発を含む河川総合開発などが行われるとともに、京浜、中京、阪神、北九州の4大工業地帯をつなぐ太平洋ベルト地帯に臨界工業地帯が形成され、それに伴う道路、港湾などの交通基盤の整備が進められた。太平洋ベルト地帯を中心とした国づくりにより、短期間に日本の経済は発展した。

二度の発展に共通していることとして5つの点をあげたが、国づくりを下から支えていたのは国民の力である。明治維新後の富国強兵も、第二次世界大戦後の経済発展も、一定の教育水準を有し、公に奉仕する精神を持つ、勤勉な国民の力なしにはあり得ない。二度とも、国家存亡の危機に際して、国のリーダーが体制を転換させて、目標を明示し、集中的に社会資本整備を推進して国づくりを進めてきたが、そこに国民の力を活用してきたことが国の発展へと結びついたと言える。

トインビーの文明論によると、文明の発展は指導者が誰でも模倣できる仕組みをつくって、多数の人々を成長のプロセスに参加させることによって実現されるという。明治維新後と第二次世界大戦後のいずれの場合も、国のリーダーが国民を成長のプロセスに参加させることに成功したといえよう。

しかし、今日では多くの国民は国の発展にあまり関心がない。昔に比べたらある程度生活水準が上昇したので、もうそんなに頑張らなくてもいいと考えている。その背景には戦後アメリカ占領下で始められた政策に基づいて、国民が制御されていることがあると考えられる。アメリカの占領政策は、日本が再びアメリカの脅威とならないように、日本人の精神を突き崩すことを主眼としていた。家族制度が崩され、儒教的な道徳教育は排除され、寺社を中心とした地域の結びつきは解体されてきた。そして戦後教育を受けた世代が日本の国のリーダーとなる1990年頃から、日本では国民に国家意識が薄れ、精神の荒廃が進んできた。公よりも個人が重視されるようになり、責任は果たさないが権利だけは主張する身勝手な「個人主義」や、機会の均等ではなく結果の平等を求める「平等主義」が日本に蔓延することになった。

 

2.肩車とおんぶ

今日、「社会保障と税の一体改革」というものが政府から発せられ、マスコミを通じて宣伝されている。日本は急速な人口減少と高齢化の状況下で社会保障費が年々増大し、半世紀前には高齢者1人をおよそ9人の現役世代で支える「胴上げ」型の社会だったが、今日では1人を3人の現役世代で支える「騎馬戦」型の社会になり、このままでは2050 年には1人を1.2 人の現役世代が支える「肩車」型の社会になることが見込まれるので、安定した社会保障を持続するためには消費税増税が必要であると言われている。

総理大臣から、1人で1人の高齢者を背負う「肩車」になったら大変ですよ、そうならないように増税しましょうと言われたら、多くの国民は「肩車」はできないな、増税も仕方ないなと思ってしまうであろう。それにしても、この例え話は良くない。現役世代が高齢者を「胴上げ」したり、「騎馬戦」に参加させたり、「肩車」することは現実には考えられない。財務省は、現役世代が高齢者を「肩車」するという、非現実なことをあえて国民に想定させることによって、「肩車」を回避するために消費税増税への道筋をつけたいと考えているのかも知れない。

しかし、もともと「胴上げ」型になる前は、どうだったのか。年金、医療保険、介護保険などの国民総ぐるみの社会保険制度ができるまでは、基本的に年配の親の面倒は子どもが見ていた。長子相続制のもと、長男が親の面倒を見る「おんぶ型」が当たり前であった。(子どもが親を背負う時には、「肩車」ではなく、「おんぶ」であろう。)

「おんぶ」と「肩車」は1人の高齢者をほぼ1人で面倒を見るという点では同様であるが、2つの点で違いがある。一つは、「おんぶ」は血のつながった親子の関係であるのに対して、「肩車」は知らない人同士が支え合う関係である。もう一つは、「おんぶ」では登場人物が親と子の2者であるのに対して、「肩車」では高齢者と現役世代と国の3者である。つまり、かつては子が親の面倒を見るという家族内の行為を、国が仲介して赤の他人である現役世代が高齢者の面倒を見るという行為に置き換える「国家的互助制度」が社会保険の仕組みである。

この国家的互助制度が成立するためには、2つの条件が必要である。第1に、日本国民が同じ仲間としてお互いを支え合おうという思いを共有していることである。このためには、国民に国家意識があることが必要になるが、今日では同じ国民としてともに生きていこうという意識が希薄になっていると考えられる。戦後教育の成果が表れて、国家意識が希薄になり、社会よりも個人が大事だという国民が多くなってきている。そのことが年金保険料の未納問題の一因になっていると考えられる。第2に、制度を運用している国に対する国民の信頼である。しかし、社会保険庁の消えた年金問題や3号被保険者優遇、年金運用による損失発生などで、社会保険制度への国民の信頼は低下している。また、制度は将来破たんする、あるいはもう既に破たんしているなどとして、年金への未加入者も増えている。

このように国家的互助制度の成立条件は崩れてきていると考えられるが、それにもかかわらず、国は非正規労働者への厚生年金加入緩和、年金一元化、最低保障年金の導入などにより国家的互助制度をますます拡充しようとしている。頑張っても、頑張らなくても皆さんの生活は国で面倒を見ます、とは言っても国にはお金はありませんので、そのためのお金はあまねく国民で負担してくださいということである。これでは、多くの国民は将来に希望を持つことができないと私は思う。年を取って、国家的互助制度のお世話になっている自分の姿を想像して、幸せだなと感じる国民はどのくらいいるであろうか。

 

3.国民の力を活かす

「社会保障と税の一体改革」では、国民は社会保障制度の安定的な持続を望んでいることが前提にされているが、本当にそうなのか。また、現行の社会保障制度を継続することが日本の国づくりにとっていいのだろうか。社会全体で支えようとすればするほど、国民の自主性・自立性は失われ、社会保障のためのコストは増大し、国の発展は阻害されていく。国家社会主義のもとでは「平等」は実現できても、「自由」は制限されて、結局は国が衰退せざるを得ない。そのことは1990年前後のソ連の崩壊等で証明済みである。

過去の二度の発展から、日本は国家存亡の危機を迎えないと、過去からの流れを断ち切ることができないと考えられるが、このまま現状後追いで国づくりを進めていくと日本は衰退せざるを得ない。明治維新後の富国強兵も、第二次世界大戦後の経済発展も、国のリーダーがあるべき国の姿を示し、その国づくりに向けて国民の力を活用してきたことが国の発展へと結びついた。国のリーダーは、勇気を持って、国民に自主性・自立性を求めることが重要であると考える。そのための考え方として、以下の3点をあげる。

第1に、国による社会保険制度を廃止することである。私は国による年金、医療保険、介護保険の社会保険制度を廃止して、民間による運営を基本として、加入は国民の選択制にすべきだと考える。国が社会保険制度を維持する限り、コストは増大し、国民負担は増大し続ける。しかも、家族に頼らなくても国が面倒を見てくれるので、家族の関係はますますばらばらになり、就職しなくても、結婚しなくても生きていける。このため、人口減少と高齢化は加速することになる。国による社会保険制度が廃止され、国民に自立を求めることになれば、一時的に混乱が生じることが考えられるが、社会に発展の可能性も生まれる。人口増加、内需拡大、年金・保険サービス部門の経済活性化等の可能性を期待することができる。国は、国民に結婚し、子どもを産み、育てることが重要だという認識を持たせ、血のつながった親が子の面倒を見て、子が親の面倒を見るというように家族制度を重視する方向に政策を転換させることが重要である。

第2に、高齢者を活かすことである。60歳になったら定年になり、年金をもらうまでは再雇用やアルバイトなどで過ごし、あとは年金生活となり、病院通いや介護などで国家互助制度の恩恵に浴している高齢者が多い。本当は働いて世の中に貢献することができる能力や意欲を持っている人であっても、年齢を理由に高齢者に相応しい隠居生活をしている人も多い。こうした高齢者の力を十分に発揮してもらい、国づくりに活かす考え方が重要である。アリの生態を研究している人によると、働きアリの寿命は2年ほどで、若い時は巣の中で幼虫の世話や巣の補修などをして過ごし、年を取ると巣の外に出て餌を収集するという。外敵がいる巣の外の危険な作業は年を取ったアリの任務である。人間の場合には高齢者になると、年金を受け取り、医療費が軽減され、介護も受けられ、一見優遇されているように見えるが、世の中からは働き手とはみなされず、お荷物扱いされている。人間とアリは違うと言われそうであるが、世の中に役に立つことに生きがいを感じる高齢者がたくさんいる社会は幸せなのではないか。高齢者の働きが世の中のためになれば、国にとってもありがたいことである。例えば、定年後に2年間程度自衛隊等で国のために働くようにすれば、高齢者にとっても、国にとってもメリットのあることであり、対価として高齢者に支払われる給料は、年金や医療等に使われる支出に比べて生きたものになると考えられる。

第3に、地方の潜在力を活かすことである。今日では、大都市圏が稼いだものを国が国税として吸い上げ、地方に再配分することによって、なんとか国全体が生きる国土構造になっている。例えば、平成20年度の国税収入をみると、首都圏の国税収入は全国の5割以上を占め、近畿圏と中部圏を含めると、三大都市圏で全国の8割を占めている。大都市圏牽引型の国づくりは短期的には経済発展を図るための有効な手法であったと考えられるが、この国づくりを続けることによって、日本全体の人口減少を加速させている。大都市圏では地方に比べて概して出生率が低いので、大都市圏に人口が集中するほど、日本の人口は減少し、高齢化を進めることになる。また、大都市圏の産業活動や人々の生活を維持するために、地価の高い大都市で道路や鉄道が二重三重に整備されたり、スーパー堤防が整備されたり、待機児童のために保育所が整備されるなどして、社会的なコストが増大している。一方、地方では人口の流出に伴う地域の衰退や意欲低下をもたらし、日本を停滞させる要因にもなってきている。成長するアジアを取り込むという前に、地方の潜在力を活かすことにより、日本全体の力を発揮することができる国づくりを進めていくことが重要であると考えられる。大都市で問題になっている保育所への待機児童の問題にしても、地方に人口や諸機能を分散し、三世代が同居したり、近所で生活できる環境があれば、血のつながった高齢者が孫の面倒を見ることもできる。

私は、国民にお金をばらまいて一定水準の生活を保障することが国のリーダーの役割だとは考えていない。地域や個人が持っている力を十分に発揮することができる機会を与え、発展の可能性を保障することこそが大事だと考えている。

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10.公共事業を考えるー財政の視点と国づくりの視点(山本基:平成24年10月) 

 

公共事業を考える〜財政の視点と国づくりの視点〜

山本 基


はじめに

1.公共事業と財政の流れ

2.財政からの公共事業批判とそれへの対応

3.日本の国をどうするのか

 


はじめに

財政法では公共事業のための建設公債の発行を認めている。これは、公共事業で建設された社会資本の便益が将来の世代にも享受されるため、社会資本の建設費を世代間で負担するための仕組みである。同じ公債でも、財政法で発行が禁止されており、歳入を補填するために毎年特例法を成立させて発行している特例公債(赤字公債)とは異なる。

経済成長が続いていた時には公共事業に対する批判はあまりなかったが、バブル経済が崩壊した1990年代以降は、財政の視点からも公共事業批判が行われるようになった。その批判の中心は景気対策としての公共事業の短期的なフロー効果に関する内容であり、長期的な視点で国づくりのために公共事業はどうあるべきかという議論はほとんど行われてこなかった。

本稿では、主に1990年代以降の公共事業と財政の関連を概観した上で、財政の視点からの公共事業批判とそれに対する公共事業を推進する側の対応を考察し、公共事業とは何かを考える。

 

1.公共事業と財政の流れ

「日本の財務関係資料」(財務省、平成24年6月)により、昭和39年度(1964)から平成24年度(2012)までの国の財政の流れを見ると、少なくとも1990年代までは名目GDP成長率が低下するにつれて建設公債発行額が増加する傾向にあり、公共事業が景気対策として行われてきたことが分かる。また、近年は名目GDP成長率が低迷し税収が増えない中で、特例公債発行額が急増し、公債依存度が上昇していることが分かる。

 以下では、時期ごとに公共事業と財政の関係を概観する。

 

@1980代まで

1973年のオイルショックまでは建設公債の発行額は少なかったが、オイルショック後に経済成長が鈍化する過程で公共投資が増加し、建設公債の発行が増えている。オイルショック以降、公共事業における景気対策としての役割が高まってきたことを物語っている。1975年には特例公債が発行されたが、1980年代に鈴木内閣や中曽根内閣が財政再建や行財政改革の目標を掲げ緊縮的な財政運営を行ったため、1980年代終わりには特定公債の発行がゼロになった。その間も、建設公債の発行は継続されていたが、それでも1980年代までは、財政面からの公共事業批判は大きくなかった。

 

A1990年代

1990年代には、バブル崩壊により、景気が悪化し、景気対策のための公共事業が大規模に行われるようになった。また、1990年の日米構造問題協議の中で、日本はアメリカから内需拡大とそのための社会資本整備を求められ、海部内閣は1991年度から10年間に430兆円の公共投資基本計画を策定した。公共投資基本計画は1994年に村山内閣で改定され、1995年から10年間に630兆円という規模に拡大された。バブル崩壊後の景気対策と公共投資基本計画による社会資本整備により、1990年代には建設公債の発行が増加した。

財政構造改革を掲げた橋本内閣は、1997年に財政構造改革法を成立させ、公共投資基本計画の計画期間を3年間延長し、公共事業の削減目標を設定するなどしたが、こうした緊縮財政政策により景気回復が後退した。このため、1998年に発足した小渕内閣は、財政構造改革法の施行を停止させ、大型の補正予算により景気対策の公共事業を行った。

 

B2000年代以降

2000年は公共事業の見直しについて関心が高まった年であった。1月に徳島市で吉野川可動堰化計画に関する住民投票が行われ、9割が反対という結果となった。8月には自民党など与党3党は、中海干拓事業を中止、吉野川第十堰改築事業を白紙とし、合計233事業の公共事業を見直し対象とした。

2001年に発足した小泉内閣は、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる「骨太の方針」)により、公共投資の整備目標の見直し、コスト削減、公共投資の対GDP比の引き下げ等を定めた。また、2002年には「構造改革と経済財政の中期展望」を閣議決定し、公共投資の配分の重点化、公共投資の効率化、公共事業関係の計画の見直し(事業量目標から成果目標へ、全総計画の見直し、公共投資基本計画の廃止等)を行うようになった。この結果、建設公債の発行による公共事業は削減され、補正予算による公共事業の実施も以前に比べて小規模になった。

2009年に発足した民主党政権は、衆議院選挙のマニュフェストで「コンクリートから人へ」をスローガンに、公共事業の大幅削減を掲げ、川辺川ダム、八ツ場ダムは中止、道路整備は費用対効果を厳密にチェックすることなどの方針を示していたため、公共事業費は一層削減され、事業評価の厳格化などが進められた。

なお、2011年には東日本大震災からの復旧・復興財源を調達するため、復興債が発行され、復興需要による経済成長も期待されている。

 

2.財政からの公共事業批判とそれへの対応

1990年代以降、公共事業については、政官財の利権構造を生むとか、自然環境破壊の象徴であるとか、さまざまな面から批判されるようになったが、財政学者などによる財政の面からの公共事業批判は主に以下の3点にあると考えられる。

 

@公共事業が財政を圧迫

一つは公共事業が財政を圧迫してきたという批判である。前出の「日本の財務関係資料」により、平成2年度から平成24年度にかけての公債残高の歳出面の増加要因を見ると、1990年代は公共事業関係費が公債残高を増やす主たる要因となっていることが分かる。しかし、1999年度からは公共事業関係費よりも社会保障関係費の方が公債残高を増やす主たる要因となり、2012年度ではほとんどが社会保障関係費に起因している。なお、2012年度の一般会計歳出に占める割合は、公共事業関係費が5.1%に対して、社会保障関係費は29.2%である。

それにもかかわらず、今でも公共事業批判の論拠として財政を圧迫することがあげられている。国と地方自治体の長期債務残高は平成24年度に約940兆円(国739兆円、地方200兆円)であり、対GDP比は196%で主要先進国中最悪なのに、まだ公共事業を行うのか、などと批判されている。意図的に建設公債と特例公債を合わせて公共事業が財政逼迫の主要因であるかのような批判がマスコミを通じて行われ、世論を形成している。

 

A公共事業の乗数効果が低下

1990年代以降、公共事業の乗数効果が低下してきたため、景気対策としての公共事業は有効ではなくなってきたという批判もなされている。乗数効果とは、公共投資が建設業の雇用者所得の増加等を通じてGDP(国内総生産)がどれだけ増加するかを表すものである。

乗数効果が低下している理由としては、一般に1)限界輸入性向の上昇(国際化の進展に伴い、輸入が増加しているため、所得の増加が国内の需要増大に結びつかない)、2)企業の限界支出性向の低下(企業が得た利潤が新規設備投資に回される割合が低下しており、GDPを押し上げることにならない)、3)限界消費性向の低下(所得の増加が貯蓄に回り、消費の増加に結びつかない)、などがあげられている。

資材等の輸入割合の増加はこれまでの貿易立国という国づくりの結果であり、企業の支出意欲の低下や家計の消費意欲の低下は将来への不安を示すものである。これらの外的な要因は公共事業自体の景気対策としての有効性を低くするものではないと考えられる。このため、公共投資による乗数効果が低下しているのは民間部門での需要創出機能が弱いことを示しており、こういう時だからこそ、公共投資を推進すべきであるとの主張も行われている。しかし、公共事業の乗数効果の低下に対しては、乗数効果を上げるための国としての取り組みも求められていると考えられる。

 

B無駄な公共事業の実施

公共事業費が既得権益化しており、特に地方では無駄な公共事業が行われていると批判されている。財政学者などからは、公共事業により衰退産業や衰退地域を支えることは、成長産業や成長地域の足を引っ張り、日本全体を衰退させるという主張も行われている。また、大都市圏の地域は税金を多く支払い、公共事業への補助金の分配は少ない一方で、地方は支払う税金は少なく、補助金の分配は多いなどと、地域間の所得再配分の不公平を主張し、都市と地方の対立を煽るような批判も見受けられる。

たしかに地方の中には主たる産業が公共事業であり、公共事業によって地域の雇用が確保され、経済活動が支えられてきた地域もあるが、建設公債を発行して公共事業を進めてきたのは国であり、地域間の所得再配分をせざるを得ない国づくりを長期間にわたって行ってきたのも国であり、地方にだけ責任を押しつけるのは適切ではないと考えられる。しかし、公共事業でお金をばらまくことが目的となり、地域づくりや国づくりに結びつかない公共投資があったことも事実であり、公共事業を推進する側としても公共投資の内容や進め方について考える必要がある。

 

こうした1990年代以降の公共事業批判を受けて、2000年には公共事業の見直しが行われ、2001年の小泉内閣以降、公共事業費は削減されてきた。この流れの中で、公共事業を推進する立場の人々は「効率性」に活路を見出した。他の事業と比べて効率性が高い事業であれば、政治家もマスコミも国民も反対しにくい。このため、公共事業を推進する立場の人々は費用便益分析などにより、誰でも分かりやすい数字を示して、事業を進めようになった。しかし、効率性だけを重視して公共事業を進めることは、人口や諸機能が集中する大都市圏では公共事業が行いやすく、人口が少ない地方では行われにくいことを意味する。

財務省や財政学者などは主にマクロ経済の視点、短期的な視点で財政面から公共事業を論じるのに対して、国土交通省や土木学者などは主に地域からの積み上げの視点、長期的な視点で公共事業を進めるため、そもそも考え方が異なるはずであるが、マスコミを通じて公共事業批判が世論を形成する中にあって、国土交通省など公共事業を推進する立場の人は効率重視の姿勢を示すことによって公共事業批判をかわし、当面、一定の事業量を確保していこうとしているように見える。

 

3.日本の国をどうするのか

景気対策としての公共事業の有効性に関する財政面からの批判に対応して、今日、公共事業は効率性重視の考え方で進められるようになっている。ここには、日本の国づくりをどうするのかという思想はない。

公共事業は何のために行うのか。短期的には景気対策としての機能があるとしても、それは目的ではないと私は考える。公共事業の目的は国づくりである。国民生活や経済・産業活動に必要な基盤をつくることである。公共事業を国づくりに結びつけるためには、3つのことが重要であると考える。

第一に、あるべき国の姿を描くことである。前出の「日本の財務関係資料」では、経済成長率が長期的に低下し、人口は2012年から2050年にかけて1億2,750万人から9,706万人に減少し、同期間に高齢者割合が24.2%から38.8%に上昇することが示されている。その上で、財務省は「将来の人口構成の見通し等も踏まえれば、持続可能な社会保障制度を構築することが重要な課題となっています」と説明しているが、経済の縮小、人口減少、少子高齢化を前提とした国の見通しを見て、将来に希望を持つことができるであろうか。また、日本の国力が低下していく中にあって、成長するアジアの力を取り込むことが日本の国の進むべき道であるとの意見もある。本当にそうなのか、それでいいのか。このままいくとこうなりますという傍観者的な見方や、アジアの力を取り込むという考え方をする前に、もう一度日本の国土や国民の潜在力を認識し、人口を増やし、内需を拡大し、日本が発展する方向を主体的に考えるべきではないか。政治家や役所の人々にとっては、社会保障制度の充実は国民を管理しやすくする一つの手段であると考えられるが、国の発展を考えれば、そのような国家社会主義的な考え方ではなく、国民にその潜在的な力を発揮することができる自由を与え、発展の可能性を保障することこそが大事であると考える。その発展の可能性を築くのが公共事業による社会資本の整備である。私は、東京など大都市圏に日本を牽引させる国づくりではなく、日本の国土全体が持っている国力を十分に発揮することができるようにすることが、あるべき国の姿であると考えている。

第二に、あるべき国の姿を実現するための公共事業の大切さを国民に伝え、国民の共感を得ることである。あるべき国の姿を実現するためには、生活や産業の基盤となる社会資本を整備するための公共事業が必要となる。その際には、効率の良い事業だけではなく、現状では効率は良くないが、将来の国の姿を考えた時には行わなければいけない事業もあると考えられる。民間ではできないが、国づくりにとって重要な事業を行うことにこそ、公共事業の意味がある。公共事業批判がマスコミを通じて国民に浸透しているため、国民の共感を得ることは容易なことではないが、公共事業を推進する人にとっては数字をつくり、数字の大小で判断する仕事に較べると、知恵を出し、能力を発揮することができる、やりがいのある仕事であると考えられる。数字だけで判断する意志決定は、人の思考を停止させる。事業評価や費用便益算定方法などは大学の先生などに任せて、国のリーダーである政治家や役所の人は、あるべき国の姿を実現するために必要な公共事業を行うための戦略を考え、国民の共感を得るための努力をすべきであると考える。国づくりの基盤をつくるのが公共事業であり、公共事業を怠ることは日本の国力を衰退させることになることを国民に伝える必要がある。

第三に、長期的な視点で国づくりを進めることである。日本は明治維新後と第二次世界大戦後に大きく発展してきたが、いずれの時期にも国の発展のために公共事業が集中的に実施されてきた。明治維新後は欧米列強から日本の自主独立を守るために富国強兵政策が進められ、国内統一と文明開化のシンボルとして進められた鉄道整備は日本の産業革命や資本蓄積を支える基盤となった。また、第二次世界大戦後は、京浜、中京、阪神、北九州の4大工業地帯をつなぐ太平洋ベルト地帯に臨海工業地帯が形成され、これらの地域に供給するための電源開発や水資源開発が行われるとともに、道路、港湾などの交通基盤が整備された。これらの公共事業は太平洋ベルト地帯を中心に工業化を進め、高度経済成長を支える原動力となって、日本を経済大国と言われるまでに押し上げる要因になった。これは景気対策として行われたのではなく、日本の国づくりのために長期的な視点で行われてきた。

 明治以来140年以上かかって今日の国の形がつくられてきた。日本の国をさらに大きく発展させるためには、これまでの流れとは違うあるべき国の姿を描き、その目標に向かって国民全体の意識を統一させ、長期的な視点で社会資本整備を進めていくことが重要であると考える。

 

民族再生

12.民族再生緊急措置法(天本俊正:平成25年6月)

 

 

民族再生・緊急特別措置法の骨子案:本論

 

平成2568

天本俊正

NPOジオストラテジー研究機構・会員

目次

1.はじめに

 

2 .国の形

 

2−1 領土

22  民族

23  憲法改正

24  道州制:国・地方一体の道州制と国民運動の国家的支援

25 国防強化

 

3.家族制度の復古と福祉の是正

 

3−1「福祉国家亡国論」

32   福祉の大幅見直し

33   民法改正:家制度復活=各々国民が選択できる方式

34   男女共同参画法の廃止と 結婚奨励活動促進法

35  経済政策・TPP

 

4.脱少子化の国土計画:国土計画が提唱する脱少子化・道義国家

 

4−1 戦前の国土計画

4−2 国土計画としての人口政策

4−3 生活圏計画と2地域居住

4−4  人口反転増までの国土インフラ構想

 

 

5.おわりに


 

1.はじめに

 

 ジオスト研の第23,24回での小生の発表の「民族再生・緊急特別措置法の骨子案:試論、補論」をここでとりまとめ「本論」とする。昨年10月、道義国家論を始めたが、わが日本が講ずべき政策大綱の骨組み立ち上げを、身の程知らずでも試みたい。福沢諭吉「学問のすすめ」に「身も独立し家も独立し天下国家も独立すべし」とある。わが日本がこの半世紀、愚民国家への道を転げ落ちつつある、と小生はみる。民族再生・緊急特別措置法が必要なわけである。

 

2.国の形

 

2−1領土

 

 第2次世界大戦(日本からみれば大東亜戦争)の後の世界体制は、米英支蘇中心(国連理事国はこれに仏)に組みたてられた。その是非は、日本としては本来、承服しがたいものだが、力の結果は受け入れざるを得ない。そこで日本の領土が確定している。

 

 アメリカは、奄美、小笠原、沖縄と戦前日本の固有のもの(彼らから見てわが国が「侵略」で得たものでない)の占領を解き、返還した。ソ連は、日本固有の領土たる北方4島に終戦後、不当に侵略し占領したまま、返還しない。韓国は、日本との併合を解かれた後、日本がアメリカ等の占領下にある時に李承晩ラインを一方的に引き、日本の主権回復後も竹島を不法占拠している。中国は、日清戦争に負け下関条約で、台湾等を日本に割譲、それを大東亜戦後、取り戻した。尖閣は、日本が下関条約締結(明治286月)以前の同年1月に領土明示の標柱を現地に立てている(実効支配は、その数十年前から)。尖閣には、台湾問題も大きく絡んでおり、一層複雑である。台湾には、漁業権で妥協が必要である。

 

 日本の外務省は、戦後の4つの領土画定をばらばらに国民に説明している。戦後の領土画定は、4問題に共通する視点に立つことが大事だ。アメリカはその正義を貫いた。ソ連、中国、韓国は、世界大戦終結の論理を踏みにじっている。是正するには武力で奪還しかないかもしれない決意を3国に対し宣し、武力準備を怠ってはいけない。

 大東亜戦争は、有色人種の植民地解放戦争であり、日本は物理的には負けたが、戦争目的からいえば、広く戦後処理も含めてみれば「勝利」ともいえる。自己犠牲も誇りになる、その論理を踏みにじられては、わが国は立つ瀬がない。4つの領土問題(1つ対米は解決すみ)は一括して解決すべき譲れないものなのだ。

 

2−2民族

 

 ユダヤ民族は、世界に6000万人という。彼らは、自らを選ばれた民族と信じている。強い民族である。アウシュビッツで600万人がむざむざと抵抗することなく殺された。

 

 今、日本民族にとって許してはならない動きは、中国における反日教育である。江沢民は、共産党支配を継続するための思想統制、思想教育で幼い子供たちに、間違った史実に基づき反日の憎悪教育を叩き込んだ。

 残念ながら人類の文明文化は、他民族に対する不当残虐な行為を自制するところまでいたっていない。あのベートーベンを産んだドイツ民族がなぜアウシュビッツを行ったか。中国13億の民族にドイツ民族以上の道徳・良心を期待できるか。日本民族は、ゼノサイドを受ける可能性を否定できない。

 大東亜戦争も、アメリカの排日運動から始まった。ルーズベルトの日本嫌いは、トルーマンの原爆投下につながった。国際的に寛容な精神が大事とはいえ、油断は自己責任だ。「心ひとつにして・・」は、日本民族が危機に陥った時のスローガンである。民族防衛、脱少子化の思想闘争こそ、今必要だ。

 

 

 

23 憲法改正

 

 戦後、占領憲法のもと、経済成長こそあれ国家の骨格は、骨なしクラゲのごとくあった。特にこの「失われた20年」はひどい。日本民族の日本憲法を早急に制定すべき。自主憲法が党是の自民党が2412月総選挙で3分の2超の衆議院議席を取ったを奇貨として一気に憲法改正すべき。少なくとも「3分の2」の改正条項を「過半数」にし、暫定憲法を持つこと。

 憲法9条の改正もさることながら24条男女同権の「両性の合意のみの婚姻」とかの動物的粗野な考えを引っ込める。25条の生活権なるものも、国家が国民を養うなどの誤れる逆転思想を破棄すべき。

 

24 道州制:国・地方一体の道州制と国民運動の国家的支援

 

 国家・国民が一体となって立ち上がる内政の強化とそのための行政組織が必要である。経済は、残念ながら人口統計学的弱体化から早急な回復は、見込めない。当面、あきらめたがいい(注1)。道州制は、国から市区町村までにいたる強力な内政ネットワーク組織の要(かなめ)となる。都道府県知事の公選は、国民の政治参加から見てプラスの評価を与えることが出来ようが、国家・国民の一体化(“こころひとつ”、は日本民族の危機時の伝統的スローガン)を強化するには、不足である。大臣が長官をつとめ知事が参加する道州を新設すべき。

 内政の要となる道州制は、広く自由な国民運動と連携しながら@脱少子化「産めよ殖やせよ」、A過剰福祉の廃止B地域社会のきずなの強化などの課題を担う地方自治への行政支援を進める。

 

道州制のもとで「道義国家」実現の実戦部隊になることが地方自治体の最大の任務である。戸籍法の改正・強化も、地方自治の中心に戸籍業務を置くために必要である。戸籍は、家族制度の基礎であるとともに、日本国民の権利・義務の基礎であり、徴兵のみならず、福祉の対象・対応の適正化にも資するものである。

 

25 国防強化

 

 @尖閣、竹島、北方領土の領土問題にみられるように国防の飛躍的強化が必要。物理的戦力より、国民の一体意識、科学・技術・文化の能力をふくめソフト戦力が大事である。愛国心が最強の防衛力である。

 A徴兵制を敷く。若者(男)の教育の一環である。70歳徴兵制で高齢化社会の弱点をおぎなうことも。なお、若者(女)の早婚、若齢出産奨励あるべし。

 B防衛大学の拡充が必要である。陸海空で分けるのではなく、技術大学、音楽・芸術大学、体育大学、教育大学、宇宙大学など新日本軍隊の強化と連携する高等教育を飛躍的に増設する。

C国債の発行を認める(建設国債の例外)。

 

3.家族制度の復古と福祉の是正

 

3−1「福祉国家亡国論」

 

山本勝市は、経済学者であり、戦後、衆議院議員でもあった。その著が表題だが、ある自民党事務局員(田村重信)が紹介しているのを孫引きする。「我々が自由な社会を失うまいとする限り、社会保障には限界がなければならない。限界とは、国民が社会を維持するために、自ら責任を持とうとする意志と力を弱めるところまで、社会保障を進めないこと。さらに、家族や団体の自発的な意志を弱めるところにまで福祉を広めないこと。家族や団体に対する補充のあるべき限度を超えてはならない。」

 

社会保障の各部門、各地域ごとに適切なシーリングを設定することは、社会保障を自由・民主・私有財産の社会と両立されるための不可欠の条件である。平成日本に、ひとりとしてこれを主張するものが見られないのは許せない。真っ当な経済政策が、出てくるわけがない。

 

32  福祉の大幅見直し

 

予算制度に「福祉シーリング」を大幅にとりいれる。とくに各々の地方自治体ごとの福祉にシーリングを設け、枠内での創意工夫、自助努力を促進する。中央の、医療・年金・社会福祉の各分野の公的援助にもそれぞれ思い切ったシーリングを置き、福祉を受ける側の自主努力を促進する。

 

生活保護の支給は、原則、廃止する(貸付、現物支給、など)。

 

 終末医療の在り方を見直すべきである。「今、病院には寝たきり老人が数十万も生物学的に生きながらえされているが、医者、家族、みな責任回避の結果だ。日本人はこんな情けない人種ではなかったはず」(石飛幸三:撃論8)胃ろうに公的保険は不適用にすべき。死に方の潔さは、潔い生き方に通ずる。

 

33 民法改正:家制度復活=各々国民が選択できる方式に

 

戦後の西欧かぶれの戦後民法は、行き過ぎた個人主義に即したもので日本民族に合わない。戦後60年で慣行化した戦後民法を一気に明治民法に切り替えることはできまい。人々の自由意思によって家制度の復活と併存できる民法改正を考えること。国民運動を盛り上げ、宗教界の理解と支援も必要であろう。

今の戦後民法の中でも3親等まで扶養義務を拡大するほか、改善できることはあろう。

 

 

34  男女共同参画法の廃止と 結婚奨励活動促進法

 

尊厳において男女平等であることは間違いないが、現行の男女共同参画法は、女性の役割を否定する女性蔑視思想につき早急に廃止すべき。マララ・ユスフザイ(注2)の教えは、女性の政治・経済・教育・文化などでの進出と矛盾しない。

 

公設婚活相談所の設置を進める。民間の「婚活」機関の内容を充実せしめ、必要な行政支援を行うべき。

 

婚活促進のための労働・大学資格の関連法改正をおこなうべし。成年女子は結婚、出産、育児優先とし、大学では女子は就学期間延長などおこなう。逆に出産育児後の中高齢女性の研修・就業奨励の政策を拡充すべき。

 

扶養家族手当重視の所得税を強化するなど、「男が稼ぎ女が子を産み育てる」を社会全体で支持していく。「見合い」など家どうしの結婚の風潮を取り戻す。

 

3−5 経済政策・TPP

 

前回、デモグラフィック要因(人口統計学的)に言及した。@団塊世代の定年引退、出生数の減少、進学増などによる労働力の総体減少、A人口移動の減少(国際労働力も呼び込めなかった)が、日本の「失われた20年」をもたらしている。経済政策の失敗(無暗なリストラ先行、過剰福祉と投資抑制の誤った財政、金融の信頼失墜など)は、デモグラフィック要因をさらにマイナス加速した。

「経済成長」を政策目標からおろし、国民の生活基盤を正常に取り戻す道徳国家を表看板に挙げるべきだ。例えば、脱少子化には、婦人労働の一定の撤退、職業教育・男女役割の区別化・選別化、早婚促進と高齢出産援助など、非成長政策を優先すべきであろう。市場原理主義で一層、少子化を促進するなどは、悪の道である。

 

TPPは、地政学でいう「シーパワーの政治的結束」の意味があるので、一概の反対できない。ランドパワーの反動性(中国、ロシアが顕著)に対抗する必要がある。日米豪加のいわゆる強国群とニュージーランド、シンガポール、ブルネイ、ペルーのようないわゆる小国群とのバランスはどうとれるのか?社会主義国ベトナムの変身を誘えるのか?

コメは、時間をかけて国際競争にさらす方がいい。あまりに補助金漬けの産業になりすぎている。

 

経済政策は、脱少子化の国土計画の中で、いかに投資(公共も民間も)を確保していくか(過剰福祉の是正)、国際貿易をいかに波乱、崩壊なくすすめていくか、に焦点があろう。

 

 

4.脱少子化の国土計画:国土計画が提唱する脱少子化・道義国家

 

(まえがき)さきの「道義国家の作り方:試論」(平成24.10.6)で国土計画への組み込みを論じ、次のようにした。今回は、これを補完するものである。

 

@日本の今後の国土計画の第1項目には、「人口政策・道義国家」を掲げること。下地として新・日本民族主義の思想を広めること(政治の役割)。男女共同参画法を廃止すること。福祉削減・軍備増強で財政再建を実現すべし。例えば、3代戸籍の復活は、福祉予算の削減につながる。

A国土計画の新思想として「心ひとつの国土・国民」(ソフトの均衡国土)をいうべき。これは、情報産業時代の国土(ホロン)のバックボーンである。農村的都市と都市的農村の全国土的共存である。ある意味、分散政策となろう。

Bそうはいっても、人口増に食糧確保・環境保全が必要は変わらぬ原則(増殖にはエサ・生存条件がポイント)だが、その実現は、科学技術の振興、物質の生産能力増、ロジスティック、環境保全が、グローバルな、あるいは宇宙的に計画課題として継続する。SF的になるが、近将来の宇宙進出には「空気」の製造、移送がいる。

 

4−1 戦前の国土計画

 

戦後の国土計画は、土木建築の計画が主流をなしてきたので、ここでソフトの国土計画を示すのは奇異な感じを受けようが、戦前の日本の国土計画は、正面から民族の在り方、人口政策も取り上げてきた。見てみよう。

 

@石川栄耀の「国土計画」(河出書房、昭和17.8)では次のようである。

 

*大東亜国土計画の構想として、民族計画があり、大和民族の量の増加率の問題が取り上げられている。結婚年齢の繰り下げ、増殖環境の改善等をあげている。国土計画としては、地域別、職業別に婚期年齢を分析し、農業地方生活は、婚期早く、大都市は遅いことから、小都市主義が婚期引下げに効果があるなどとしている。

*都市と都市、農村と都市、地方と地方が「聚落自由主義」「地方自由主義」で競っている間は、だめ。それらの自治体の解体総合を結局の「心の国土計画」の具体の方法論とする。

 

A小牧実繁の「日本地政学」を見てみよう(柴田陽一の論文による)。

 

*軍事力で植民地拡大する欧州の覇道主義に抵抗する思想を主張した。日本の国策に方向を与える地理思想を唱道せんとした。「米英を首魁とする金融資本主義国家による世界旧秩序を破壊して、新秩序を齎す建設計画の科学的武器たらんとする地政学」を日本地政学に求めた。

*日本地政学は、世界の各地域の住民や文化を尊重して世界共存をはかる多文化主義的思想である。

*日本地政学は、人間の意志、精神、感情に結びつくものである。地理的決定論を排するがゆえに神とか「皇道」とか、宗教的なものに支えられている。

 

小牧実繁は、戦後、公職追放され、日本の地政学が戦前を引き継いだのは、江沢譲爾の地政学=大東亜の資源の動員に空間再編をどうするか=のような合理主義的なものであったと言えよう。

 

4−2 国土計画としての人口政策

 

4−2−1 最近の人口政策の動き

 

昭和161月に政府は、人口政策確立要綱を閣議決定した。戦後一貫してこの政策は政官・民間とも無視してきた。昭和50年以降、年間出生数が200万から100万まで急速に減少したにもかかわらず、政策として取り上げられることはなく、「失われた20年」の間、社会全体で頬被りしてきた。しかし、やっと芽がでてきた。

 

@国土形成計画の広域地方計画(平成218月)の中で北陸計画は、出生率の向上に格段の関心を寄せ、注目に値した。

A山形県知事の吉村美栄子は、平成251月の知事再選の公約に「出生率1.7」を掲げた。人口減の原因は、若者の未婚化・晩婚化であるとして、県として、出会いのイベント、センターなどの施策を実行に移すことにした。

B安倍2次内閣の少子化相・森まさこは、「生命と女性の手帳」を国民配布しようとしている。例えば、卵子の老化などを周知させ、早婚促進を考えた。またしても「国が個人の生き方に関与すべきでない」という反動左翼勢力に阻まれることとなった。

 

この程度の動きでは、「人口減少」を是とする国家解体勢力の攻撃を日本国民、政府は防ぎきれない。例えば、アベノミックスの3つの成長戦略で、またぞろ女性労働力の活用を取り上げるなど、見当違いも甚だしい。

 

4−2−2 「脱欧入亜」と道義国家への復古

 

少子化による文明の衰退は、欧州各国、新興国(韓国、台湾など)に共通する現象である。極言すれば、サンガー夫人の国際的避妊運動の行き過ぎが、マルクス主義残党の思想と結合して、資本の論理で女性の役割を、機械人間的なものにゆがめたものにした。出産を忌避する女性は、徴兵を忌避する男性と同じに人間性を誤っている。近代思想の行き詰まりでもある。アメリカは、それでも避妊abortion、妊娠調節 contraceptionという問題を政治の重要な課題として議論し、移民もまた、目を背けていない点は見習うべきである。

 

「脱欧入亜」と道義国家の復古によって女性の役割を尊重する思想展開が社会的に必要である。

日本としては、家制度の見直し、再評価など、民族の歴史と伝統、慣習の中に残っている民族再生の根源をもう一度、表に出す必要があろう。

人口学者も出生率の数値目標を政府が持つべきを主張するようになった(鬼頭宏)。しかし、目の前の保育施設の増強など程度では、焼け石に水しかならないことをはっきり認識すべき。

 

深く耕す政策体系でなければ、出生率の向上に結びつかない。過剰福祉の

上乗りをするような、ばらまき本位の家族援助政策は、かえって逆効果である。セーフテーネットが暖かすぎれば、人は努力を損なわれる。

 

 

4−3 生活圏計画と2地域居住

 

@家族基盤、地域基盤、職域基盤を強化して「産めよ殖やせ」を日本国として実現していくには、当然、居住の在り方、交流の在り方、住職配置などインフラ整備の方針もおのずから、政策が出てくる。

 

石川栄耀の時代は、まだ農業が大きな産業分野であった時代である。いま、情報産業時代になって都市の在り方、都市圏の在り方、交流の在り方は、全く異なる。

コンパクト都市、2地域居住などこれに合った構想が必要であろう。

 

石川の生活圏構想は、都市のヒエラルキーの地方・地域展開を包含していくものだが、情報産業時代には、ネットワーク的な都市展開が必要になる。出生率向上は、家族、生活重視の政策であり、地域的にも生活態様の整備が重視される。

 

2地域居住」については、現・国土形成計画(平21.8)において、持続可能な地域形成の一形態として促進がいわれている。大都市圏と地方圏での2地域居住、大都市圏内での2地域居住、地方都市と農山漁村の2地域居住などの形態がある。同計画では、都市居住者の願望、団塊世代の意向に沿う形で促進を言っている。

明治民法による家制度は、戸主の下、配偶者、子供、親族が居住の場所に係わらず同一の家族共同体を構成する。戦後民法が、日本の歴史、伝統、慣習を疎かにし、家族基盤の崩壊を多分に招いたことを考えると、明治民法への復古と2地域居住には、関連性を考えていった方がいい。つまり、家族基盤の復興には、2地域居住を積極的に認め、法的にもバックアップをしていく。福祉の政策体系も復活明治民法の考え方を応用したが、より公正、公平、効率の福祉体系足りうる。所得税の体系も明治民法の家族共同体の方が、明確な基準たりうる。

戦後民法のもと戸籍行政が疎かにされ(徴兵がないせいもあろうが)、福祉の体系を秩序だったものにできなかった。家族の絆も、弱められ、国民感情的にも疎外感が増え、出生率低下(女性の出産敬遠の風潮)にもつながった。

 

A結婚、出産、育児に精力を注ぐ女性像に合致した社会インフラを考えよう。例えば、大学の就学形態にも、共学であっても、女性は修学・習得期間が長く、柔軟に設定されてしかるべきであろう。

今の「男女共同参画」構想のように女性を蔑視し、男性との差異ばかりを不当にあげつらうやり方は、一日も早く、やめるべきである。

男は男らしく女は女らしくが、結婚の基礎であり、それをおろそかにした近代西洋思想は、何処をどう踏み間違えたか、21世紀に西洋衰退の道を走る。我が国は、決然立って、この道を離れ、日本古来の歴史、伝統、慣習の風習に基づく生活基盤を取り戻すべきである。いま、子孫が絶えるようなら「経済成長」はもう結構、というべきであろう。

 

4−4  人口反転増までの国土インフラ構想

 

いま、21世紀初頭の日本の課題は、民族の増殖しかない。他は、本当に最小限、必要な政策にしぼり、なんとか「世界の進運に遅れざるべし」ということ。竹内啓はいう「近現代は物質の再生産体制には成功したが、人間社会における家族の問題、次世代の再生産(人口のコントロール)は、枠組が構築されていない」

 

戦前の日本は欧米の植民地主義と闘ったが、21世紀は、先進的道義国家として、人類を絶滅危惧種に陥ることから救い出す民族的使命があろう。

 

5.おわりに

 

福沢諭吉は「学問のすすめ」のなかで言う。「愚民の上に苛き(からき)政府あり」と。明治維新時は、無知蒙昧、世界知らずをいうが、平成の昨今、政府に生活を頼り、子孫を殖やすことさえ忘れている国民を愚民といわずして何と言おうか。衰退する西欧文明から離れて、日本の国の在り方を国民あげて探るべき。

 

領土問題にしろ貿易交流にしろ、地政学的に正しい視点を国民が持たなければ、平成の国難を乗り越えられない。地政学を我が国に大いに普及させていく使命が我々にはある。

脱少子化の国土計画は、誤れる福祉思想を克服することにつながる。福沢諭吉は、「学問のすすめ」でいう。「気力を確かにしてまず一身の独立を図り、一国の富強を致すべし。道理に戻りて曲を蒙るの日に至っては、日本国中の人民一人に残らず命を捨てて国の威光を落とさず(べし)」

 

NPOジオスト研を発展させるべき、なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


市ヶ谷研究会

活動概要報告


第10回;戦前の情報戦略とアジア研究=大陸政策の情報戦(平成15319日)講師;中生勝美氏
第9回;同文書院の調査旅行と中国(平成14年5月31日)講師;藤田佳久氏
第8回;アジアと「吉田の会」(平成14年2月14日)講師;水内俊雄氏

第7回;中東情勢と新地政学(平成13年6月14日)講師;滝川義人氏
第6回;幻の日独伊3国同盟(平成13年2月13日)講師;手塚和彰氏
第5回;今後の進め方(地政学から見た日本の役割―その2)(平成121026日)講師;竹内啓一氏
第4回;地政学から見た日本の役割(平成12年6月28日)講師;竹内啓一氏
第3回;環境問題と地政学(平成12年2月3日)講師;米本昌平氏
第2回;アジアとその地理(平成11年11月26日)講師;岩田修二氏
第1回;地政学の現況(平成11年10月7日)講師;高木彰彦氏

 

平成1476

天本俊正

会議要旨は天本俊正が個人として纏めたもので内容の責任は全て天本にあります)

 

NPOジオストラテジー研究機構の臨時総会・理事会・偲ぶ会のお知らせ

日時=平成19年7月21日、場所=東京都港区赤坂8-6-27-511電話03-3408-2541

市ヶ谷研究会の参加者の有志をもって平成14年4月に表記NPOを設立いたしました。創始者の土井重彦様が平成18年7月26日にお亡くなりになりました。総会、理事会にあわせて一周忌の偲ぶ会をおこないたいとぞんじます。関係者のご出席をお待ちいたします。あらかじめ連絡ください。

 

 

 


10回;戦前の情報戦略とアジア研究=大陸政策の情報戦

平成15319

講師;中生勝美氏

1.戦前の特務機関 1)大陸政策 2)内蒙古の特務機関 3)ラマ教の利用 4)イスラム工作 5)新民会

2.GHQによるアジア情報活動:戦後の日本統治

 

討議

 

 大阪市立大学の中生勝美・助教授をお呼びして戦前の大陸における日本の特務機関の活動を中心にお話をお聞きした。戦前、日本軍の特務機関で働いていた生存者の聞き取り調査を行い、現地にも赴かれて研究をまとめつつあるということでした。

 満州・蒙古・新疆における日本軍の情報網は、驚くほど充実していた。例えば、工作費は、国家予算でなくアヘン栽培をして捻出し、天津、上海などを経由して使っていた。内蒙古の特務機関としては、蒙古善隣協会、アパカ会、大蒙公司などがあり民生、通商、宗教活動などの中で動いていた。イスラム工作も熱心であった。満州には新疆までつながる人脈がある。蒙古は、民族対立に敏感で、日本軍はそのどちらに味方すべきか、などをよく調べた。漢民族に抑圧されている民族は、日本軍サイドに協力的であった。東トルキスタン共和国(19441946)には、関東軍が力を入れて工作していた。特務機関の人たちは国籍を捨てて活動していた。

戦後、GHQは、日本の満蒙資料を根こそぎ接収した。アメリカの内陸アジア工作の動向は秘匿されている。

 

討議になって、日本の中東研究もレベルは高い。あわせてアジアの情報を、大学のみならず研究機関は、日本の中小企業の対外進出にビジネスとして売り込んでいくことを考える段階に来ている。

 

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9;同文書院の調査旅行と中国

平成14531

講師;藤田佳久氏

1.東亜同文書院の設立

2.書院生による大調査旅行

3.調査旅行から見た中国の地域事情・軍閥の動き

4.中国の「失われた50年」、中国の現在を見る

 

討議

 

 愛知大学の藤田佳久教授をお呼びして戦前の上海・東亜同文書院、特に書院生による調査旅行の成果についてお話しをお聞きした。岸田吟香、荒尾精、近衛篤麿(霞山)などの努力を経て1901年、上海に東亜同文書院が設立された。日本国内各県から2名の選抜された学生に、貿易実務など今で言うビジネススクールとしての授業を教えた(戦後,スパイ学校などとデマに貶められた)。5000人の学生が、700コース(2−3人の組み)で中国大陸,東北部,ベトナム、台湾等を広く卒業旅行としての約3ヶ月の調査旅行を試みた(1907~1942)。その集大成は、20世紀前半の世界最大の地域調査とも言える。「目で確認したことしか書かない(聞いたことは、書かない)」を原理に農山村の実情を事細かに記録に残した。各地で歓迎され、軍閥にも素直に受け入れられた。分析すれば,中国大陸が実はいくつもの圏域に分かれていた。「省別全誌」は中国人でさえ作らなかったものだ。中国人同士の争いのむごさもわかる。

 改革解放で1980年代から中国は,近代化に踏み出したが、書院生が描いた1930年代の資本主義の勃興の様子が、50年後のスタートにみられる。

 討議になって、書院生の見方は、国内の締め付けから離れていてかえって自由な校風に染まっていたのだ。現在,新橿ウイグル地区などでは、漢民族による同化作戦が強行されており、自由な研究ができない。黄砂のダストにまみれた社会に調査のメスがほしいもの

 


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第8回;アジアと「吉田の会」

平成14214

講師;水内俊雄氏

1.アジア;ヨーロッパとのねじれの接点=トルコ

2.旧満州ほか大陸への戦前の地理学的関心

3.「総力戦体制」

4.吉田の会について

 

討議

 

 大阪市立大学文学部の水内俊雄助教授をお招きして、最近、戦前戦中の皇戦地誌学の文献を発見されたことを中心に日本の地政学再建の方向をおうかがいした。

 アジアとは、なにか。地政学の興味の対象としてアジアを意識させられる国の一つとしてトルコがある。旧満州も日本としては実験的政策を行ったところで、戦前日本の構造を知る手立てとなる。朝鮮総督府が、軋轢が強く夢を語ることがないのに対し、旧満州は、関東州=大連などには地理学的な観点からも意味のあることが多い。戦後、地理学教室には大連関係の資料が秘匿され、タブーからまだ解放されていない。

 総力戦体制に入り1934−1942の10年足らずの間に重化学工業化が列島中に進み、地理学として興味深い。その中で、陸軍将校の指導の下、京都大学の若い学究者を集め、「吉田の会」が昭和14年から20年にかけて、秘密裏に開かれていた。今西錦司など京都学派が、探検調査に力を入れていたのに対し、小牧実繁を中心とする地政学は、神懸り的な雰囲気の中で戦略への提言を纏めていった。戦後、「弾圧」で学派が中断している。

 

 討議に入り、吉田の会について、フィールドを大事にした日本陸軍が、抽象的な戦略論に終始したとは考えられない、との強い意見が出された。日本の大東亜戦争に協力した中国、韓国の人達は、案外に素直な見方をしているところがあり研究の余地がある。最後に日本の現状での情報機密収集体制の立ち遅れを確認した。「日本は外交をやっていない。」

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7;中東情勢と新地政学

平成13年6月14日

 

講師;滝川義人氏

1.中東問題について

1−1 中東の気候と風土

1‐2 中東の水問題

1−3 中東紛争の本質

1−4 ユダヤ人と日本人

2.大東亜戦争の評価と地政学

2−1 絶対国防圏のあやうさ

2−2 船団輸送の無防備さ

3.これからの地政学

 

討議

 

 「地政学事典」を翻訳紹介され、イスラエル大使館勤務の滝川義人氏をお呼びし、「中東の地政学的展望」について話しを聞いた。ゴラン高原などを含む中東の地域は、乾燥地帯で、わずかに雨期が水分を補給している。人間も一日に一定量以上の水を強制的に取らせないと生きていけない。本格的な戦闘は起こりようもなく、お互いに消耗すれば停戦になる。ゴラン高原に日本の自衛隊が、平和維持活動をしているが、実質的には意味はない。

日本の野党勢力がよくいう「話し合いで解決しろ」とは、非現実的なこと。消耗すればウヤムヤのうちに戦闘停止になるのが常だ。問題は、水質汚染も含め水不足の深刻さである。

 日本や欧米に比べて家族制度が崩れていないことが、宗教対立、民族対立の中でも、破局にならない状況を保っている。

 大東亜戦争の評価について、例えばルソン決戦をレイテ決戦に切りかえるなど、軍上層部、作戦部の無能、でたらめさは、今からみても許しがたい。敗戦前8ヶ月は、無益な戦闘をしたのでないか。船団輸送の詳細を見ても、作戦の無能さはあきれるばかり。日本国民も戦争をやる覚悟がなく自然災害に遭遇するような感覚であった。これからの地政学については、日本は日本らしい自己主張が必要である。

 討議になって、日本のエリートが駄目で敗戦に及んだが、今の平成の世相は、またそれに近くなっている。官僚、大企業の組織の病的弊害は、大東亜戦争の敗北に通ずるものがある。名誉とか尚武の気風がなくなっている。イスラエルは、昔は商人の国といわれたが、今は、必要なら命を投げ出す国民の気概が、尚武の国としている。日本はその逆となった。

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6;幻の日独伊3国同盟

平成13年2月13日

講師;手塚和彰氏

1.日独関係の根底にあったもの

2.日独防共協定成立の不可思議さ

3.第2次世界大戦の再検討

4.日独伊3国同盟はなぜ幻か

討議

 

 千葉大学教授の手塚和彰氏をお呼びし、「幻の3国同盟」を中心に大東亜戦争の地政学的な評価の話しを聞いた。ベルリンの壁の崩壊のあと、解禁された新資料の一つとしてカールハイツ(ドイツ会社)文書があり、これをみると日独の同盟がいかにも根拠の薄いものであった。ドイツの電撃戦勝利を日本は評価したが、スターリンの対独戦線の決意は早かった。ルーズベルトは、日本戦は、なすがまま(日本の緒戦の進撃をゆるしていた)、にして2面作戦は避けた。

 ドイツの勝利を前提にしてドイツの重工業を満州に入れる、としたが、非現実的な計画であった。

 議論になって、3国同盟があって日本もドイツも、やってはならぬ2正面作戦をとり、敗北もやむをえなかった。情報は、外交も新聞も弱かった。ブッシュ新政権は、アミテージがいうところ、日米同盟は、あるいはなくなることも考慮に入れている。日本の外交能力がないのは今も変わりない。危ういことだ。

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5;今後の進め方(地政学から見た日本の役割―その2)

平成121026

講師;竹内啓一氏

自由討論

 

 前回に引き続き駒澤大学教授・一つ橋大名誉教授の竹内啓一氏をお呼びして地政学から見た日本の役割について、自由討議をすることにした。

 グロバリゼーションを地政学的にどう捕らえるか。日本は、「侵略者のイメージ」を植え付けられているが、日本の「付き合い方」が下手なためも多い。欧米の植民地主義の方が役者が上だった。ドイツは、ナチとドイツを上手く分けたが、日本はそういう点を区別させることができなかった。

 日本の考え方は、吉田松蔭の「地を離れて人はなし」というにもかかわらず.北進論、南進論とも理論的支柱がなかった。「統帥権」も福沢諭吉のときは、むしろ政治の外に軍を置くためにわざわざ考えたのになし崩しになった。日本の敗戦に対する自国なりの責任の追及がいる。

 憲法を50年間も改正せず、本音と建前のひずみが大きくなっている。対外関係も考えなおすべき。中国と付き合ってなんの得が有るか。いや、2000年の中国・韓国との共通の文化を無視できない。中国の新人類には、日本にない国際感覚があり、中国にも老人に支配されない国家の出現が期待できる。日本はアメリカに頼るだけでなく、国際労働力の移入も含め、広く考えたがいい。

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第4回;地政学から見た日本の役割(平成12年6月28日)

講師;竹内啓一氏

地政学から見た日本の役割:その歴史的展望

1.歴史的展望

1)第2次大戦末までの「日本地政学」の評価

2)「日本地政学」にあったマルチカルチュアリズムとその限界

2 新しい日本のジオポリテイクス

3.現代地理学の課題、問題点;ジオストラテジ

討議

 

 駒澤大学教授・一つ橋大名誉教授の竹内啓一氏をお呼びして地政学から見た日本の役割について話しを聞いた。戦前の日本の地政学は、軍国主義に組すると否定的な評価を受けてきたが、京都学派に見られる神懸り的なものを除けば、十分理論的であった。マルチカルチャリズムは、サイードのオリエンタリズム(植民地主義へつらなるもの)に対抗できる。

 戦後の日本の資本進出は、アジア各国の特権階級の支配と結びついたものとなり、反感を呼んだ。ソフトウエアを含め水平分業をアジアで追求すべきである(ジオストラジイも)。

国際労働力の移入も考えるべきである。アジアの中で「イメージ距離」を克服する地政学的想像力が重要である。

 議論になって、グロバリゼーションは、世界各国の反発を呼びつつある(シアトルのWTO会議での民衆の反対運動など).日本は、どう力を持つべきか。国際交通の発展は、アジア1日交通圏を可能にし、経済・文化の水平的統合が表に出てくる。一方、国際都市単位のジオポリテックスもヨーロッパでは、主張されてきていることも注目すべき。

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第3回;環境問題と地政学(平成12年2月3日)

講師;米本昌平氏

1.科学研究と国際政治;冷戦下科学の特徴とその影響

1)「20世紀はアメリカの世紀」の意味

2)科学研究と国際政治の融合

3)欧州における環境外交からの教訓

4)地政学から見た日本の立場

2.環境外交

3.東アジア酸性雨モニタリングネットワーク

討議

 

 三菱化学生命科学研究所の米本昌平氏(東京大学客員教授)をお呼びして「科学研究と国際政治」とくに環境外交について話を聞いた。「温暖化」の環境外交について、1992年の地球サミット、1997年の京都議定書にいたる経緯を踏まえる。核拡散防止と地球環境問題とは、「脅威一定の法則」に則っており、冷戦停止が地球環境を世界外交の課題として大きくしている。

 外交交渉のプロセスの方が科学の先に回りこんでいる(自然科学と政治の新しい出会い)。コンピュータの設計とプログラムの透明性が従来の交渉事にとって変わってきている。冷戦が終わって、外交団の仕事がなくなって「地球温暖化」の課題が取り上げられるようになった。

 東アジアで見てみると、中国は国内環境悪化を認めており、酸性雨で、冬の日本海側の被害は明瞭である。日本は、対中外交のために韓国人脈を意識して使うなどの環境外交を行うべきでないか。日中関係は、韓国が1992年から中国にネットワーク(人脈)の立派なものを作ったのでこれを経由した方が、新鮮でいい。

 議論になって、鶴見川の自然を回復する運動など実践もやっていて、都市河川は下水処理水で流水としているが、清潔である。デーゼル大気対策など日本の都市の環境はそこそこ世界に誇れるものである。モンゴルに1国の環境保全を日本で責任持つ(研究プログラムを作るなど)というのは、日本の外交の柱になる。コスタリカをアメリカが支えるように、日本はモンゴルの環境保全を支えるといった環境外交もあろう。アメリカの「人権第一」と同じように日本は「環境第一」で押して行く。

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第2回;アジアとその地理(平成11年11月26日)

講師;岩田修二教授

1)はじめに   東アジアの分け方など

2)ヒマラヤ・チベット山塊形成とモンスーン発達のシナリオ

3)氷期―間氷期サイクルと氷期の気候環境

4)完新世の気候変化と人間による環境改変

討議

 

 都立大学の岩田修二教授をお呼びして地形学の立場から東アジアの地形と環境についての話しを聞いた。東アジアにとってヒマラヤ・チベット山塊が重要である。モンスーンと偏西風があり、夏のモンスーンは、チベット高原の熱源のための強められる(モンスーンアジア)、冬のシベリア高気圧は、この山塊があって強められている(日本の冬風は、世界最強)。今でもチベット高原に積雪量が多いと旱魃がおきやすいとか、の影響がある。

 ヒマラヤ・チベット山塊形成とモンスーンの完成は、60万年前くらい。氷河期―間氷期のサイクルで、数万年前には130メートルくらい海水面が下がっていた。1万年前位から、森林破壊など人為的植生改変が起こっている。例えばネパールの森林破壊は、10世紀ころから始めまったものである。中世温暖期(8‐13世紀)には、大きな帝国が多数出ており、温暖期には人類の活動も活発になるかも。

 議論になって、「地球温暖化」は科学的根拠はないのではないか。一方、間氷期は終わり氷期に入るとしているところ。インド洋の海底の状況解明についてアメリカ海軍の調査(潜水艦の隠れる場所のためとか)が大きな貢献をしているが、日本にはこのような役割を果たす機能がない。砂漠の緑化は、水を多量に必要にするので、どかで水が足りなくなる(カスピ海が干上がるとか)。中国の砂漠の状況には関心が強い。

 中国は、チベットを何のために集中的に調べているのか。例外的に多額の予算をつけて調べ1980年にその成果を世界に喧伝した。地球物理学的な研究は弱い。東南チベットは森林資源が豊富ということもある。漢化対策が進んでいて、チベット民族だけではやっていけなくしている(大麦を小麦に転換など)。ラサも本土からの補給は欠かせない。タクラマカン砂漠にも中国の関心は高い。

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1;地政学の現況(平成11年10月7日)

講師;高木彰彦氏

1.地政学の定義

2.地政学の起源と発展

3.最近の地政学

討議

 

 九州大学の高木彰彦教授をお呼びして、地政学の現況について話を聞いた。地政学が、戦後の抑圧された状況から再び、注目を集めるようになった。オロッコリンの「地政学事典」も訳書が発行されようとしている。各国にそれぞれ地政学があるわけだが、世界システム論的地政学、批判地政学が最近の新しい流れである(アメリカで流行っている)。

 ハウスホーファーは、ドイツの地政学の祖だが、日本に滞在したこともあり、わが国の地政学に強い影響を与えてた。日本にも当然に国民性があり欧米の地政学の流れから、独自の動きも出来かかったが(京都学派など)、敗戦により途絶えた。現在、地理認識の違い(国民的偏り)を弁えて相互理解を図るべきだ。ヨーロッパのように歴史教科書の相互批判とか、アジアでも必要だ。

 議論になって;京都学派と神道との関係(皇道主義)のようにわが国の地政学は、精神論が強く、せいぜい裏に回って軍事戦略に多少の協力をしたくらいである。ここにきて国際政治論と地政学の結びつきが問われる場面が世界的に出ている(キシンジャーに始まる)。ただ、日本の大学で「地政学」という講座はない(防衛大では国防地理学)。

 サイードのオリエンタリズムに議論が及び、西洋の理論は普遍的、だからオリエントで何でもしていいのだ、自分たちと同じ「主権」の押し付けとなり、植民地主義になった。

植民地主義への批判(アフリカの国境は列強が勝手にひいたことへの反省)となった。

 日本の現代の国益とは、なにか、で終わった。

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NPOジオストラテジー研究機構

設立 平成131210

 

設立趣旨書

 

わが国は冷戦下、及びポスト冷戦下を通じてパックス・アメーリカーナ、アメリカによって守られていただけに、「戦略的、地政学的思考」が必要ないと思い込んでいたのか、あるいは回避していたのか、ひたすら平和と繁栄をおう歌し続けた。だが、一方わが国の一連の経済的成功は1960年代以降それまで依存してきたパックス・アメーリカーナという秩序を突き崩す意味合いをもっていたこと、それにポスト冷戦を見据えて冷戦終結以前にレーガン大統領が「われわれは冷戦に勝ったと唱えるかもしれないが、そう言うなら日本の方がはるかに勝者にふさわしい」といみじくも言った意味合い、つまり国家間の力関係の性格が軍事力・政治力から経済力・技術力に移ってきたという地政学的な変化を認識することができなかったのである。

要するに、わが国は舞台が新局面に移行し、新しい戦い・競争がはじまったという認識がなかったのである。したがって、その新しい局面に適応する戦略を持ちようがなかったのである。結局、このことが、わが国が1990年代に入り「湾岸外交敗戦」、「第二の敗戦」といわれる憂き目にあい、著しく国際的地位と信頼を下げるにいたった所以であると言えよう。

 

9.11テロ事件。世界が新しい戦い・競争の新局面への転換を示す日である。新しい時代のはじまりである。

わが国においても冷戦下、ポスト冷戦が終わったのである。新しい時代の新しい戦い・競争がはじまったという認識のもとで、わが国が世界の平和と繁栄に寄与するために、世界秩序形成に参画し、そのことに責任を持ち、もってわが国の地位の安定を図るためには、(1)世界情勢の地政学的理解と(2)その情勢に適応する地政学的戦略を構築し、(3)もって、合理的な行動をとることが肝要であると考える。

以上のことに鑑みて、ここにわが国が世界秩序形成に参画し、そのことに責任を持ち、もってわが国の地位の安定化を図る上での、地政学的基礎となる情報を収集し、並びに調査・研究し、地政学的戦略にかかわる政策を提言、実践、支援及びそれらの普及・啓発を通じて、市民の公的利益の増進と社会の平和と発展に寄与することを目的に、広く研究者を募って参画してもらい、利益や組織にとらわれない、独立した知的インフラとして特定非営利活動法人ジオストラテジー研究機構を設立する次第である。

以上